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AA  作者: 碧乃苑
33/46

その子 あの子



教室に戻ると同時に、チャイムが鳴った。


慌てて教室に飛び込んでくる子、逆に教室を出て行く子、私はその光景を画面越しに見ているような気がした。



「――子、音子」


「え…あっ、はい!」


先生に呼ばれ、弾かれたように立ち上がる。


教室中の視線が、一気に自分に突き刺さった。


「音子…真面目なお前が珍しいな」


先生が呆れたように言う。


「すいません…」


「まぁ、いい。じゃあ、この問題解いて」


指定された問題を解くために教壇まで歩いていく。


でも、それも他人事のようにしか感じなかった。





「心利ちゃん、元気ないねぇ」


放課後。


心配気な顔で私に話しかけてきた子は、オカルト部の変人で有名な子だった。

まぁ、私は変人なんて思ったことはないけど。


「大丈夫?昼休みから調子悪そうだよ」


私の席の前のいすに座ってその子。


「あはは、そうかな?」


私は無理に笑ってそう言ったが、不意に視界がじわりと歪んだ。


あぁ、まずい。

止めなきゃ。


そう思っても、一回零れだした思い()は、簡単には引っ込んでくれない。


「ご、ごめんね…突然こんな……ごめん、ね」


急いでその場を立ち去ろうと席を立った私。

しかし、相手の子は私の手首を掴んで引き止めてきた。


「は、離して…」


「離さない」


言った通りその子は話そうとしない。

それどころか、掴む力はどんどん強くなっている。


「いっ…」


痛みに顔を顰めたのが良かったのか、相手は慌てて手を離す。


「ご、ごめん!私力強くて…」


申し訳なさそうに謝るその子。


「…別に、いいよ。じゃあ」


その隙をついて、私は教室から出て行く。


なぜだか分からないけど、早くこの空間から出て行きたかった。



廊下に出て昇降口に続く階段を下りる。

靴を履き替えて扉を潜ろうとした時、後ろから声が聞こえた。


「心利ちゃん!」


グッと、体が強張った。


ゆっくりとした動きで振り向くと、下足箱の前にあの子が立っていた。


息を切らしながらも、その子は言う。


「私、そこまで心利ちゃんとも仲良くない、し…悩み相談とかには頼りない、相手だけど……

 でも、聞くだけならできる、から…たいしたアドバイスは出来ないけど…自分の中に溜め込む、より…誰かに言っちゃった方、が…すっきりすると、思うから…!」


ハァハァと息をつくその子。

でも、その子の目は真っ直ぐこちらを見つめていた。


「…ありがとう」


私はそれだけ言うと、ダッとその場を走り出す。


あの子の優しさが、嬉しかった。



…そういえば、あの子の名前何だっけ?





心利が校門を曲がるのを見送ると、あの子(・・・)はニ、と笑って後ろを振り向いた。


「これでいいんだよね?一松」


そこに立っていたのは、満面の笑みの一松。


「完璧や、生江(イクエ)


生江(・・)はそう一松に言われると、肩の荷が落ちたように下駄箱に持たれてその場に座った。


「もうこんな仕事は押し付けないでよね」


無造作に短い茶髪をかき上げ、生江は言う。


「悪かったなぁ。でもうちは生江のこと信用しとるから、絶対成功する思とったよ」


一松にそう言われながらも、生江は気にいらなそうに頬を膨らませた。


しかし、急に表情を変えたかと思うと、バッと勢いよく立ち上がった。

そして、鋭い目つきで辺りに視線を走らせる。


生江のその様子を見て、一松は口角を吊り上げてニィ…と笑った。


「久しぶりやなぁ」


二人が向いたその先。


そこに居たのは――


天照(テンショウ)


ハルだった。









新キャラ。私の設定には全く存在していない子です←片鱗さえありませんでした。名前も突発的に決まりました。全然考えてないですよ。0.1秒ぐらいで決まりましたよ。今書いてたら勝手に物語の中で動いてくれやがりました。この子心利と仲良くなりそうな気がするな…多分((オイ

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