夜河一松
「じゃあ、これを…天照」
授業が始まった。
一時限目は数学。
数学担当の先生は一年生の時と変わっていなかった。
そんな数学担当の先生は、話を聞く気も無く外を眺めていた俺を現実に引き戻した。
呼ばれて仕方なく立ち上がり、壇上まで歩く。
チョークを取って、そこで初めて問題を見る。
文章題だ。
読み進めていくと、連立方程式の文章題だということが分かる。
俺は難なく答えを書くと、さっさと席に戻った。
先生が答えの説明をしている。
しかし、そんなもの聞く気は元より無い。
俺は今日一日を何事も無く過ごし、早く家に帰るだけ。
もうここに来る気は無いのだから。
「ハルさ…じゃない、天照さーんっ!」
昼休み。
給食を食べ終え、教室を出て行こうとした俺を止めたのは、ジャンヌが俺を呼ぶ声だった。
教室の入り口でニコニコしながら立っているジャンヌ。
ジャンヌだけなら、まだ良かった。
しかし、その横には--
「久しぶり、天照君」
控えめに笑う心利が立っていた。
一瞬思考がトんだが、すぐに俺は二人を引っ張って教室を飛び出す。
そのまま人気の少ない所まで走り、少し息が切れている二人を見る。
「お前達何で…」
「クラスが違うと分かったので…昼休みなら、大丈夫かと……」
ハァ…と息を吐きながら、ジャンヌが言う。
それに続くように、心利も途切れ途切れに言った。
「ハァ…こうでもしないと、会ってくれそうになかったし……ジャンヌから、私のこと避けてるって聞いてたし……」
「別に避けてるわけじゃ--」
「じゃあ何?避けてるんじゃなかったら何なの?」
心利の語気が強まる。
真っ直ぐこちらを見てくる瞳には影も無く--
だから、余計何も言えなかった。
俺はフイッと心利から顔を逸らし、踵を返した。
これ以上、自分には関わってほしくないから。
そんなハルを止めようと、心利は慌ててハルの手を掴もうとした。
しかし--
「何や面白そないなことしたはるねぇ!」
「うわっ!」
ニョキッとどこからともなく現れた少女に阻まれた。
でもハルは突然聞こえた訛のある話し方に立ち止まった。
そして振り向いて、目を見開くハル。
次いで出た言葉は、ハルが知るはずも無いこと。
「…夜河……一松?」
これが、今回の騒動の始まり。
京都弁が分かりません。関西弁と何が違うのか… ていうか、大阪弁は関西弁じゃないの?方言なんて分かんないよぉぉぉおっっっ!!!!! 因みに作者は地元の方言も理解していません。そんな作者はインターネットで変換機能のサイトを探して、方言を変換しています。正しい方言かどうかは分からないので、京都弁分かる人!違うところがあったら教えてください。