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77+1.間章 アレス王子は女好きです。

※本編は24日から再開です。

※多分九割大丈夫だとは思いますが、R18グレーゾーンです。

 猥談?エロス?さぁ……w

  ◇◆◇◆◇◆◇◆


「で。妻一人に拘って複数人の女に囲まれるのが駄目な旦那様は、一体何故女好きを公言しているんですか?」


 流石に気になって仕方が無いと、ヴェルーゼが訊ねて来たので。


 アレスはふぃー~~~~~~~~…………。と細長い溜息を吐いた。


「女好きだからさ。」


「別に女好きは長所じゃありませんよ……?」


 表情に物凄く聞きかかったと書かれたミレイユが傍に席を移す。

 視線で無関心を装おうとしているのは、敢えて全員が突っ込むのを控えた。


「いや違うんだ。オイラはちゃんと美乳派だし揉めるサイズは大事だと思ってる。

 尻だって好きだし腰の括れやうなじの良さも分かる男だ。

 そこは大事なんだ。」


「お、猥談か?嫁の前で猥談か?」


 割とこの手の話が好きなレギル王子が席に加わろうとしたが、流石に美女二人に睨まれると参加する勇気は出せなかった。

 すごすごと立ち去るレギル王子を、早々に部屋を抜け出したスカサハが肩に腕を乗せて呑みに誘って天幕を後にする。


「それ、私も聞かなきゃダメ?」


 場所は義兄アストリア王子の机の前だ。とても気まずい顔をしている。


「事情を知っている一人なのでしょう?アレス王子は煙に巻こうとしますし。」


 ヴェルーゼ皇女としては夫に女好きを前面に出して欲しくない。別にこれくらいは嫉妬深い内に入らない筈だ。


「うぅ~ん。大勢の女性が苦手な理由は分かるんだけど、女好きを公言する理由が分かるかと言えばちょっと……。

 何というか、子供の憧れにしては変かなあ、とは思っているけどね?」


 アストリアの視線で、何故今迄放置していたのかをアレスは察する。

 つまりこの義兄は、薄々事情を察していたのだ。


「うん。まあ、想像通り、前世絡みです。」


 ミレイユ王女が早速人払いをした。逃がしてくれる気は無いらしい。


  ◇◆◇◆◇◆◇◆


 端的に言ってしまえば高校時代の学園祭だ。アレスは前世にもダモクレスと似たような教育機関があった事を簡潔に説明すると「学は自腹を切って学ぶのが普通であって、国が支援する教育機関とか無いから。」と突っ込まれた。


「ダモクレスのは諜報部隊を育てるための養子教育だよ?

 国が実利の無い事をする訳ないじゃない。」


「その諜報教育は普通じゃないって話らしいですわよお兄様。」


 話を戻そう。アレスは前世でも性格に大きな違いは無い。強いて言うなら容姿は程々のイケメンであり今生ほどの美形では無かった。

 当社比倍未満?くらい美形に産まれてる。

(まあ芸能人と比べると微妙と言われる程度だ。)

 そもそも「顔より中身というのが良く分かる微妙メン」と呼ばれた男だ。


 アレスも当然の如く学園祭では張り切った。

 学園祭というのは町村の祭りに近い催し物を生徒同士でもやろうという、教師の許可を得て行う公認イベントを指す。


 お祭りを円滑に行う司会を引き受けたアレスは、学園祭の企画の一つとして男装女装コンテストというネタ企画に参加した。

 要はゴツイ男にスカートを着せ、可愛い子はカッコイイ服を着せて冷やかす笑いを求めたイベントの事だ(※独断と偏見に基いた意見です)。


「ま、まあ異世界ですしね。そういう文化もあるのかも知れません。」


 ぶっちゃけ似合わない方が笑いが取れるイベントでソコソコのイケメンが盛り上げるにはどうするべきか。振り切れるしかない(※とても偏見にm)。

 若かったそのイケメンは、全力で美少女を演出したのである。

 何せそのイケメン、七色の声音という特技があった。演技力には自信がある。


「既に何か踏み外しているのは分かります。」


 幸い顔は化粧でどうとでもなる。問題は輪郭だ。

 運動神経にもそこそこの自信があったイケメン、細マッチョの身体では流石に女と誤認させる事は出来ない。故に厚着は必須である。

 では厚着で女らしさは出せないか、断じて否である。醸し出すエロスは再現など烏滸がましい?断じて、断じて否である。


 適度に撫で肩を再現しつつ、襟を工夫しうなじの見せ加減と胸元の開きを絶妙なラインで固定。腰の細さは姿勢と歩き方で錯覚させる。

 脛毛?元々薄いさ、だがタイツと靴下でもう一押し。当然穿くのはスカートだ。

 フリル付きの巻きタイプで傾きを付けて、隙間から片足の太股を輪郭だけ魅せてチラリズムとロングスカートの上品さ、ミニスカの大胆さを良いトコ取りだ。


「既に何となくやらかしの方向性は見えて来たよね。」


 そんな事を早々に言えるのはお兄さんだからですよ。

 我こそは司会にして進行役という、声を張り上げる盛り上げ役。上品で可憐ではイカンのです。

 故に求めるは社交的且つ気さくな、親しみ易さを重視した男女の距離感を超えて来そうな快活な娘という人格設定!

 男友達と気軽に距離を詰める、偶に恥じらう無防備系美少女!

 題して『あなたの隣の友達以上恋人未満』!

 そう、男心を擽るならば、男の方がツボを心得ていると証明しよう!


「斯くして学園祭は、一番の見所がこの私女装アレスであったと言わしめる程に、大成功で終わったのです……。」


「ねぇ。私達は一体何を聞かされているのかしら。」


 さて。事件はその後に起きたのです。


 学園祭ではブロマイド、まあ美人画みたいな物も売り出してまして。

 ぶっちゃけネタとして作った写真集なんだけど、要は本よ。いやあ男子諸君どころか女性陣にすら再販を希望される程売れましたよ。

 うん。正直小道具だったから絶対赤字になると思ってたけど、コレが案外黒字になったんだ。再販とか無理だよ、商売用じゃないもん。

 ていうか学園祭が終わった後も、あの美少女は誰だと探される程だったね。


 まあ、流石に男にモテても嬉しくない訳でしてね?

 でも一部は元々素性を知ってる訳で、また女装してくれと何度も頼まれてね?

 とはいえ事を荒立てる気も無かったので、沈静化するまで隠れ回って逃げ回りながら、適当に待とうとしていたんですよ。


「まあこれでも交友関係は広かったんで、友人達の助けを借りて逃げ続けた訳なんですが。ここに落とし穴がありまして。」


 ふ。と、思い出しながら黄昏る。


「隠れるのに協力して貰った()()()()()押し倒されましたとです……。」


「っ?!」

「えぇ~~……。」

「ほぅ。」


 誰だ今の。取り合えず深呼吸。


「いや逃げられたんだけどね?『もう男でも構わない』って。

 力で負ける相手に両腕を抑えられて服を引き裂かれるって普通に恐怖だよ!

 返り討ちにしたんだけど!抑えた腕を軸にボディ膝蹴りからの顔面肘打ち巴投げコンボで脱出したんだけど!」


「ち。」だから誰だ。


「まあ、アレだよ。押し倒しが許されるのは相手の合意あっての話って事だよ。

 嫌よ嫌よも好きの内ってのはあくまで焦らされてるだけの場合だよ。

 相手が納得していないと怖いものは怖いんだよ、というお話ですな。」


 語り切ったアレスは気を静めるために深く長い溜息を吐く。


「あの恐怖は、襲われた者にしか分からんのです。」


 そう締め括った。


  ◇◆◇◆◇◆◇◆


 夜。あの話で難を逃れた事に、アレスは秘かに安堵していた。

 話したのはあくまで前世の話で、話した内容に嘘は無い。

 実際《紋章》の事が無くても、今でもアレスは男と一緒の風呂に入るのはかなり抵抗がある。

 だが足りないのだ。アレはあくまで()()に対する性的な苦手意識。

 猥談に参加し難い程度の理由でしかない。


 あるのだ。もう一つ。そしてこれは、今生。転生後の話だ。


 事の起こりは五歳の頃。

 アレスとて紋章が王家の証である事程度は知っていたので、誰彼構わず見せる様な真似はしなかった。

 但し最初にグレイス宮廷伯にだけは見せておいた。


 彼がアストリア王子の腹心なのは前世知識で把握していたので、味方に付けるためにも風呂事情を聞く序でと、本物の《紋章》かどうかを確認して貰ったのだ。

 勿論入浴前の事だ。流石に一緒に入るのはね?ホラ。流石に。


 目論見通りなるべく一人で入る様にと汚れ落としは井戸水で済ませ、グレイス伯は大急ぎで報告に向かった。まあ数日間は入らなくてもしょうがない。

 けど温泉の国出身者として全く入らないという選択肢は無いので、同世代の神官見習いだったケイトリーに聞いてみると。


『いや普段は私達も顔と手を洗うくらいよ?漁師じゃあるまいし。

 潔癖な子でも週一入るかどうかだと思うわ、そんな暇じゃないもの。』


 まぢかー。男じゃ参考にならんとは思ったけど、女性陣すらそんなかー。

 これはいよいよ自分で何とかせなならんなと思ったけど。


「体洗いたいんだったら付いてきなさいな。」

「え、いやちょっとお姉さん方?」

「あらお上手、おマセさんね。」

「子供が細かい事気にしないの。

 そもそも子供に大人のいない場所で水浴びなんてさせないわよ。」

「水場なんてどこでも使って良い訳じゃないのよ?

 飲み水や洗濯をする場所の上でトイレに使われるとか嫌でしょ。」

「で。こういう滝壺は周りが囲まれていて見張り易いし、ずっと使ってるから深い場所も埋めてあって安全性も高い訳。」

「因みに女専用ねココ。子供の頃だけよ、あなたが入れるの。」


 あれよあれよと言う間に連れて来られてしまったけど、あれ?ここもしかして、逃げる場所もほぼ無いって事では……?


「?そりゃ子供を変な場所に行かせない、小さい子の面倒も見れる場所だもの。」

「あ、ちゃんと私物を置くための小屋はあるから。」

「せやで。誰にも悪戯させんから、見張りはばあちゃん達に任せときや。」


 いや、あのね?そういう話ではなくてですね。

 何というか、男の尊厳的な何かがですね?出来れば、気にして欲しいなーと。


「「「往生際がわる~い!」」」


 正直に言おう。彼女達に悪気が無いのは分かっていた。

 そして自分の態度が彼女らに悪乗りさせた事も分かっていた。


 まぁ、どの道上を脱ぐ訳には行かなかったんですけどね?

 わたすの《紋章》ぶっちゃけ背中だけじゃ足らずに肩まではみ出してるんで。

 ただまぁ。上下両方とも守るには色々足りなかった結果。



 下半身が真っ先に丸出しになってしまった訳で。



 まぁ。下を隠しながら追い回されるのはちょっと真面目に怖かった訳で。

 この辺りでショタコンなお姉さま方に背徳的な何かを擽ってしまったらしい。

 後ワシ、追い詰められるとキャーキャー黄色い悲鳴を上げる癖がある。


『あっはっはっはっは!負けるな、頑張れ~~!』


 その所為で未だ余裕があると思われてしまった様だ。


『悪い子にはお仕置きだぞ~?』

 斯くして割と余裕が無くなって来た両手で隠しながら走るワシと。


『待てマテ~。鬼ごっこで大人に勝てると思うなよ~?』

 際どい恰好で追いかけ回すお姉さん方という構図が出来上がり。


『もう、しょうがないなぁ。手伝ってやるかぁ。』

 夕闇が進んだ結果、ノリノリで参加するお姉様達が段々と増えて来て。


 その分余裕がドンドンと無くなって来て。明かりの松明が燈されて。

『ふっふっふ~。良いでわないか、良いでわないか~。』


『きゃあ。誰か、誰かお助けぇ~~!』

 割と涙目になって来た隙に。


 遂に捕まり覆い被さる様に。


 両手を掴まれて。


『大丈夫大丈夫、怖くない怖くない。』


『天井のシミを数えている間に終わるから!』




 馬乗りになった彼女の顔は。

 前世で押し倒した()()()、全く同じ顔をしていた。




 アレスが本気で上げた金切り声の悲鳴は、その場の全員を我に返らせるに十分な声量と恐怖が詰まっていた。


『ちょ、一体何事?!』


 遅れてやって来たケイトリーが慌てて駆け付けて、震えるアレスを介抱する事になって事態は収束。一旦皆服を着て事情徴収の流れとなった。

 その間口も聞けない程に震えるアレスに、流石のお姉さん方も悪乗りが過ぎたと反省して謝罪する。


 以来アレスは、大勢の女性に囲まれるとどうしても冷や汗が止まらなくなった。

 あの後アレスは貴族入りし、温泉も開発されてアレスだけは一人で風呂に入る許可が下りる様になった。この辺はグレイス伯の手回しもあるのだが。

 まあこの一件が理由でアレスが風呂に誘われなくなったのは間違いない。


 だが。アレスが本当に怖いのは女性達ではない。

 あの場に居た女性達は全員まとめて注意を受けたが、何故かアレスを直接押し倒した女性は誰に聞いても分からなかった。


 庇われているという話ではない。全員にお互いの立ち位置を確認したのだ。

 だって誰も馬乗りした誰かの()()見ていなかったから。

 あの時に居た全員が、誰か彼か。お互いの顔を見ており。

 偶然()()()彼女では無かったと、複数人の証言で確認が取れてしまった。


 あの時見た親友と瓜二つの女性は、以来一度も見ていない。



 そしてアレスは知っている。

 あの親友はアレスを押し倒して以来距離を取る様になった半年後。




――交通事故で死んでいるのだ。


 アレスは今でも、他人と風呂に入るのが怖い。

※本編は24日から再開です。

※2/22、誤植修正。


 聖都突入前の箸休め短編その2。

 あまり放置し過ぎると出し辛くなるので今の内に。

 厳密には女好きの理由ではありませんが、要は「女好きだけどトラウマ持ち」な理由ですw

 男がOKだと誤解されたくない理由でも大体合ってるw



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