昔々
昔々の話だよ。
ある学校に一人の少女がいた。
少女は内気であまり人と接するのは苦手だった。
けれど、幼馴染の少年にだけは心を開いていたんだ。
ある日、その幼馴染の子に『七不思議を発かないか』と少女は誘われた。
他にも人が来るらしく、初めは断っていたが、少年に何度も誘われて、ついにその子は折れてしまった。
その日の夜、学校の裏で待ち合わせをしていたため、少女はこっそり家を抜け出して待ち合わせ場所に向かった。
しかし、そこにはまだ誰も居なくて、仕方なく少女は待つことにした。
一時間が経ち、二時間が経ち、三時間が経った。
それでも一向に誰かが来る気配は無い。
空も白み始め、少女は一旦家に帰ることにした。
学校に行って、なぜ誰も来なかったのか少年に尋ねようと思っていた時、教室から楽しそうに笑う声が聞こえた。
『昨日本当にアイツ行ったらしくてさぁ。誰も来るはずないのに朝まで待ち続けたらしい』
『うわっ、お前酷ぇな』
『いいんだって。アイツいい加減鬱陶しいんだよなぁ。いっつも俺ばっかり頼ってさ。休日も遊ぶ人いないから、って俺の家来んだよ。重いんだよなぁ』
『背後霊みたいだな』
『あ、それピッタリ』
それから教室に再び笑い声が木霊し、少女はその場を走り去った。
唯一信じていた人に裏切られ、怨みを抱えながらその少女は走り続けた。
その日から少女は行方知れずになる。
必死の捜索も空しく、手掛かりを全く残さずに、その少女は消えた。
彼女が今どこに居るのか、誰も知らない。
ぱっと目を開いて、生江は起き上がった。
今しがた見た夢が頭の中をちらつく。
それを忘れようとするかのように頭を振り、生江はチラッと窓の方に視線を向ける。
斜め下に見える廊下の窓の向こうを、手を繋いで走り抜ける二つの人影が見える。
そして、その後を追うように少女が足早に通り過ぎた。
それを見てから小さく息を吐き、再び寝転ぶ。
「……疲れた」
思いがけず飛び出た言葉に苦笑しながら、ついこの間一松に突っかかってきた少年の顔が頭を過ぎる。
「……守りたいなら、最後まで足掻け」
今回の依頼主を裏切るような発言にクッと笑いを堪える。
自分にとっては、依頼主が勝とうがあのガキが勝とうがどうでもいい。
ただ、個人的には――
「……子供は好きじゃないはずなんだけどな」
パイプイスの上に胡坐をかいて手のひらに顎を乗せ、机に肘をつく。
そこから見える光景を見て、思い出すのは昔のこと。
「昔、昔のことだ……」
自嘲気味な笑みと共にそう零し、すぐに表情を切り替える。
今最も優先すべきは依頼内容をこなすこと。
そのために打てる手は全て打った。
「どういう結末になるかは、君達次第だ」
微かな希望を込め、生江は言った。
シリアスな方向に流れていく… 書いていて分かったこと。碧乃にホラーは向かない←全くといっていいほどゾクッとこないぜ←←きっと碧乃がホラー苦手だからです。GW頑張って更新する!とか言ってたわりに全く更新してなくてすいませんでした((汗 今日は子供の日ですね!高校生は子供に含まれるのか?今からお年玉が心配です…((汗