信頼
ただ暗い。
それに気づいた私は、自分の手があると思われる場所を見た。
しかし、何も見えない。
昨日、今日と危機的状況を潜りぬけ、少しは慣れたかな(慣れたくなかったけど)と思ったが、これは初体験で、どう対処したらいいか分からない。
そのわりには落ち着いている自分に苦笑しながら、光も何もない世界を歩き出す。
なぜこんなにも恐怖を感じないか。
なんとなく、その理由は分かっている。
あいつが、ハルが、絶対助けてくれるって、信じてるから。
嫌いだったけど、ほんっとうにだいっ嫌いだったけど、今は――
「まぁ、少しは見直した…かな」
上を向いて、呟く。
「だから、早く助けて。ハル」
一瞬だった。
できることは、何もなかった。
ただ、遅れて伸びた手が空を切った感覚が、いつまでも消えずに残り続けていた。
運動場に面した窓が突然割れた。
黒いマントを羽織り、鈍く光る大鎌を持った白骨が、心利にその鎌を振り下ろした。
何をしようとしたか、瞬時に理解した。
でも、何もできなかった。
どんなに頭脳明晰でも、運動神経がよくても、何の役にも立たない。
そんな世界にいると、痛感させられた。
「――ハル君!ハル!」
ハッとして部屋を見回すと、あのバカ男が心利の体を抱え上げていた。
「息をしていないんだ!もしかして、心利ちゃん…」
グ…と下唇を噛み締める。
これ以上、巻き込んではいけない。
この世界に、踏み込ませてはいけない。
理性では分かっていても、本能は言うことを利かない。
「絶対、死なせないっ」
「ハルく―」
「バカ男!心利を抱えてこい!」
近くに転がっていたほうきを拾い上げ、今だ空中を浮遊してケタケタ笑う白骨を睨む。
天照ハルがキレたらどうなるか。
「身をもって味わえ、化け物」
いよいよ戦闘…
文章力が試されそうで嫌だな…