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76.第十八章 大司教の秘事

※次回は11日建国記念日の投稿予定です。


 さあ刻一刻と迫って来ましたw

  ◇◆◇◆◇◆◇◆


 大聖堂内、至天の間。

 ここはあらゆる秘密が漏れぬ様にと外部から隔絶された、対談用の一室だ。

 イザベラ大司教により、アレスとリシャール殿下に絶対に秘密を守れる《紋章》所有者にだけ参加を、という条件で会談の場を設ける事になったのだ。

 うん。ぶっちゃけコレ若干立場が違うけど原作の流れだわ。


 リシャール殿下は聖王家の面々とエルゼラント卿を伴い、アレスは兄アストリアとヴェルーゼ皇女の他、スカサハ、レフィーリア、リシュタイン姫、レオナルド王子に同行を願った。

 流石に多過ぎるとイザベラ大司教も難色を示したし、集められた面々も自分達が選ばれた理由にそれぞれ首を傾げていたが。


「彼らには知って頂く必要があります。

 この場では聖王家のお三方、そして私とヴェルーゼ皇女、スカサハ。

 この三人は三神具所有条件を満たしています。

 残りの面々は、私が知る限りでは条件付きで所有条件を満たすでしょう。」


「「「なっ?!」」」


 アレス以外の全員が様々な理由で驚く。三神具の所持条件など、本来聖王家の者か実際に継承していた他の二王家しか知らない筈の秘奥だ。

――いや、正しくはもう一人。


「そうですか……。ではやはり貴方は知っていたのですね。」


 理由を聞いたイザベラ大司教も、そういう事ならと同意を示す。

 確信は無くとも薄々察していたのだろう。本心までは伺い知れないが、原作では大司教は度々物語が始まる前に神託を受け取っていたと口にする機会がある。

 神託自体は一度だけだという話だったが、アレスが神の力で転生した以上、彼女の受けた神託にアレスの話が含まれている可能性は十分にあった。


「さて。私が皆様にお話しせねばならないのは、教会の最秘奥です。

 ですが全てを明かすには相応しい場所を必要としています。この場で明かせる話にはどうしても限りがあるのです。

 そして、その秘密には封印魔法【ラグナロク】も含まれています。」


 視線の先には聖王家の三人、そしてヴェルーゼとアレス。


「私が今言える事は()()

 ()()()聖王家が保有する〔聖王家の紋章〕。これが我々には絶対に必要です。」


 所持していますか、との問いに三人が頷く。

 うん?この台詞無かったな、原作のゲームには。


「二つ目は【三神具】の奪還。封印魔法【ラグナロク】は、【三神具】の力抜きにはヨルムンガントを捕らえる力を発揮出来ません。

 必ずや【三神具】とその使い手を揃えて下さい。」


 お。良かった、此処は原作台詞。


「三つめは、魔龍ヨルムンガントの復活はもう阻止出来ません。

 何故なら魔龍ヨルムンガントは、既に帝国皇帝ルシフェルの体に降臨する事で、不完全ながらに復活を果たしているからです。

 完全復活は最早、時間の問題でしかありません。」


「「「なっ、何ぃ~~~~っ!?!?」」」


 ま、この場ではこの程度で終わるんですけどね?詳しくは聖都奪還後に改めてというお話になるので。一応聖都にもちゃんとした設定があるんですよ。


「ですが狼狽える必要はありません。今のこの場に『浄化』スキルを持つ者が()()揃っている事は、正に神の思し召しでしょう。

 私はここに、完全復活前の魔龍ヨルムンガントであれば、完全討伐は可能であると宣言いたします。

 何故なら『浄化』スキルとは、()()()()()()()()()()()()()()()与えられる、文字通り神意を象徴する力なのです。」


「ななな、何だってぇ~~~~~~っ!?!?!?」

「いやソコを君が驚くの?」

 アストリアの突っ込みは耳に届かない。


 アレスは叫ぶ。心の底から。いや、薄々気付いてはいたのだ違和感には。

 〔大聖堂〕から『浄化』スキルと殆ど同種の気配を感じた事に。そして目の前の大司教様が一時総本山から降りた際、その大聖堂と同じ気配が残っていた事に。


(は、はぁぁぁ~~~~~~~?!?!大司教が『浄化』スキル持ち?

 大司教以外はって!大司教以外はってそういう意味だよね?

 まさか大聖堂を出たがらなかったの、『浄化』スキルの気配を隠すためェ?!)


 だとしたら発言が原作と変わるのも納得だ。

 元より〔帝国の聖女〕は教会が承認した、総本山が把握する存在だ。

 『浄化』スキル持ちだったから承認されたと考えれば、まして原作でこの手の話が出なかったのも当然だ。

 ヴェルーゼ皇女は未だこの段階では謎だらけの人物であり、本来の身分を明かしても居なかった。正しくはこのタイミングで初めて明言される筈だった。

 つまり本気で帝国に敵対しているのかは見定める必要があり、全てを明かされなかったのは彼女を警戒していたとも考えられる。


(けど今は違う!ヴェルーゼの立場を固めるためと、後々の伏線の為に早々に立場を明言して貰っている!)


 しかもアレスというもう一人の神意を託された者が揃っている。

 『浄化』スキルは共振し、互いの存在を感知出来る。大司教もアレスの『浄化』スキルに当然気付いているのだ。

 既に皇女は真っ向から帝国と敵対を宣言し、しかもアレスと婚約を交わしたとも聞かされている。この状況下でヴェルーゼ皇女を信用しないという理由は無い。

 というか、イザベラ大司教かなりテンション高い。コレ浮かれているのでは?


「ど、どういう事だ?それではアレス王子も聖女と並ぶ存在に聞こえるぞ!」


 レオナルド王子達はアレスの《覇者の紋章》を知らない。だがそれを踏まえても聖王家視点ですら神意という言葉は強過ぎる。皆が困惑を隠せていない中。

 不意にヴェルーゼ皇女がはっと声を上げる。


「ま、まさか!【神具】との接触?!

 ならアレス王子も、記憶を失う前に【三神具】のどれかと接触を?!」


 へけ。

 へけけけけ。

 違うんだなぁ~、これが。


 全員の注目が胡乱で脂汗によって蕩けそうなアレスの表情を見て、次第に困惑へ変じていく。


(そうだね!まさに神意だよ!神様が許可してたよ!()()()()()()()()を!!)


 地鳴りの様な音が一同に緊迫感をもたらし、アレスの次の言葉を待つ。


「イザベラ大司教。この話に万に一つの行き違いや誤解が有ってもなりません。

 先ずは、貴女が知る神託の詳細をこの場で明かせない理由だけでもお聞かせ願えませんか?それによって私の話せる話も変わります。」


「……っ!それはあなたの秘密が、先日の一件だけでは無いと?」


「先日の一件で、見事に言い損ねました。」


「「「っ?!?!?!?」」」


 《覇者の紋章》を知る面々、揃って動揺。え?アレ以外にもあるの?

 だがイザベラ大司教は逆に得心がいったという表情だ。


「そうですね。言われてみれば当然です。

 そもそもあなた方は大司教に継承される秘伝には関わりなく過ごされた。

 であれば〔聖教会〕の始まりと〔聖王伝説の真実〕に関しては、私がお教えするべきなのでしょう。」


「なっ!聖王伝説の真実だと!?それは聖王家に伝わっていない聖王の伝承があるという事なのか?!」


「それは分かりません。我々は聖王家とは距離を取った、独立した組織です。

 ですが〔聖教会〕が存在する理由、それは政治的理由等で聖王伝説の真実を抹消させないためです。」


「そ、それは……!」


「そもそも教会とは聖王と共に魔龍ヨルムンガントに挑んだ聖女ジブリールが組織した、神聖魔法の使い手達による互助組織でした。

 その真の目的は、魔龍復活に備えて後世に真実を伝え残すためだったのです。」


 聖王家を始めとした面々が、思い思いの反応で動揺を露わにしつつ沈黙を選び、話の続きを伺っている。

 それは詰まり、真実の中には聖王家にとっての不都合があるという話で。


「つまり。少なくともこの場の全員が、真実を握り潰せない状況が必要だったと?

 もしくは、確固たる証拠がこれから目指す先にはある、とか。」


 アレスの指摘にミレイユが、裏切られた様な表情で腰を浮かす。

 地鳴りの胃音はいつの間にか凪いでいた。


「それは私達が信用出来ないという事ですか?!」


「ミレイユ王女、恐らくそれ程衝撃的な真実が隠されているという事です。

 少なくとも握り潰したくなるような、真相を疑いたくなる様な何かが。」


 何だろうな。今ワシは、物凄く心穏やかに聞いていられる。

 当然の事ながらこの先の流れは全て、原作に存在しない未知の領域だ。

 しかし、あるのかな?本当に、俺の知る真実を上回る様な驚愕が。


 これに対し、イザベラ大司教はその通りです、と頷いて口を開く。


  ◇◆◇◆◇◆◇◆


 それは三人の英雄達から始まった。


 一人目は初代聖王であり双子兄弟の兄、熱血漢のジュワユーズ。

 一人目は二代目聖王を継承した双子の弟、冷静沈着なシャルルマーニュ。

 最後は教会の創設者となった幼馴染の少女、神託を受けし聖女ジブリール。


 世界を暴虐の闇に沈める邪龍ヨルムンガントを討つために立ち上がった三人は、世界を放浪しながら人々の窮地を救う旅を続ける。

 やがて失われた神々の祭壇に辿り着いた三人は、そこで神と邂逅を果たす。


 神に苦境を訴えた三人は魔龍討伐の手段として、魔龍に通じる武器【三神具】と()()聖王家の紋章と呼ばれる聖印【神威の聖印】、邪龍殺しの秘術【ラグナロク】を授かった。


 【三神具】を振るう三人は各地に点在する人の王を束ね、全ての人族の力を結集して、山中を竜、地平を人に棲み分ける事を誓い竜族の長を説得。

 全ての種族の力を結集して邪龍討伐に挑んだ。


「多くの伝説では神から授かったのは【三神具】のみ、邪龍討伐に挑んだのは一度きりと伝わっています。全てはその一度で決着が付いたと。

 けれど。邪龍討伐は実は、二度行われているのです。

 最初の討伐は〔暗黒教団〕の介入によって、失敗に終わっているのです。」


「「「ッ…………!?!?!?!」」」


 アレスを含めた全員が知らない話に、一同は驚愕の中で口を噤んで続きを待つ。

 アレスは未だ自分の真実以下だとは確信しながらも、思わぬ心理攻撃に心臓が早鐘の様に危機感と警鐘を鳴らしていた。


「初代聖王ジュワユーズと聖王の弟シャルルマーニュはどちらも聖女ジブリールを憎からず想い、どちらが彼女を射止めるか勝負していたそうです。

 そして彼女を射止めたのは聖王では無く、弟君シャルルマーニュ卿の方でした。

 そして暗黒教団が狙ったのも、最も教団にとって脅威だった筈の聖王でも、増してや聖女でも無く。

 弟君シャルルマーニュ卿の方だったのです。」


 聖女の守りは完璧だったが、シャルルマーニュの方はそうでなかった。

 故に聖王は愛する者と弟の為に命を投げ出して庇い、結果【神威の聖印】も失われてしまった。邪龍は重傷であったものの健在。

 聖女ジブリールは最後の力を振り絞る聖王と共に【ラグナロク】を行使した。


「結果は失敗でした。邪龍を大地に縫い付け、撤退には成功したものの邪龍の猛威は尚も健在でした。

 自身は直ぐに動けずとも、眷属たる〔ダークドラゴン〕を放ち暗黒教団を各地で暗躍させて聖女抹殺を試みたのです。」


 やがて彼らの親友トールギスが聖王の神剣を引き継ぎ、【三神具】の力でオリジナルには及ばぬものの〔神威の聖印〕の複製に成功する。

 そして暗黒教団を退けてから改めて邪龍ヨルムンガント討伐を決行、その心臓を止める事に成功した。

 だが邪龍は魂だけでも復活を果たせる事は神託によって告げられており、だからこそ【ラグナロク】が必要だったのだが。


「ですが元より【三神具】に加え真なる【神威の聖印】があってこその封印魔法。

 複製では【ラグナロク】に【三神具】の力を上乗せ出来なかったのです。

 故に当時は封印が精一杯。封印を維持する事で【三神具】の力は送り続けられましたから、長期的な浄化を以っての邪龍消滅を試みたのです。」


 沈黙が、息を呑む余地すら無い重い沈黙が。


「邪龍封印を終えた一同は、世界を聖王の名の元に統一して聖王国ジュワユーズを築き上げました。

 正しい意味での初代聖王はシャルルマーニュ王ですが、彼は自分が二代目と主張して初代王の名と聖王国に兄の名を冠しました。

 聖王の名が今の世に伝わっていないのは、この辺りの裏事情が原因でしょう。」



 彼らの親友トールギスは邪龍封印の地で守護者として【神剣ウロボロス】を引き継ぎ、今の帝国の祖となった。


 二代目聖王シャルルマーニュと聖女ジブリールは結婚し、王子と王女を出産。


 王子は聖王家の祖となり【神剣アヴァターラ】を継承。


 王女は古王国シルヴェスタ王家に嫁ぎ、【聖杖ユグドラシル】を継承。


 そして王妃を引退したジブリールは総本山に戻り、次世代の大司教を育て上げて【ラグナロク】を継承させた。


「もう分かりましたね。

 その複製された〔神威の聖印〕こそ、今に伝わる〔聖王家の紋章〕です。

 そして二代目聖王の名を与えられた白月城シャルルマーニュは、かつて聖女ジブリールがおられた場所。

 あの地には、もう一つ聖王の遺産が眠っております。」



……その聖王の遺産。()()()イベントアイテムである。



 何でしょうね?薄々感じてはいたけど実は【三神具】以外にも()()()()()()()()アイテムが、実は沢山在ったんじゃないでしょうか?


 例えばそう……。


 〔聖王家の紋章〕と〔聖王の盾〕とかいう、イベントでしか出番が無かった筈のアイテムとかさ。

※次回は11日建国記念日の投稿予定です。


原作「どういう心算ですか?帝国の聖女様。」

ほんぺん「流石アレス王子ですね!帝国の聖女すら味方に付けるとは!」


 『浄化』スキルなぞ只の導火線に過ぎぬw


 三神具だけじゃないって、言ったよねw?



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