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74+1.間章 ダモクレス後宮談話

※R18に見せかけた物凄く生臭くて事務的な小ネタw

 ダモクレスは、あくまで絶対に小国です!……義勇軍結成前まではw

  ◇◆◇◆◇◆◇◆


「ダモクレス王家の後宮事情を教えてくれって?」


 事の始まりはダモクレスに嫁ぐ予定の女性陣が集まって、アストリア王子に現地の風習的なものを知りたがった事からだ。


 ぶちゃけこの手の話をアレスに聞かれても、詳細までは分からない。

 大雑把な部分は把握しているが秘伝や独特の風習はアストリアにのみ伝えられており、他国を放浪して諜報網を構築していたアレスは養子という事もあって彼より教育が遅れ気味だった。


 アストリア自身もあくまで国王戦死という有事に備え、本来より前倒しで教育を施されているのだ。

 特に秘伝に関しては王位継承前の伝承という、異例の対応を取って辛うじて失伝を防いだのが今のダモクレス王族の現状だ。

 本来どちらも即位には早過ぎる年齢と見なされていた。


 尚、この話が始まった時点で、忙しなく執務を手伝っていた筈の家臣達は挙って無言で退席した。アレスは逃げられなかった。




「先ず伝統的にダモクレス王家は、他国から正妻一人を迎える事になっているね。

 絶対では無いけど他国王族との婚姻が望ましい。けれど他国と違って側室を取る事は先ず無かった。妾が偶にいるくらいかな。」


 実はダモクレスの後宮は形だけで、基本的に正妻一人しかいなかったりする。

 主に財政と外交と近親的な意味で。


 これに対して、一般王族である王女達三人は揃って首を傾げる。

 何せ王家は権威の象徴として《紋章》の伝承という義務がある。王位継承条件の一つに《紋章》の有無を掲げていない王家は存在していない。

 王族的には側室は認めても妾は居ない、の方が普通なのだ。


 アストリア王子が王女三人にダモクレスの裏事象を説明しているのは、アレスの居る天幕の中だ。アレスの天幕は基本常に執務室として活用される。


「《王家》と《治世》は他の紋章と比べて特に継承難易度が高いんだ。

 王の直系だけで両方揃うのは多かった頃でも半分程度。だから両方揃った親戚は全て養子として王家に迎え入れているんだ。

 でもって王太子以外はいとこ同士の婚姻を推奨している。

……だからどうしても国王は子沢山になってね?」


「……財政的に複数の妻を持つ余裕が無い、と?」


 ダモクレス王家は常に、子供の養育費で圧迫される傾向にあるのだ。

 よって必然後宮は有名無実となっており、正妻は王の寝室に入り浸る事になる。

 夫婦仲的にはその方が何かと都合が良かったという側面もある。

 何せ実子に王家を継がせられるとは限らないのだ。養子を排斥する事は許されないし、血が繋がらない親に子供が愛情を抱くとは限らない。

 老後のためにも両親の努力と夫婦の結束は、他の王家より重要だ。


「しかし、それで子供を取り上げられる母親は納得するんですか?

 我が子を手放したくない母親は絶対いると思いますが。」


「ああ。だってダモクレス王家の()()は全員()()()()だから。

 我が子を王の養子にした母親は、人格面で問題無い限り全王子王女の乳母か教育係になるのが慣例なんだ。

 ぶっちゃけ王城の子供部屋は王家の子供と王族の子供の大部屋二つだけで、嫡子教育が始まったら個室が与えられる感じかな。」


※ダモクレス王家の秘密1。直系が直系扱いされない。むしろ傍流って誰?


 当然の様に養子と実子は同室だ。子供の世話は子持ち王族全員で行う。


「「「いやいやいや、それ貴族としておかしいでしょう?!」」」


 親的にはちゃんと教育して貰えるのが王子で、割と後回しにされるのが王族だ。その代わり庭で自由に遊べて、それでも必要な教育は絶対に受けられる。

 育児に関しては楽だが、ダモクレスで顔見知りじゃない王族とか有り得ない。


 そもそも当事者としては責任が重くて自由が少ないのが国王で、政治に関わりたいなら大臣やらになった方が良い。

 好きな仕事があるなら王子という身分は割と邪魔だ。親も同じ経験をしており、積極的に王子にしたいとは思わないのだ。


※ダモクレス王家の秘密2。実は王族の食事ランクは成績順。

 実は高確率で宰相の食事ランクが一番高い。


「というか一番苦労するのは君達より君達が連れていく従者達かな。

 そもそも王城内には基本王族しか入れない。他国から来た従者達は基本城壁沿いの塔か城下に住む事になるからね。」


「いや、ちょっと待って下さい!それはどういう事です!?」


 普通なら貴族は自分の侍女や従者を連れて結婚するのが普通だ。

 そもそも婚家が全面的に信用出来るとは限らない。非道な扱いをされないための防衛策でもあるため、世話係を完全に排除するなど有り得ない。


「いや、便宜上の都合なんだコレが。

 だってダモクレスでは城内の全員が直系か傍流の王族しかいない。

 他国の従者達より同格か身分が上なんだよ。」


「「「え?」」」


「ダモクレス城では城内の人出が直系か傍流の王族だけで全部埋まるんだよ。

 当然料理長も侍女も従者も庭師も全部王族だ。ダモクレスは王族の人数が多い上に、北部では一番王族の戦死率が低い土地でね。

 だから王族だからって侍従や家令が出来ないは務まらない。ただ飯ぐらいを養う余裕は北部には無いよ。だから直系も傍流も手に職が必須だ。」


※ダモクレス王家の秘密3。王城勤務者は過半数が元王子か姫。残りイトコ。


 子沢山とはそういう事だ。というか親が侍女や侍従教育が出来ないと貴族落ちが()()()()。なのでダモクレス城ではあらゆる職種を教える教育施設が揃ってる。

 作法が半端な者に元王族を名乗られると王族の権威が落ちるというのが理由の筈だが、親が従者経験無い事を責められる王家は多分他に無い。

 ダモクレスで左団扇の生活が出来るのは、王族では無く貴族なのだ。


「だから他国従者が自国の心算で命令すると必ず無礼討ちレベルになる。

 王族同士なら教え合える風習でも、他国従者には聞ける身分が城内には居ない。

 だったら城壁の塔を丸々王妃の側近達に貸し出して、独立空間を築いて貰った方が問題起こらないだろう?

 王妃だけは王族と対等だから城内を自由に行き来出来る。なんで王と寝室を共にするかは王妃の選択に任せる形になってるんだよ。」


「……まさか、妾が許容される事情って。」


 アストリア王子が神妙な顔で頷く。


「ぶっちゃけ夫婦より姉妹従姉妹と仲が良い場合は普通に在り得るよね?

 だから王族は王と妾になる事は出来ても側室にはなれないって形で制限をかけて()()()()()()にしてる。

 妾には実子だろうと養育権無いよ。そうしないと側室と同じになっちゃう。」


「ああ成程、実質親戚枠専用なんですね?

 《紋章》の継承があるから王族内なら見逃すという抜け穴を作った訳ですか。」


 ヴェルーゼがひやと冷たい視線を向ける。彼女達とて浮気されたい訳じゃない。

 だが待って欲しい。当事者的には他国の嫁と結婚した方が嬉しいのだ。

 今後の夫婦生活の為にもその辺は特に主張したい。


「ぶっちゃけ妾候補って、全員あっしらの子供の頃の恥を共有されてる相手だけに限られるンすよ。

 あと彼女らが夫婦間の情事をね?相談序でに雑談のネタにしない訳が無くて。」


「「「うわぁ……。」」」


 その辺アストリアは特に辛い。王妃の口からおしめを変えた時の苦労話が親世代の雑談として普通に出てくるのだから。

 そういう意味でハーネルに移住したいと言われたら、本音で言えば納得しかないのだが。だからと言って認めたくはない。認めたくは無いのだ。


 実際問題、アレスもアストリアも多分誘ったら断られない程度にはモテる。

 元より親戚筋、気心も知れているし全員の性格も把握している。何よりどっちも可愛がられた弟分、相手に嫌われた覚えは無い。

 そして絶対、()()()()は性癖含めて()()()()()()()

 確信をもって、言えるのだ。


  ◇◆◇◆◇◆◇◆


「では今、お二人以外のダモクレスの王子はどの様な方が?」


「っ?!」


 だがこれに関して即座に顔色を悪くして反応したのはミレイユ王女だった。

 対してアストリアは苦笑し、他の首を傾げた王女達に告げる。


「今代のダモクレス王子は私達二人だけだよ。

 流行病と戦争が一度に重なった時期があったんだ。出兵の際のダモクレス陥落が止めになって、今直系で生きているのは我らが母上、王妃一人しかいない。」


「「「っ!?」」」


 無論居ないのは今代だけであり、先代や傍流は未だそれなりに居る。

 だが国が亡ぶ様な状況下だ。昔のダモクレスには支援する余裕が殆ど無く、今の宮中の侍女従者は大半が家族を失っている。

 未亡人でも王族は生活が保障されており、再婚を希望する者は殆どいなかった。

 そして今のところ《王家》と《治世》の二つを宿せる王族は誕生していない。


「そんな訳でダモクレス王族は全員、自分の事は一通り出来る様に教育される。

 しかも世話係に関しては実質人が余っている状況で、王族以外を雇う事は無い。

 君達が連れて来る家臣達は、全員新造される後宮で生活して貰う予定だね。」


 尚、姫君は王城生活だし侍女達は出勤制になる。騎士達は交代制になるので昼間の後宮にはほぼ男しかいない事になる。


「それ、後宮って呼ぶの止めるべきでは?」


「後宮が無いのも対面が悪いんだ……。」




「ていうか新造ですか?城に王族しか居ないのに拡張するんですか?」


「拡張じゃないよ、新築だ。ダモクレスはバーランドを併合しただろう?

 後周辺海域の群島も全部正式にダモクレス領として認めて貰えたから、今までの王城では、倉庫としても規模が足りなくなってるんだ。

 今元ダモクレスの領端港町に、城そのものを新しく建造しているんだよ。」


「いやいや、城を倉庫って。」


「北部では最低でも城の三割くらいは倉庫だよ?

 離宮があるならともかく、王族の居住区は建物の二割も無いと思うよ。

 常備軍が無くても籠城用の兵舎は用意するし、軍馬も城内に確保するのが常識。

 貴人を迎える際に肉を用意するための畜舎、鮮度の高い食事を出すための畑。

 ちょっとした貴金属を修理するための鍜治場。

 大体この辺が城に必要な施設でしょ?」


 勿論攻城戦用の防衛施設はあるが、この世界ではあまり重視されない。身体能力を反映出来ない攻城兵器の有効性が低いからだ。


「けれどダモクレスは全部王族だけで賄ってるから居住区の規模は小さい。

 兵糧の備えは何処の貴族でもあるけど、非常時分全てを城内の中庭だけでは賄い切れないよね?」


 この問いには王族達が全員同意する。そのために二重防壁などがあり、農地用の防壁等が用意されたりもするのだ。


 本来王城内には信用出来るものしか入れない。

 元々ダモクレスが極端なだけで、城で厨房や下働きを貴族子弟が担当する事は案外珍しくない。

 行儀見習いとして従者や下働きを経験し、嫡子以外の家を継げない貴族の受け皿にもなるのだ。王家にとっても身元は貴族達が保障してくれる。

 他国人が紛れやすい平民を雇うより、余程防諜に優れた仕組みとなる。


「北部は特に食料を生産出来る期間が短いんだ。

 暖かい時期から冬の備えをしておく必要があるから、倉庫は特に重要になる。

 税金は殆ど冬の備えと軍備で消えるからね。北部では倉庫の大きさがその王家の権勢を象徴していると言っても過言ではないよ。」


 そっちではどうなの、と聞かれると大体の答えは案外同じだった。


「私達の城では一階か地下が倉庫になっている程度ですね。

 王城には王家の区画と執務区画、食堂や社交場に美術室、宝物庫でしょうか。

 兵舎も畜舎も城内にありましたが大体別の建物として独立している、王家の立ち入らない別区画です。

 ただ正門前の中庭は騎士団の調練場として使われていましたね。」


 倉庫区画もあるにはあったが、広義の城内であり狭義では城外になる場所にしか配置されていなかった。基本的に城の中枢は政務の舞台なのだ。

 会議場や大臣等の執務室も王城にある。書庫なども同様だ。


「その辺は多分規模の違いかなぁ。

 拡張するとなるとその辺を意識して建築する必要が出てくるのか……。」


 腕を組むアストリア王子に対し、アレスがおいおいと書類を取り出す。


「その辺は建造前に決まっているよ。基本的には兼用出来る部分を増やしてある。

 倉庫は城壁と一体化させる形で数を増やし、兵舎は物見台も兼ねた塔にした。

 中庭も今よりは広いけど、畜舎や薬草園を増やしてある。その分畑や調練場は外の第二城壁側を活用する形で活用するしか無いね。

 今までの王族区画は第一城壁内、それも地上一階と地下階は除外される形かな。

 地上二階も今後は執務用になるから、王族との兼用区画になる予定だ。」


 ちゃんと確認してくれ、と必要書類をチェックして貰う。

 どうもダモクレス近隣の書類は全体的に確認が遅れていたようだ。アストリアは気まずい顔で首を竦める。


「でも大丈夫かい?今まで城の中にあった趣味区画が無くなったら親戚達が挙って反発すると思うけど。」


「何言ってんのさ。その親戚筋が挙って新しい工房やら鍜治場やらを要求しているから、屋上にこれだけの予算が必要なんだろ。

 そっちの予算もちゃんと確認してくれ。未だ王太子は兄さんなんだぞ。」


「ご、ゴメンてば。ていうか予算足りるの?」


 勿論問題無い。というより現状、他国が交易に積極的じゃないから海外貿易は今ダモクレスの独壇場となっている。

 ある程度今の内に規模を拡大しとかないと困るレベル。

 というか経済圏が急激に拡大しており、扱う予算額は年単位で桁が増えている。

 流石にそろそろ成長速度も下がって来たが、昔ながらのダモクレスを維持するのは不可能なくらい発展しているのだ。

 難民の流入も聖都が解放されれば落ち着くだろうが、今最も治安の良い国と呼ばれているのは伊達じゃない。


「……えっと。結局私達は、どういう生活になりそうなんですか?」


 新しい城に移るなら、先程の話はどうなるのか。

 流石にミレイユ聖王女も頭が回らなくなって来たと泣き言が漏れる。

 従来の淑女教育とはまた違った部分に頭を使う羽目になっており、これが新婚の苦労かと思考がズレて頬が緩む。


「……この遠征にかかる期間と築城の進展度合い次第かなぁ。

 予備王家としての側面は無くならないなら多分ダモクレス色が強いままだと思うけど、聖王家との関わり次第で結構変わると思う。」



「なんか普通に言ってますけど、この築城予算ってハーネルの数倍ですからね?」


 推定予算に目を眩ませたマリエル女王は、先王にして父たるハーネル老王の無謀さを目の当たりにして胃がキリキリと痛み出す。

 これでもマリエルはアストリアの婚約者なだけで部外者だ。築城予算もあくまで一部しか見れないし、見せて貰える税収だって商業予算だけだ。

 領地面積に関わる農業予算や領内地図も見せて貰える立場には無い。


 なのにぼろ負けしている中堅国家ハーネルの女王は、自分が如何に井の中の蛙であったのかを思い知らされた気分だ。



 義弟の国、財力ヤバ過ぎ。

 《紋章》があると後宮周りが絶対普通の中世風には出来ないんですよねぇ……。

 管理出来ない一夫多妻は害悪なので、妾は絶対反対なのが王族。

 妾だろうが何だろうが《紋章》さえあれば後継者もアリなのが貴族。

 でも貴族と王族の境界って……ねぇw?


 因みに金に困ったら他国を侵略するのが一般北部。

 新天地目指すのが一般ダモクレス人ですw



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