登校
瞼の向こうが明るい。
遠くから、声が聞こえる。
「心利ちゃーん、起きなさーい」
「……ん。あれ?もう朝?」
お母さんに起こされて目を開けると、窓から朝日が差し込んできていた。
私はいつの間に寝てしまったのだろうか。
「もう8時よ。早く朝ご飯食べて学校に行きなさい」
「えっ」
ぽかーんとする私にお母さんは机に置いてあった時計を放ると、部屋から出て行った。
パタン、と音がして扉が閉まったのを見てから、私は手元に来た時計を見る。
長身は12を。
短針は8を指していた。
「……まずい」
ぽつりと呟いてから、急いでベッドから飛び出す。
クローゼットの中から制服を取り出し、着替えながら鞄に教科書を詰め込む。
「あぁぁぁぁぁぁ……まずいまずいまずい」
自分でも訳の分からないことを呟きながら、私は鞄を引っ掴んで部屋を出た。
ダダダダッ!と一気に階段を駆け下り、バンッとリビングの扉を開け放つ。
「おはよう、心――」
「いただきますっ!」
お父さんの朝のあいさつも遮り、皿の上に置かれていたクロワッサンを口の中に詰め、紅茶を一気に飲み干す。
「んぐっ……それじゃ、いってきますっ!」
「心利ちゃ――」
再びバンッと荒々しく扉を開け放ち家を飛び出していった娘の背を見ながら、父――琳は言いようのない空しさに襲われた。
「……涙。僕はどうしたらいいんだい?」
「とりあえず子離れしなさい」
うぅ…と肩を落として落ち込む琳に涙はそれだけ言うと、自室に戻っていった。
「……絶えろ…絶えるんだ、僕」
リビングに一人取り残された琳は、歯を食いしばってソファーでのの字を書いていた。
「まずいまずい……まずいってばぁぁぁぁあっ!」
一方、勢いよく家を飛び出したはいいものの、心利は赤信号で足止めされていた。
腕時計を見ると、時刻は8字15分。
走っても学校まで5分はかかる。
「……完璧遅刻だ…遅刻なんてしたことなかったのにぃ」
恨めしげに赤信号を見ながら、心利は脇に設置されたベンチに座った。
「もうこのままサボろうかなぁ」
そんな考えまで浮かびかけた時、カーンという音と痛みが頭にはしった。
「っう~!」
咄嗟に頭を押さえる。
(い、いったいどこのどいつが……)
痛みに呻きつつ辺りに視線を走らせると、視界にタイヤが映った。
自転車のタイヤだ。
乗ってるのは誰だ、と視線を上に移動させながら、私は目を見開いた。
「サボる気か?心利」
「……ハル」
自転車に乗ったハルが、意地悪く笑いながらそこに居た。
「あんたどうして――」
「送る。乗れ」
ハルは私の質問を遮ると、自転車の後ろに乗るように言った。
「……二人乗りはダメなんだよ」
「遅刻するか、しないか」
「うっ……あ、あんまり速くしないでね」
仕方なく後ろに乗ると、ハルは自転車をこぎ始めた。
すぐに自転車はスピードを出し、髪が風に靡く。
落ちないようにハルの服を握りながら、私は小さくお礼の言葉を述べた。
「……ありがとう」
「どういたしまして」と聞こえたのは、気のせいだったのだろうか。
心利が呻くシーンで「あれ?デジャブ?」と言わせたかった。心利ちゃんはよく頭に衝撃を受けるんですが、頭を叩かれると2000?個の細胞が消滅するらしいですよ。しかも復活はしないという。作者は心利ちゃんの頭が心配です← 気づけばもうすぐ40話目に。それなのに全然話が進まないって…理由は簡単。一話の長さが短いからだよ!((オイ 今回は更新一週間ストップしていました。というか、したかったのですが出来なかったんですよね。高校に入学したはいいんですが、予想外の忙しさで書けない…書きたいけど書けない…時間を見つけてコツコツ書いていきたいです^^ それでは、次回から本格的に2シリーズ目が始まるかと思います。あまり期待しないで←待っていてください^^ 後書き長っ!