終焉
「さすがに、時代の違いと言うのでしょうか…」
ジャンヌは剣を取り落とし、呟いた。
目の前の黒服は、いくら刺しても斬っても、全くもって効果が無かった。
それなのに、同じ文字化けであるはずの私達は、傷ついていく。
「これも裏切りの代償、ですかな…」
福沢様が呟く。
「でも、後悔はしていません」
ジャンヌの真っ直ぐな目を見て、福沢さんは笑う。
「そうですな」
福沢さんはそう言って、ジャンヌから借りた短刀を構える。
「福沢様。私、甦れてよかったです。
世界は昔よりも平和で、幸せで…」
こんな私にも、友達が出来た。
「私も、楽しかったですよ」
黒服が、銃を構える。
銃と剣。
勝敗は見えている。
それでも――
「守ります。あの方達は、必ず」
キッと黒服を見据え、剣を振り上げる。
パァンッ!
銃弾が脇腹を掠める。
しかし、重力のまま、剣を振り下ろした。
ザンッ
(!…手ごたえが…)
今まで空気を斬っているようで、まるで手ごたえが無かった敵。
それなのに…
ザァッ…と、足元から崩れ落ちていく黒服。
それは砂になり、どこからか吹いてきた風によって、開け放されたままだった扉から外に出て行った。
「いったい何が…」
呆然とする福沢さんだったが、ジャンヌにはなんとなく分かった。
「やりましたね…ハル様」
そして、徐々に薄れゆく自分の体を見て、小さくほほ笑む。
「福沢様、ハル様、心利さん、京様…さようなら」
笑顔を残して、ジャンヌは消えた。
福沢さんもそれを見て、異変に気づいた。
「ここまで、ですか…」
少し寂しげに笑い、福沢さんもジャンヌの後を追うように、消えた。