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AA  作者: 碧乃苑
25/46

吉川京



心利が洗面所に駆け込んでいったのを見て、ハルは今まで蚊帳の外だった京を睨んだ。


京もその視線に気づいたのか、ハルに向かってニ、と笑った。


「今更何しに来た。吉川(ヨシカワ)(キョウ)


ハルのその目には、明らかな憎しみが篭っている。


しかし、そんな視線を向けられても京はヘラヘラと笑う。


「今更って程でもないと思うけどね、ハル君」


「今更だ。父親(アイツ)に言われて来たのか」


「自分のお父さんをアイツ(・・・)呼ばわりは酷いものだね。

 まぁ、当たらずとも遠からずってところだよ」


京は楽しそうに言う。


「今回はね、あの人に言われて来た、っていうのもあるけど、面白い話を聞いてね。

 あの天照ハル(・・・・)がいれ込んでる女の子が居るって」


「っ…心利に何かあったら…」


「そんな怖い顔をしないでほしいな。僕は何もしないよ。

 それより、まさかいれ込んでた子が音子家の娘だとは思わなかったよ」


京は緑のビンを取り出すと、それを揺らして喉の奥で笑った。


「ククク…あんなこと(・・・・・)があったのに、彼女は君に心を許してるようだね。

 いや、違うか。彼女は何も覚えていない。ショックが大きすぎて、忘れてしまったほうが――」


「黙れっ!」


ガッと椅子を蹴倒して立ち上がり、京に掴みかかろうとするハル。


しかし、後ろから聞こえた声に、頭が一気に冷める。


「どうか、したの?ハル」


ギリ…と歯を食いしばり、ハルは椅子を起こして再び座る。


「えっと…何か、あったんですか?京さん」


問われた京はヘラッと笑い「何でもないよ、心利ちゃん」と言った。


何でもないことはない、と思いながらも、心利は口を出せずにいた。


「あ、えっと…そ、そうだ!ハル、ジャンヌや福沢さんどうしたのかな?まだ通路に居るなら迎えに行かなきゃ」


無理に明るい顔を作って部屋の扉に向かう心利。


そんな心利に、ハルは言った。


「ジャンヌと福沢は、もう居ない」


「…え?」


歩を止めて振り向く心利。

その瞳は驚愕に見開かれている。


「あの二人も同じ文字化けだ。

 もう、居ない」


「…嘘だ」


「嘘じゃない」


「だって…助けてくれたんだよ?自分の身を省みずに、私も、ハルも、京さんも…」


「無理なんだ。

 文字化けは存在しないモノ(・・・・・・・)。いくらズレた世界に居たとしても、世界の均衡が崩れるか、二人の存在が消える。居なくなったことになる」


「そ、んなの…」


ぽた、ぽた…と頬を伝って涙が零れ落ちる。


「だって…お礼も何も言ってないのに…恩返しも、してないのに…」


こんな別れなんて、嫌だ。








あれ、ちょ、目から変な汁が… ていうか、なかなか文字化け編終わりませんねぇ。一気に今日更新したんだけどな…

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