番外編-返却-
番外編ならギャグだろうという意見を真っ向から否定する小説←
読者様の想像力をフル活用して読んでください←←
「天照君」
ヒョイッと、見知らぬ女の顔が目の前に現れた。
「君、天照ハル君でしょ?」
「……」
「そんなに冷たい目で見ないでよ。
私、三年の藤白陽。よろしくね」
その女は自己紹介をすると、俺の手を握った。
「いちおう図書委員の部長だから。
締め切り切れの常習犯の君に注意しにきたの」
言いながら、女は上着のポケットをから細長い紙切れを出した。
「返却期限は一ヶ月前。
その本、図書委員の後輩が借りたいって言ってるの。
さっさと返してくれない?」
笑顔で紙切れを押し付けながら、女はさっさと教室を出て行った。
その姿が消えてから、俺は押し付けられた紙切れを見つめた。
書かれていた本のタイトルは、確かに一ヶ月前俺が借りた物。
だけど、こんな本借りる奴なんていないと思っていた。
「……うちの、後輩?」
どこのどいつか知らないが、物好きな奴もいるものだ。
とりあえず、あの小うるさい先輩がまた来る前に返しておくことにして、俺は教室から出て行った。
「陽先輩」
ドンッと、山のように積み上がった本を机に置き、後輩は私をじっと見た。
「天照ハルにちゃんと言ってくれました?」
「言ったよ。
返すようにって」
にこっと笑いながらそう言うと、後輩は表情を緩めて私の前のイスに座った。
「だけど真面目だねぇ。君も」
「先輩が不真面目なんです。
いちおう部長なのに」
膨れる後輩のほっぺを押し、私は席を立つ。
「四六時中気を張ってるなんて疲れること、私は出来ないよ」
まだ何か言いたげな後輩を残し、私は図書室を出る。
少し後ろに視線を戻せば、そこには真剣な顔で本の整理をする後輩。
それを見て小さく笑いながら、
「ほんと真面目だね。
心利ちゃんは」
と、小さく呟いた。
翌日。
サボ……当番のため図書室へ来てみれば、カウンターに本が一冊置いてあった。
手にとって本のタイトルを見ると、それはあの少年が持っていたもの。
「返却箱というものを知らないのかな、彼は」
苦笑しながら本の裏のバーコードを機械で読み取り、棚に押し込む。
「さてと」
グッ、と伸びをしてからイスに座り、机に足を上げて天井を見上げる。
カチコチと針を進める時計の音を聞きながら、後一時間ほどで現れる後輩を思い出し、自然と笑みが零れた。
「……にしても、心利ちゃん。
こんな本読みたいなんて変わってるね」
本棚にみっちりと押し込まれ、並べられている黒い背表紙を見て首を傾げる。
当の本人がこの場に居たら、先輩の方が変わってます!なんて言うんだろうな……と、自分の変人ぶりを理解しつつ、藤白陽は昼寝を始めた。
後輩が怒りながら先輩を起こすまで、後一時間半。
結局何借りてたのか謎な件←まぁ、本編と関連付けて考えてください。因みに時間軸的には二人が出会う前(学校で)です。全然更新してなかったのに完成品が微妙ですね・・・はい、すいませんι 夏休み入ったんでガンガン更新できたらいいなぁ、と思ってます^^では。