接点
「おはようございます!ハル様!」
バンッと勢いよく開けられた扉の向こうには、制服を着た短髪の女が立っていた。
「……ジャンヌ?」
半分ぼやけた頭でそう尋ねると、女-ジャンヌは腰に手を当てて言った。
「ハル様、もう朝ですよ。学校に行く時間ですよ」
朝からうるさい、と思いながらも、ハルはベッドから抜け出す。
「着替える」と言うと、ジャンヌは慌てて扉を閉めた。
しかし、気配は扉の前に残ったまま。
ジャンヌが学校に通い始めて半月。
京に言われてジャンヌと福沢を呼び戻し、周りに影響を与えないようにする薬を作り、ジャンヌは学校に入学するまでの根回しもした。
ジャンヌからは、心利が普通に学校で暮らしていると聞き、安心した。
それで終わりのはずが、なぜかジャンヌは俺を学校に連れて行こうとした。
何でそんなに連れて行きたがるのか問い詰めると、案の定心利から頼まれたと言った。
でも俺は行く気は無い。
“学校”というものはもう体験したし、これ以上他人を巻き込むつもりも無い。
そう言っても、ジャンヌは変わらず俺を学校へ連れて行こうとする。
心利に頼まれたとバレてからも、それを止める気配は無い。
そんなことが一週間近く続き、仕方なく俺は今日、約一年ぶりに学校へ行く。
久しぶりに制服に袖を通し、数回程しか使っていなく、新品同様の鞄を持ち、部屋を出る。
「ハル様、逃げないでくださいね」
ジャンヌに釘を刺され、溜息混じりに「分かった」と言うと、やっとジャンヌは安心したのか、表情を和らげた。
まぁ、学校に行ったところで、心利に顔を合わせる機会は少ないだろう、と俺が考えているのも知らず。
学校に着くと、まず驚いていたのは先生達だった。
その次に他の生徒。
ひそひそ話が飛び交う中、俺はジャンヌと途中で別れ、ジャンヌ達の隣の教室に入る。
クラスが違うと分かると、ジャンヌは眉間に皺を寄せて俺を睨んだが、俺はそれを無視する。
俺は一度たりとも心利と同じクラスだ、なんて言ったことは無いし、違ってよかったとも思っている。
これで心利を巻き込むこともないのだから。
鞄をロッカーにしまって、久しぶりに席に着く。
周りからの視線は、半年前と変わらない。
憧れ・期待・嫉妬・憎しみ…
だが、そんなものには慣れている。
慣れすぎるぐらいに…
ハル君暗い… ていうか、気づいたら30話目!よく続けられたな、自分…←