また
痒志と而男は仲良くなった。
なぜなら、二人には、けん玉が好きとか、部屋に滝廉太郎のポスターを飾っているなどの多くの共通点があったからだ。
痒志と而男はよく遊ぶようになった。
(三日後)
「さっさと私の本を返しやがれ。」
「だからまだ読めてないっての!」
二人はもうかなり仲良くなっていた。
「よろしい。ならば戦争だ。」
しかし痒志は、而男に貸した本が返ってこないので、怒っていた。
とはいっても貸したのは昨日で、貸した本は『新世界より』だったので、なかなか酷だ。
が、痒志は非常識的な人間である。他人の気持ちなど分かるわけもない。
而男が突っ込みを入れる前に、ポケットから戦車を取り出し、而男にぶつけた。
戦車にぶつかられて、而男はぺしゃんこに潰れた。
「ああ、潰れてしまった。」
そう嘆く痒志だったが、戦車と地面の隙間をするりと抜けたぺちゃんこの而男に、
「お前が潰したんだろ!」
と叫ばれて、照れくさそうにウインクをしたのだった。
またある時、痒志は而男の足をもって、ハンマー投げの要領で投げた。
痒志曰く、
「メリーゴーランド楽しいよね。」
而男は非常識人なので、とても怒った。
中々に愉快な二人組である。痒志は言った。
「而男はメリーゴーランド、嫌いかい?」
「好きだけどあれはメリーゴーランドじゃねえよ!」
「そうか。じゃあ本物のメリーゴーランドに乗りに行こう。」
而男は嬉しそうな顔を見せたが、多分痒志の事だろうから並大抵のメリーゴーランドには行かないだろうと思い、少し恐怖した。
しかし痒志は人間である。人の心が読めるわけもないので、而男の心理状況など鑑みずに
「さっさと返事をしろこの野郎。潰したもうぞ。」
と言った。而男は更に恐怖して、
「もちろん行くよ。今予定がないか考えてたんだ。」
と取り繕った。痒志は笑顔になった。
夕焼けが綺麗な日だった。