本
フラフラする体を起こし、周りをグルリと見渡した。
一面、本本本…
所狭しと本が並べられている。
棚に入りきらなかったのだろう本は床や机に積み重ねられ、正に足の踏み場が無いとはこういう事を言うのだと、分かった。
その時、本だらけの部屋に異質な物があるのを発見した。
透明なビンの中に入れられた、緑・黄・紫・青…色とりどりの液体が入ったビンが、棚にきちんと収められていた。
『薬、を…棚…二段目…一番右の…赤い…飲まなきゃ…』
不意に、脳裏を過ぎったハルの言葉。
もしかして、このことなのかもしれない。
急いでその棚に駆け寄り、ハルが言っていたビンを探す。
「棚の二段目…一番右…赤色の…あった!」
そのビンを取り、ハルの元へと走る。
「京さん、薬!ありました!」
「へ?あ、それ?」
ゼィゼィと息を吐く京さん。
京さんが元に戻るまで待っているわけにも行かず、私はビンの蓋を開けてハルの口につける。
しかし、もう意識がないため、飲めるはずもない。
「飲んで…飲んでよ、ハル!」
焦る私を見かねたのか、京さんは息も絶え絶えに言った。
「心利ちゃ、んが…口移し、すれば…いいじゃないか…ハァ」
「なっ…!」
何をとんでもないことをサラリと言っているんだ。
カァ…と顔に熱が集中するのを感じて、私は下を向く。
「じゃない、と…ハル君、助からない…」
「そ、それは…」
「ハル君を…助けるんだろう?」
そう言われて、ハッとする。
そうだ、ハルを助けなきゃ。
じゃないと、私はまた――
グッとビンを握る手に力が篭る。
私が、ハルを助ける。
改めて決意し、赤い液体を含もうとした時、ビンが光を反射した。
その方向を見て、私は慌ててビンを置き、それに駆け寄る。
太陽光を反射して輝くそれを持って、私は再びハル達の元に行く。
そしてそれに赤い液体を流し、ハルの口に持っていく。
「目を覚まして…ハル」
そして、赤い液体は滑りこんでいった。