90.終章 聖都奪還・宴の夜
今回ちょっと長めです。
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帝国皇太子ダンタリオンの討伐による白月城シャルルマーニュの奪還は、即座に聖都ジュワユーズ内へと広まり聖戦軍の勝利を告げた。
夜半、聖都では其処ら中で、聖都解放を祝う宴会が開かれていた。
聖都周辺での全ての戦闘は夕刻までに完全に終結した。
元々聖都に聖戦軍が突入した時点で帝国兵の脱走は始まっており、アレス王子が白月城に突入した段階で帝国軍の指揮系統は次々と崩壊していった。
夕刻段階で組織的な抵抗を続けていたのは聖都の脱出を目指していた部隊だけであり、白月城の陥落を以て城内の帝国軍は全て降伏し捕虜となる道を選んだ。
当然だ。この世界、経験値の概念があるので実に容赦が無い。
何せ回復魔法を使えば負傷者も復活する。手加減したら危ないので、歯向かう敵に止めを刺さない理由が無い。
止めを刺せば強くなれるので、民衆すらここぞとばかりに復讐する。
無事に夜を迎えた帝国兵は、聖都脱出に成功した部隊を除けば捕虜だけだ。
まあぶっちゃけ宴会を開いたのは、聖都の混乱を終息させるためだ。
例えばリシャール殿下が聖都外に居たのなら、門を開けて勝利の凱旋を演出する事で戦闘の終結を宣伝したのだが。
聖殿下は聖都への突入組であるため、彼らが白月城へ辿り着いた際に勝利宣言と奪還の報告を既に行っている。
勝利宣言によって帝国兵達は抵抗を止めたが、聖都全体ではむしろ住民達による帝国への報復攻撃が加速。
一部では混乱に乗じ、帝国と無関係な商店への略奪も行われる始末だった。
結果。大通りで振舞い用のタダ酒と焼ピザの配布を、本日限定と称して行う事で注目と略奪者以外の分裂を誘導。
事態の鎮静化を図ったのだった。
一方で白月城内。城に残された者達と久々の再会を喜ぶ者達で溢れ返っていた。
特に宮殿内。聖王家の面々を逃がす囮として残り、結果家族を人質に取られた家臣達も多かったのだ。
加えて聖王家の三兄妹にとって、荒れた聖都の惨状はかなりショックだった。
休む間を惜しんでの復興作業に乗り出そうとした面々に対し、アレスは聖王家の全員に今日は仕事にならないと叱咤。
休息序での顔見知りの確認という役目を押し付け、宴会の音頭を取らせた。
治安維持は地元民が居らず統制が保てている旧義勇兵が担当して奔走し、何とか夜までには宴会だけの騒ぎとなった。
聖都のそこかしこに、松明による明かりが煌々と灯る。
けれど宴会となれば大通りが使われ、衆人の目も騒ぎも人の多い路地に集まる。
つまりは家の影を背にして集まり、人目の付かぬ道を進む事も不可能では無い。
それは都市そのものが要害として計画的に組まれたが故に、スラムの成立しない聖都ですら同様だった。
建物の中で隠れ潜んでいた者達が、音も無く路地裏に躍り出る。
黒尽くめの外套に身を包んで闇夜を疾走するのは、暗黒教団に所属する諜報部隊の一団だ。決して多勢とは言えないが、人目の少ない道を探す程度は問題ない。
彼らの伝令が戻ると、とある貴族邸の裏門から数十名の変装した闇神官の一団が馬車と共に路地を進む。
闇神官達は知る者にだけ判る専用の神官装束を好んで纏う。それはこの装束こそ彼らの心の拠り所でもあるからだ。
故に脱出のために外套で隠す事は出来ても、捨て去る事など有り得ない。
その見分け方が敵に伝わった今でもそれは変わらない。
彼らは今の喧騒なら静寂の夜より増しと覚悟を決めた、明日の帝国兵狩りが再開される前に脱出を試みる者達だった。
けれどこんなタイミングでの脱出を試みる羽目になったのも、上役による急な予定変更が理由だと知っていれば不満の一つくらいは出る。
「全く、よりにもよって聖都陥落後の脱出になるとはな。」
「愚痴るな、闇司教様が来訪していたんだ。
我らが主の介入を、万に一つも気取られる訳にはいかん。」
馬車を護衛する闇神官達はボヤキながら走り鶏達を追走させる。走り鶏は機動力こそ優れるが荷運びには向かない。
車体の牽引には軍馬が一番適しており、必然足並みは馬車に揃えるしかない。街を追われる身にとっては、どうしても気になる足の遅さだ。
内心の不安を紛らわすために、誰もが口を開かずにはおれない。
「それだ。そもそも大丈夫なのか?
俺達がやろうとしているのって、要はその闇司教様からの横流しだろ?」
「だから今なんだよ。聖都陥落の混乱に紛れてしまえば現物が失われたって不思議はない。今を逃せばチャンスは無いんだ。」
だから静かにしろと、ここは敵地なんだぞと周囲を見渡す。
「その警戒、ちょっとばかり遅かったかしら?」
路地の屋上に落雷が落ちた直後。
弾かれる様に弧を描いて馬車の先頭で雷球が突き刺さり、闇神官をまとめて打ち据える。
「もいっちょ、【中位落雷華】ッ!!」
『連撃』による雷撃が再び弾けると、完全に不意を打たれた数少ない暗殺者達を含めた先頭の闇神官達は、成す術も無く力尽きる。
「ば、バカな!一体いつの間に現れた!」
突然の魔法による襲撃に黒尽くめ達は慌てて〔投げナイフ〕を放つが、魔術師は想定通りとばかりに、全ての反撃をあっさりと『完全回避』する。
たなびくローブの輪郭でようやく相手が女だと分かり。
しかし後を追いかけた密偵達は、隣家との距離にたたらを踏む羽目になる。
その時初めて彼女が【飛行魔法】で屋上すれすれに飛んでいたのだと、自分達の索敵外――例えば遥か上空から飛行したのだと、漸く状況を理解する。
「【中位火炎渦】ッ!
あなた達が奪ったものを、今日こそ返して貰うわよ!」
魔法の雷が裏路地で弾けた時、城壁から見下ろしていたアレスは即座にガルムを走らせ騎士団を率いて現地へと駆け出した。
聖都は白月城を頂点として階段状に築かれた都市であるため、即座に駆け付けるなら城壁に陣取っていた方が動き易い。
アレスは城下町の随所で開かれる宴への、顔出しを兼ねた見回り中だった。
魔法を使っているのならどっちか一方は帝国軍の可能性が高いと、最短距離の大通りを避けて裏路地を中心に進む。
道幅こそ狭いが、移動の際に民衆が巻き込まれる恐れが少ない。
元々城壁からは遠くない位置での騒動で、程無くして乱戦の音が聞こえる辺りまで辿り着く。
(?何だ、女魔術師一人と黒尽くめの集団なのか?
しかも多勢に無勢とはいえ、女魔術師の方が圧倒しているじゃないか。)
騎士団には地上を進むように指示を出し、屋根上を先行しながら様子を伺う。
飛行魔法で暗殺者と思しき暗器使い達や闇魔法使いを相手取る、縦横無尽の戦いが視界の端で展開されていた。
屋根上を選んだのは予想以上に正解だった様だ。
【飛行魔法】による戦闘は建物が視界を遮り全貌の把握が遅れただろう。
闇魔法使いは服装を見る限り、十中八九闇神官で間違いない。
問題は馬車を狙って見える女魔術師の方だろう。多勢に足止めされている間に馬を交換されて、馬車の向きを変える闇神官達に対処出来ていない。
となれば問題は積み荷の方か。
(――当然、やるべきは先回りだよなぁ?)
障害物が多い分進軍に苦戦する地上の騎士団に移動先の指示を出し、アレス一人で教団馬車の道先に回り込む。
「くそ、早く馬車を出せ!これ以上時間をかければ脱出どころでは無いぞ!」
(ふふふ、そのまま粘っててくれよ?)
「馬車、準備出来ました!」
(ちょ、後ちょっと!あと一寸だけ待って下さいませんか?!)
「よぉっし!直ぐに馬車を出せ!
残りの者は全員あいつの足止めに専念しろ!
我々が離れた後は各自散開して構わん、各自で里を目指せ!」
(いよっし、あの屋根から降りられる!)
「「「ははぁっ!!!」」」
(間に合ったぁ!!)
密偵職が気を配らない限り、【救国の御旗】の『伏兵』効果は回り込む騎士団の存在を隠し続ける。アレス自身も《シーカーリング》を使用中だ。
初手を派手に飾れるチャンスを逃す心算など毛頭無い。
建物の影に隠れながら飛び降りれば、馬の交換が終わった馬車に乗り込む闇神官達がこちらに気付く気配も無い。――故に。
「【中位破邪柱】ッ!そして、【中位破邪柱】ッ!!」
光の柱が御者台を中心に炸裂し、闇神官達が悲鳴を上げながら吹き飛ばされる。
『連撃』で魔法の直撃を受けた者達は大体力尽きたが、足止め側に集中していた闇神官達がこちらに気付いて慌てふためく。
だが先行した分騎士団の包囲網はもう少しかかる。
仕方ないにゃあとアレスは手の平で顔半分を隠し、腰を捻った全力の厨二ポーズで高らかに声を張り上げた。
「天知る地知る俺が知る!悪党外道の生きる術無し!
正義の御旗をこの背に掲げ、此処は通さぬとこの俺が叫ぶ!
護国の英雄にしてかつては義勇軍の総大将!これなるは聖戦軍の軍師にて参謀、聖王家の切り札にして知恵袋!
我こそはアレス・ダモクレス第二王子その人なり!
残念だったな暗黒教団の諸君!お前達の悪事もこれまでと知れェッ!」
フハハハハァ!!とマントを跳ね上げ、残る隊長格の一人で一番近い男へずびしと剣を突き付ける。
ド派手なアレスの名乗りに奇襲と慌てた周囲の視線はしかし、驚愕による動揺を以て注目として収束する。未だちょっと。
歌舞伎宜しく手を突き出したアレスは、演劇部の前世知識技巧を総動員して更に剣を高らかに掲げるポーズへと繋げ人目を惹き付ける。
「刮目せよそして喝采せよ!貴様らの前に立ち塞がるは、一人にして一騎当千!
稀代の英雄にして最強の一角!悲しいかな貴様ら脆弱なる闇神官如きでは、この距離ではどれほど足掻こうとも剣の錆にすらなれぬ弱卒共よぉ!
お前達の選択肢は二つに一ぉつ!!
捕囚となりて信仰を捨て、我が軍門の監視に下り己の罪を償うか!あるいは我が光の魔導に依って無為に屍を晒すのみ!
さぁさぁさぁさあッ!覚悟あらばこの俺に挑んでみせよ!!
貴様ら如きの死力など、我が身に傷一つ届かぬのだからッ!!」
滑舌と肺活量の勝利に満足するアレスの演技力に、違和感を封じられた闇神官達は歯軋りをしながら目にもの見せんと闇の魔導に魔力を注ぐ。
「舐めるなよアレス王子、如何に貴様が強かろうとこの場ではただ一人!
全員、アレス王子へ魔法を集中させよ!我らの総力、思い知らせてくれよう!」
「「「おぅっ!!!」」」
「来いやぁッ!!」
ウィンク一つで上空の女魔術師に一寸待ってねと合図しつつ、剣を構えて迎撃の構えを取った。
闇神官達は足音を踏み鳴らしてタイミングを揃え、一斉に闇の球体を解き放つ。
「「「【中位爆裂闇】ッ!!」」」
「【奥義・魔王斬り】ィッ!!!」
一斉に降り注いだ闇の球体をしかし、一薙ぎの太刀筋が空を引き裂いて全ての術を諸共に両断する。
魔力の渦が全て真っ二つに分かれて、術構成ごと弾け消える。
一太刀で全てが終わり、驚きが一同の間に一拍の沈黙を作り。
「弓騎兵、一斉掃射ッ!!!!」
アレスの号令と共に包囲網を敷いた『伏兵』中の騎士団から。
魔法を放ち反撃の猶予を失った闇司祭達へ、一斉に矢衾が降り注ぐ。
「き、貴様ァぁぁぁぁッ!!一人って言っただろぉッ!!」
状況が理解出来ず次々と闇神官達が悲鳴を上げて射抜かれていく中、一人だけ紛れていた闇司祭が怒鳴り声で抗議するが。
「笑止!俺は(届かないから)お前達が剣の錆にもなれぬと言っただけ!
俺が強いとは言ったが、一人で戦うとは一言足りとて言ってないッ!!」
「「「げ、外道ーーーー~~~~~~ッ!!」」」
アラいい罵声。
「有言実行【真空斬り】ィッ!!」
魔法使い。物理に弱い、魔法使い。
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アレスは馬車の安全を確保して騎士団に任せ早々に魔狼ミッドガルを走らせて、路地裏に逃亡を図った魔法使いの元へ回り込む。
「おっとどちらへ?貴女の目的は馬車の積み荷だったと思うのですが。」
回り込まれると思ってなかったのか、女魔術師は地上を歩いていた。
【飛行魔法】の効果が切れたのだろう。しかし気になるのは『伏兵』とは若干の違和感がある謎の潜伏技術か。
「違いますかな、〔放浪の魔女〕シュトラル様。」
「あら、まさか気付かれるとは思わなかったわ。
私の【魔法潜伏】は密偵職でも無ければ見破れない特殊な迷彩魔法なのだけど、珍しい魔導具を持っているのね、あなた。」
「ええ。とても便利で重宝しておりますよ。」
素性を見抜かれた方には疑問を持たない辺り、『鑑定眼』持ちだとは見抜かれているらしい。
月明かりに照らされた彼女は如何にも魔女と言った風貌の妖艶且つ妙齢の、この辺りでは珍しい浅黒い肌をもつ黒髪美女だった。
年齢不詳ながら香り立つエロさが実に素晴らしい。
〔放浪の魔女〕シュトラル。
それは原作ゲームに於いては正体不明なNPCの一人だ。
とある遺跡である少女を連れて訪れると登場する彼女は、謎めいた言葉を残して魔女ロスティが経営する〔魔女の店〕を訪れるための非売品アイテム。
《魔女の祝福》というペンダントをくれるだけの存在だ。
尚、〔魔女の店〕に行けるかどうかは攻略難易度を派手に左右する。
ここに行けないと即死攻撃を防ぐアイテムは非売品しか無い。なのでプレイヤーは絶対に彼女との接触機会を逃さず、ファンアートも多い人気キャラでもある。
「私の目的は果たしたから良いのよ。あなた達の元ならむしろ安全だもの。
ねぇ、聖戦軍の軍師アレス王子?」
「ふむ、出来れば積み荷について知っている事を教えて頂きたいのですが。」
アレスの言葉に目を瞬かせた彼女は、自分を追いかけたら積み荷を確認する時間は無いだろう事に今漸く気付いたらしい。得心が言ったと軽く頷き。
「そうねぇ。折角だからあなたには積み荷の保護を依頼するわ。
引き受けてくれるならこの《魔女の祝福》を前払いの報酬として差し上げるわ。
常に身に着けて置けば、この先必ず役に立つ時が来る筈よ。」
「おや、これは。こちらの物と同じですかな?」
あれす学んだ。《紋章》の中にある非売品アイテムは油断しちゃ逝けないって。
事実、アレスが見比べる《魔女の祝福》を見たシュトラルは一瞬顔色を変えた。
「あら、あなたは何処でそれを?」
「手掛かりは何も。思い出せないくらい幼子の頃から持っていたとしか。」
不正は無い。記憶喪失だとは言ってないだけだ。
現物を手渡され、観察したシュトラルは溜息を付いてアレスに返した。
「本物ね。それは信用の証よ、私の夫が持っていた方のね。」
「既婚者ぁ?!」
「あらありがと。
……そうね。無関係じゃないのなら教えておきましょうか。
私は実の娘を探して旅していたの。そして私の夫は里を捨てた元闇司祭だった。
だから私は、娘を攫った連中を追っているの。」
溜息と共に懐から魔導書を取り出しアレスに放り投げると、シュトラルは【飛行魔法】を唱えて浮かび上がる。
「《祝福》は一つあれば十分だから、もう一つは信用出来る相手に渡しなさい。
その魔導書も依頼料としてあげるから、積み荷の事はお願いね。」
「ええ、任されました。何かあればご連絡を。」
アレスも信用の証として、家紋が描かれた短剣を投げ渡す。
短剣を受け取り夜空に消えたシュトラルを見送ったアレスは、肩を解して気持ちを切り替え馬車の方へと踵を返す。
原作には無い奇妙な縁となったが、味方に付けて損は無い筈だ。少なくとも彼女は〔魔女の店〕の店主、魔女ロスティと縁がある。
ゲームでは只のお助けキャラのロスティだが、運が良ければ勧誘する切欠になるかも知れない。
ひょっとしたら〔放浪の魔女〕の異名は伊達では無く、彼女自身も同種の実力者という可能性も有る。
何せ、アレスの『鑑定眼』ですらLVやスキル、ステータスが判別出来なかったのだ。まさか鑑定を妨害する手段があるとは思わなかった。
(どっちにしろ先ずは積み荷の確認だな。
彼女の口振りを踏まえる限り、暗黒教団と無関係な代物ではなさそうだ。)
ヴェルーゼ皇女が率いる魔狼隊が、貴族用と思しき壊れた馬車を囲むアレス王子達の部隊を発見して声をかける。
どうやら既に戦闘は終わっている様で、今は検分中らしい。騎士達に案内されたヴェルーゼは馬車の中にいるアレスに声をかけた。
「闇神官達が何者かと戦っていたと聞きましたが、何事でしたか?」
一見して普通の馬車に見えたが中身は大分改造が施されている様だ。
前半分は覗き窓周辺以外は全て上下に別れた荷台に改造されており、大量の武器や食料が収められているのが空いた扉から伺えた。
座席は後ろ半分しかない有様で、しかもその席も下が収納部になっている様だ。
アレスはその座席下の収納部分から何かを取り出したところらしい。背中からは何か窺い知れず、少し立ち位置を変えて近付き。
絶句した。
「……ああ、ヴェルーゼ皇女。丁度良いところに来たね。」
「あ、アレス王子?それは……。」
「うん。闇神官達が聖都から運び出そうとしていた積み荷だね。」
振り向いたアレスは、顔中に脂汗を浮かべて青褪めていた。
その表情でヴェルーゼは彼が今、必死で音を立てない様に胃潰瘍を抑えているのだと察する。これは今見た目で分かる以上の事があるな、と。
尚、アレスが積み荷と呼んだものは、薄絹しか纏わぬ下着姿の白髪美少女だ。
意識の無い年頃の娘を抱えるその姿は酷く犯罪的な光景だったが。
「で?何を知っていらっしゃるので?」
耳を近付ける様に手首だけで合図され、無表情に顔を近付ける。
「邪龍司祭リリス。けど多分記憶喪失。
正史では砂漠の国シャラームで救助して我々の食客として参戦する筈の、暗黒教団による【聖杖ユグドラシル】奪還の原因となる少女です。」
「…………は?」
ヴェルーゼは一度に放り込まれた爆弾発言の数々に思考が追い付かない。
だが問題はそれだけでは無いのだ。
アレスは既に、もう一つ気付いてしまった。
『私は実の娘を探して旅していたの。』
『折角だからあなたには積み荷の保護を依頼するわ。』
『私の目的は果たしたから良いのよ。あなた達の元ならむしろ安全だもの。』
とある遺跡である少女リリスを連れて訪れると登場する、シュトラル。
(……この娘、〔放浪の魔女〕シュトラルの実子だァーーー~~~~ッ!!)
※次からしばらく間章続き。五章開始はGW明けを予定しています。
次の投稿は29日昭和の日予定です。
ゲームでは、彼女が戦死してもストーリーは問題無く続きますw
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