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ジュワユーズの救国王子~転生王子の胃痛奇譚~  作者: 夕霧湖畔
第五部 帝国の暗部救出作戦
131/152

95.第二十三章 暗殺教団アガペラ

 筆が乗ったので少し長め。

  ◇◆◇◆◇◆◇◆


 砂漠マップには〔砂嵐〕と〔流砂〕というステージギミックが存在する。


 〔砂嵐〕は一定時間マップ全体の敵の配置を隠すというものだ。味方が隠れないのはゲーム的に意味が無いからだろう。


 〔流砂〕は隣接した者を中心に移動させて動きを封じ、死ぬまでダメージを与え続けるというものだ。一見即死級だが飛行ユニットは影響を受けないし、目に見えている時なら避ける事が出来る。

 範囲外からなら魔法で、飛行ユニットなら隣接すれば『輸送』コマンドが出現し救助も出来る。但し移動し終えるまでは何も出来ないが。


 ゲームではランダムだった〔砂嵐〕は現実だとそれなりに続くらしい。

 そもそもゲームの一ターンが現実時間で曖昧なのだから、差異があるとも言い難いが、問題は〔熱砂〕という焼ける程に熱い砂嵐があるという点だろう。

 どうも砂嵐より長く続くらしく、そんなものが出ているタイミングに進軍する等自殺行為という話なのだろう。くけ。




「はい!ここに取り出したるは、聖王家の方も所持している不思議な秘宝!

 その名も〔砂弾きの杖〕という魔導具です!何とこれを使用するとあら不思議、周囲の砂嵐を弾いてくれるのです!素晴らしいィッ!!」


 ハイハイ、無謀な軍隊が出陣しますよ?この範囲から出たらマジ死ぬからね?

 だって逸れて捜索不可能だもの!皆さん絶対にはみ出さない様に。


「コレ、量産に成功したってマジ?」


 呆れた(ドン引いた)顔のシャイターン王子にジルロックが勝ち誇る。


「厳密には解析と複製が完了したってだけで、量産するには予算不足かなぁ。

 欲しいのなら購入でお願いしますよ~?」


 アレスとジルロックは互いに手を打ち付ける様に握って高笑いする。


 この杖、魔力無消費です!内臓魔力で一定時間魔力の膜を作る様でして、使用毎に一定時間の休息が必要と判明しました。

 でも三本あります!非売品が!聖王家は元々持っている分と合わせて二本!

 よって交換で常に使用出来ます!


 素晴らしいですね!砂漠で熱砂が完全に防げるだなんて、どれだけ有用なんでございましょうか!げひゃひゃひゃひゃッ!


 さてさて。目印発見、近付いて来たぞ?

 今迄の目印と事前の調査報告からしてこれ以上近付けば監視の視界に入る可能性がある。そもそも〔熱砂〕の最中じゃ無ければ既に発見される距離の筈だ。


「さて、頃合いだな。全軍、これより地上から全てを制圧する!

 敵は世界の敵、暗殺教団だ!あの場所に居る者達は既に最低限の暗殺者としての訓練を受けた、秘密を守れると判断された者だけだ!

 子供であろうと手加減するな!返事は要らん、突撃~~~ッ!!」


 ていうかあそこの子供って早熟な、多分幹部クラスだけだけどな!LV的に!


  ◇◆◇◆◇◆◇◆


 え~、大変残念なお話ですが。子供暗殺者君は『鑑定眼』持ちのヴェルーゼ皇女を罠に嵌めるため、牢屋内で被害者の振りをするというポカをやらかしました。


 ええ、《治世の紋章》です。ワタクシの現在位置は今、本陣ベッドです。

 ワタクシ、地上を制圧した段階で中心地に陣地を設営させて頂きました。精鋭に守らせております。

 もう滅多打ちでしたね、いや滅多撃ちか。割とキレておりました、何せ本当の被害者が居た痕跡があったもので。カレ鍵を開ける暇もなかったよ……。


 さてはて。ワタクシめの仕事は隠し通路の発見に御座います。流石に周囲がこれほど開けていると、遠くから地下深くまでは探れません。

 何度もリアルに戻りながら、地図と敵伏兵やらの場所を書き記していきます。


 まあ最初こそ不意を討たれかけましたが、慣れてくると皆さん中々頑張っておりますね。段々遠慮が無くなったと申しますか。

 薬物による人体実験の跡とか見つかるとそりゃあ容赦無くなるわ。

 ゲームには出てなかったけど痛覚麻痺系の薬も使っているみたいだね。その手の資料が偵察隊が戻る度に追加されていきます。


「突入班に加わるか、ここで資料の確認に専念するか迷うなぁ。」


 隣のジルロックが受け持っている仕事はかなり多い。元が研究者な上に解析能力がバカ高いので、研究中の魔導具の数も結構多い。

 どれを受け持つかも割と早い者勝ちなので、ここで資料を見る意味は大きい。

 ダモクレスは魔法研究者達を優遇しております。将来的に魔法大学をつくるのも良いかもね!ちょっとそっち見たいわ。あ、駄目?とっとと次?は~い。




「くそ!何故【縛り首】を受けて死なん!その秘術は何だ!」


 兵士達の首に細糸を巻き付けたアサシンが、会心の束縛を確信した直後に振り解かれて動揺しながら後ろに下がる。だがここは通路、即座に切り合う羽目になる。


「ふははははは!我らに即死攻撃など無駄無駄ぁ!!

 我らには『即死の守り』という秘術があるからな!」


※あれす補足。【救国の御旗】の効果です。兵士達には雑にこういう秘術を使ってる事にしてね、と事前通達しています。

 流石に聖戦軍を名乗る訳には行かないからね!


 暗殺者達の強みは不意打ちによる奇襲だ。彼らは重装備相手の正面対決に弱い。

 こんな閉所の防衛戦に持ち込まれた時点で、その長所はかなり相殺されている。

 起死回生の暗殺技能【縛り首】が無ければ自力で押し込まれるのは当然だ。

 〔毒煙〕や〔催涙玉〕等で稼げる時間は知れてるし、〔投げナイフ〕で致命打を与えるのは難しい。


「軍単位の密偵に攻め込まれるなんて経験、中々無いだろうしなあ。」


 〔弓聖〕シンクレアは煙幕越しに敵を射抜きながら、一方的な展開になっている敵暗殺者達に同情する。勿論、情けをかける心算は欠片も無いが。

 実際敵幹部は早い者勝ちだ。それほど迄に進軍速度は速いと舌を巻く。




「〔グレン傭兵連合〕だと?!しかもシャイターン王子の依頼?

 くそ、まさかこんな強引な手で逆襲して来るとは、一体幾ら積んだのだ?!

 だが他国の流れ者相手では、我らの雷名を知らんのも道理か……。」


 暗黒教団〔アガペラ〕はシャイターン王国全土に根を張る、いわばシャイターンの裏社会を牛耳る暗殺組織だ。

 この地は教団の最精鋭を育てる訓練所でありアガペラ創設の地でもあり、数多くの暗殺者育成ノウハウを構築した、最重要施設だ。

 無論ここが潰されたとしても支部の幹部は残るが、此処へ直線で辿り着くには到底不可能な場所にある。今迄一度足りとて地上を制圧された事は無かった。


 教団宗主〔闇の手〕は、想定外の強襲によって組織が存亡の危機に晒されている事実を認める他無かった。


「おのれ、熱砂を退ける魔導具などまるで古の時代、聖王家に奪われたという伝説の秘宝〔砂弾きの杖〕の様では無いか!」


※あれす補足。彼らの個人的な主観です☆

 実際は開発元が聖王国でしたので、開発資料が部分的に残っておりました。


 闇の手は敵が並外れた精鋭であると同時に、謎の秘術で致死の攻撃を防いでいるという報告を聞いていた。まさに自分達に対する天敵の様な集団だ。

 砦を捨てようにも今は〔熱砂〕の真っ最中、迂闊な脱出をすれば遭難は確実だ。

 そうでなくても、幾つかの通路は敵の監視下に落ちているという報告がある。


「神殿との連絡は取れたか。」


「い、いえ。砂嵐が障害となっており、未だ連絡は。」


(ほほう、それは良い事を聞いた。これは当確ですかのぅ?)


「そ、宗主様!大変です!!」


「なんだ、今度は一体何処が突破された?」


 宗主の下に慌てた部下が駆け付けた。その者は片腕を失い、既に長くはない。

 明らかな凶報を前に、闇の手は己の出陣も間近かと腹を括るが。


「あ、アモルです!〔殺戮者〕アモルが、勝手に動き出しました!!」


「な、何ぃ?!あ、アモル様だと?!

 馬鹿な、あの方の蘇生処置は未だ終わって無い筈だッ!!」


 その言葉に、アレスは激烈に嫌な予感がして意識を体に戻す。

 気怠い体を起こして解しながら立ち上がると、外で轟音が響いた。


 後を任せ直ぐに陣地の外に出ると。

 暗殺者にしては度の過ぎた巨漢な黒尽くめの全身具足を纏った大男が、近寄る兵達を蹴散らし宙に跳ね飛ばしていた。


「……へへ、間一髪ってところか。」


【殺戮者アモル、LV40。リビングドール、アサシン。

 『心眼、神速、反撃、必殺、魔障壁』『不死身の紋章1』『怪人の資質』

 良武器、名工の防具LV2、隠し武器、仕込み武器〔鉛具足〕、悪魔の籠手。】


……もぅ!また出荷前?

 駄目じゃない〔中央部〕で40LV越えが出ちゃッ(吐血)!


 あっれれ~?可笑しいな、〔良武器〕が敵側武器の名称だから、装備欄三つの筈なんだけどなぁ?

 《悪魔の籠手》って確か、死んだら()()()()()()()()っていうゲーム的には何も起こらない()()()()()じゃった筈じゃよなぁ?敵専用の。

 え?りびぐチャンが勝手に動き出した理由って、コレじゃね?けへへ?



「お前達は下がっていろ!そいつは俺一人で十分だ!!」


訳:今の地上戦力で真っ向勝負出来るの俺だけじゃねぇか!!

 流石に準戦力武将じゃ事故死の方が怖いわっ!



 走り出すアレスに対し、即座に大男アモルが反応して兵の壁を突破する。


 互いに『神速』の加速、一瞬で交差して切り込みを打ち鳴らし。

 死角に隠れた手甲から伸びた刃を鍔で弾き上げ、後ろ回し蹴りに繋げようとしたアモルの軸足を翻りの『連撃』が掬い上げて。


 ギリギリのところで鉛混じりの具足が刃を弾いて蹴り捌く。

 共に一歩の後退と見えて、袖口から鎖分銅が伸びる。弾いて仕切り直す。


 〔隠し武器〕は外付けの『必中』スキルを発動させる装備だ。その内実は、複数の暗器類の総称だと調べは付いている。

 これは〔良武器〕が剣であり槍であったりするのと同様に、元々が単一の装備を指していないのだ。


 何故なら『鑑定眼』は、あくまで個別の品を判別している訳では無い。


 元々名称を言い当てる様な都合の良いスキルではなく、参照元の情報に合致したデータを確認出来るだけなのだろう。

 とはいえ、この場合はそっちの方が助かる。多過ぎる情報よりも隠し武器があると一括で説明された方が集中力を削がれずに済む。


 そしてそれは〔良武器〕にも当てはまり、一本とも数本とも明言されない。


 眼前で放り投げた小剣を死角に、同じ腕から同じ形状の小剣が迫る。同時に背中に空の手が回されているのを、アレスは見逃さない。

 両者を同時に垂直と切り上げ、一刀を更に速く続け様に切り結び。四肢の手数に勝る程の剣閃を煌めかせる。


 第三者的には五分、アレスが圧して見えてすらいる戦況。

 しかし未だに【魔剣技】を出す隙が見出せていない。だが更に加速する。


(オイオイ、身体能力的には《紋章》分勝ってるくらいなんだがな……!)


 『必殺・裂帛』が見た目よりもやたらに重い蹴撃を弾き飛ばす。

 成る程、凌ぎ易いと『傭兵四極』が【魔剣技】全盛の時代でも生き残っている理由に納得する。慣れればかなり、応用が利く。


 と同時に。最近特に『ドラゴンブレス』の直撃を受けてから尚更に違和感を感じるようになっている。

 まるで五感以外のもう一つ、魔力という名の第六感。


 その、()


 魔力はこの世界にとっては普遍的な、当たり前にある感覚だ。

 但し誰にでも鮮明に感じ取れるものではなく、訓練によって強化出来る触覚が体の外に出た様な。自分が伸縮自在の膜や泡に包まれた様な感覚。


 どこまで伸びるのか、何処まで薄まるのか。

 それが把握出来れば強化出来ると、微調整や精度を鍛錬し続け。しかし思いの外変化が無く。


 属性という自然現象を取り入れる術式を修得すると、様々な変化を遂げた。


(魔力は触覚の延長という解釈が間違っていたと、その時気付いた。

 魔力は、エネルギーの知覚力で培われる、保管能力と称すべき別感覚だと。)


 魔力は正しく第六番目の感覚だったのだ。

 触覚とはまるで別物で、体を包んでいるのは膜ではなくエネルギーそのもの。

 エネルギーの知覚限界そして制御、保管限界こそが魔力。魔力はエネルギーそのものだからこそ、別の現象に同調させる事で体外に影響力を発揮する。

 魔力の回復とは体内からの精製と、体外からの吸収。この二つ。


()()()()のか?)


 もう一つ、ある。何かの感覚が。

 『必殺・迅雷』切っ先で背後の分銅を弾き落とす『必中・疾風』周囲を巡る髪糸を絡め切る『必殺・裂帛』体内の熱量が双剣の膂力を弾き飛ばす。


 その中に動かない、何かのエネルギーが自分を包む。


(『竜気功』は魔力とは別の現象?別の知覚なのか?)


 感覚が鋭くなり続ける。まるで体感時間が伸びているように。

 全身に打ち付ける衝撃が、視覚外から襲い掛かる殺意の塊が。反応の限界を揺さぶる程の早さの筈が、いやに近付くたび鮮明にはっきりと認識出来る。


 【魔力剣】がアモルの蹴撃を滑らせたまま下から掬い上げ、跳ね飛ばす。


 空中で旋回出来ぬ筈の体躯が、唐竹割りの長尺刀の一閃を〔爆裂玉〕の衝撃で反動を生じて双剣を頭上へと跳ね上げる。


 地面に叩き付けられる事無く刃が滑り続け、斬撃が体に届く代わりに後方へと押し逃れ切り。


 『紫電』の宿る一刺しがアモルの腹を抉り貫く。


 ()()()


 跳躍。いつの間にか陣外に出ていたと気付き、弾かれた背後に岩壁が遮る。

 『神速』を為したしなる足が、揺らぎ。

 大男の全身に濃色を成し。


 『神速』ですれ違った傍らで岩壁を砕くアモルの()()利き腕に吸い込まれる。

(これは色じゃない。)


「【デビリス】ッ!!」


 澱んだ闇属性の渦がアモルの腕を伝い抉る様に迫る。

 呪われた装備から溢れる人型の衝撃波、人に仇なす呪いの力。


 切れる。

「【魔王斬り】。」


 ()()()だ。


「え?」


 間合いに入った瞬間、【奥義・武断剣】を描き出す。

 これは一筆書きの斬撃だ。数歩の間に剣戟の流れを翻し続ける。


 踏み込まねばと思った。

 【奥義・封神剣】。これは流れの隙間を滑る斬撃だ。


 両断され、深々と三つの血飛沫を巻き散らすアモルが崩れ落ちる。



 ()()()激痛となって、メキョっといった。


「ほげぉごろげら?!ッ※っ、??!?!ッ?」



 全身の筋肉全てに等しく振動が走った様な、或いは鈍器で殴られた感覚が五感全てに反響した様な。そんな未知の痛覚が弾けた。


「あ、アレス王子?!」


 距離を取っていた将兵が慌てて声を上げ、ヒキガエルの様に転がったアレスの元へ集まる。だが声を出すどころじゃない。


「ちょっと?!大丈夫ですかアレス様!」


 ほぅ。この感触と匂いはミレイユ王女ですな。

 堪能したいが無事を教える方が先だと、震える喉に。


「ごきょげぇどごぇぃでぅをッッッ!!!!」


「あ、うん。落ち着いて。声が胃潰瘍みたくなってます。」


 ごふ。中々心臓をぶち抜く切り返しじゃのうと、震える手で親指を立て。

 諦めて【高位再生(リザレクション)】の治癒を待つ事にした。


  ◇◆◇◆◇◆◇◆


 スキルとは極論、極まった武技だ。

 暗殺教団アガペラは薬物による忍び込みによる毒殺と、高LVに対する闇討ちの双方向からの暗殺を織り交ぜた殺人技を磨く集団だ。

 故に宗主に限らず幹部は本名を捨て、仮名でのみ呼び合う。任務の時は都度偽名を使い、別人として振舞いアガペラの者といえど同僚は殆ど顔を見ない。


 故に全ての団員の本名を知る宗主は、必ず先代に殺される事が義務付けられる。

 故に教団最強の者こそが相応しく、闇の手もそう在った心算だった。


 だが今やその心臓を、眼前の騎士の槍に抉られている。


「ま、まさか表社会の者に、ここまで一方的にやられるとはな……。」


 闇の手には続け様に技を繰り出す速度は無い。ただ一瞬、あらゆる薬物の中でも戦い抜ける肉体による、毒煙の中からの『奇襲』。

 あるいは『心眼』による一瞬の、『必殺』の急所刺しの妙技。

 それらを様々な〔隠し武器〕によって『必中』の域に届ける。それが闇の手。


 その殆どが力技で捻じ伏せられ、叩き潰された。

 多少の手傷はまるで力を奪われた様な【吸血剣】に似た魔力斬撃によって、悉くが水泡に帰した。圧倒的な剛剣、剛腕に飲み込む技量。

 決して只者ではないと、漸くに正体へと思い至る。


「ま、まさか名高い聖王国の〔守護騎士〕がこんなところに乗り込んでくるとは。

 聖戦軍の主力が、傭兵団とは。随分とまあ謀ってくれたものよ……。」


「しぶといな。だが所詮は邪道の者、己の罪過を悔いて死ぬがいい。」


「ふ。貴様がそれを言うのか、【星奥義】の使い手よ。」


「何?」


 次の瞬間〔炸裂玉〕が弾け。

 振り抜かれた槍に弾かれて遠くの壁で轟音を立てる。


「今の間際のハッタリか?それにしては妙な言い回しだったが……。」


 いや、と被りを振って意識を切り替える。今考えるべきではない。

 恐らくは大将格だが、敵の一人でもある。これは掃討戦なのだ。

 両断されて力尽きた敵将から視線を外し、先へ歩みながら独り言ちる。


「別に黙っている必要も無い、か?

 後で忘れぬように報告するとするか……。」


 エルゼラントは見た目から繊細に思われがちだが、実際は丁寧なだけで詐術等の複雑な謀は物凄く苦手だった。

 算術や暗記等は得意だが、武術以外の応用はどうにも頭が回らない。

 下手な考えは休みに似たりと、悩むのはアレス王子に任せる事にした。

 国家権力を使うんだから、魔導具開発にも予算をかけるよね!

(※普通は準備時間と予算がありません。)




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