意を決した先
 ̄〝私達放送部は週5日活動しております。〟
「(凄い、凄すぎる!!この人が喋る度に、耳に自然と入ってくる!)」
〝放送部〟の部長さんは顔は見えておらず、声のみだが、まるで小鳥のさえずりのように心地よい声色かつ聞き取りやすい速さ、抑揚の付け方で話している。
「(放送部、入ってみたいかも...。)」
隣のねむりちゃんは興味が無いのかぼーっと窓の外を観察している。
「それでは入部届けを渡しておきます。今日と明日の体験入部期間を終えた時にまた回収しますので、クラブ名と部長印を押して提出してくださいね。」
一通りクラブ紹介が終わった後、入部届けと部室案内が配布された。
「(体験入部はもちろん放送部...!場所は、放送室か。)」
そう思っていると先程までぼーっとしていたねむりちゃんが話しかけてきた。
「はるかは体験入部、どこか決めたの?」
「んーっと、放送部だよ!ねむりちゃんは?」
ふわふわとした声色のねむりに対してはるかは元気よく答えた。
「いやぁ、それがあんまりいいの無かったから帰宅部に入ろうかと...」
「そっかぁ。」
申し訳なさそうにこたえたねむりは、帰宅部の部室へと去っていった。
放送部へ着いたはいいが、人が全く居なかった。
「(そんなに人気無いのかな。あんなに綺麗だったのに)」
人見知りをあまりしないはるかでも、部室のドアを開くのには勇気がいった。
「(厳しい人だったらどうしよう...)」
そう思いながら、はるかは1回、2回と深呼吸をし、思いきってドアノブを捻った。
「失礼しますっ!!体験入部できまし...え?」
「んぁ?」
そこには赤いヘアバンドできらきらと光る長い黒髪をまとめ、パジャマ姿でカップ焼きそばをすする人の姿があった。