可憐な声
体が重力に従って落ちてゆく。周りには時計、椅子、そして兎。底の見えない大穴、はるかは落ちてゆく。
 ̄ぉ...い.....
 ̄お....い
「はるか!!起きなさい!!」
「はいぃっ!?」
「(まさかの夢オチ!?!?)」
7時に設定していた目覚まし時計の音が鳴り響く。私が起きたのに安心したのか、母は部屋を出ていった。
トーストのいい匂いが部屋まで漂ってくる。私は急いで灰色の制服を着て支度をした。
「(クラブどんなのがあるんだろう。ねむりちゃんは、入るのかな。)」
色々と考えていたら手元にあったトーストを食べきってしまった。
「行ってきます!」
高校に入って2回目となる挨拶を元気よくし、家を出た。
「おはよぉ。」
教室のドアを開けると、ねむりちゃんが眠たげに挨拶をしてくれた。
「おはよう。ねむりちゃん。」
ねむりちゃんの髪の毛の寝癖がふわふわと揺れていた。
クラスの皆はまだよそよそしくもあるが、昨日より少し活気だっている。
そんな中にチャイムの音が鳴る。
昨日のように勢いよく開いた扉から女王先生がカツカツとヒールを鳴らしながら歩いてきた。手元よく見ると、生徒名簿の他に紙を1束持っていた。
「皆さんおはようございます。休んでいる方は居ますか?....居ないようですね。」
女王先生が少しつり上がった鋭い目で周りを見渡し、生徒名簿にチェックする。
「昨日も言った通り、今日はクラブ紹介です。オンラインで動画を見るので、移動はしません。」
そう言うと先生は教室に設置してあるプロジェクターのスイッチを押し、ホワイトボードに動画を投影した。
 ̄ ̄こんにちは!!サッカー部です!
サッカー部から始まり、どんどんとクラブ紹介は進んでゆく。
これといってめぼしいものは無かったので、帰宅部にでも入ろうと思っていたその時、
 ̄ ̄〝皆様、ごきげんよう!〟
鈴を転がしたかのような可憐な声が聞こえた。