理
違和感を感じた。
夕方頃からそれを感じ始めた俺は、感覚を頼りに校舎内をうろついていた。
そんな時にジャンヌと偶然鉢合わせ、心利と玄関で待ち合わせをしていると言うから、俺もそれに着いていった。
無闇に探し回るより、そこで待っていた方が得策だと思っていた。
その結論を、すぐに後悔する羽目になるとも思わずに――
「……寒いな」
はぁ…と息を吐き、ハルは呟いた。
時刻はもう12時を回っていた。
この時間になっても心利が来ないのはおかしい、と思いつつも、闇雲に動いたところで事態が好転するとも思えず、ハルはここに留まり続けていた。
しかし、いくらなんでも遅すぎる。
ハルは心利を探しに行こうとジャンヌを呼んだが、返事は無い。
もう一度呼びかけるも、やはり返事は来なかった。
変に思ってジャンヌが居た方を見た瞬間、ピクリとも体が動かなくなった。
「ジャンヌはもう居ないぞ。天照ハル」
ジャンヌが居たはずの場所には、シルクハットを被った少年が立っていた。
「……居ないって、何をした?」
ハルが口を利いたことに相手は一瞬目を見開いたが、すぐに元の無表情に戻ってしまった。
「さすがあの一族の末裔だな……
居なくなったとは言葉の通りだ。この世で生きる時間も終わり、魂がこの世にいられる時間も過ぎた。後はあの世で暫く暮らして、再びこの世に生まれ来る時間を待つだけ……」
右手に持った金の懐中時計をパチンと閉じ、少年はそれを懐に仕舞った。
話を聞いたハルはグッと下唇を噛み、少年を睨む。
「……そんな顔をしてもどうにもならないぞ。
お前達の一族はいつも理を枉げるが、それだって限界がある。
特に時間に関しては、過去にも未来にも影響を与える可能性がある」
「……それは」
「生死を人が操ろうとするといつか身を滅ぼすぞ。
ジャンヌが生まれ変わってくるのを待つことだ。いつになるかは分からんがな」
「なっ……」
ハルが言い返そうとする前に、その少年は笑みを残して消えた。
と同時に体も楽になり、下足箱にもたれて天井を見上げた。
脳裏に浮かんだのは楽しそうに笑う――
シルクハットさん(碧乃命名)は本当に謎だけ残して去っていきましたね^^けっこうすぐにまた出番は来る…はず← ていうか、ジャンヌまた消えた…まぁ、仕方ないんですが。またきっと帰ってくると思います。碧乃はジャンヌが好きなので←因みにタイトルは理と書いてコトワリと読みます。 更新遅れてすいませんでした;これからも読んでいただけると嬉しいです!