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AA  作者: 碧乃苑
19/46

助け



「ハァ…ハァ…

 間に合ったみたいだね」


そう言ったのは、心利を運ばせたヘタレだった。


かなりの全速力で来たのか、汗で髪が額に張り付いている。


そして、その後ろから現れたのは――


「ハルッ!」


今にも泣きそうな顔をした心利だった。


「ハル、ハル、ハル…」


目に涙を溜めて戸惑いながら俺に駆け寄る心利。


「…心、利」


「何?私、どうしたら…」


違う。

逃げろ。


「に、げ…ろ」


「え?」


心利が振り向いたと同時に、京が叫ぶ。


「心利ちゃん!」


ザンッ、と音がした。


倒れたのは、黒服だった。


「ふぅ…ハル様。一人で戦おうとしないでくださいよ」


ジャンヌがそこに、立っていた。


「ジャン…っ!」


再び痛み出した右肩を押さえて、俺は壁にもたれる。


「ハル殿、ご無事ですか?」


福沢諭吉が、眉間に皺を寄せて聞いてきた。


これがご無事に見えるなら眼科に行ってこい。


負傷した俺、戦える女が一人と一般人の女がもう一人。

頭がいいだけの男は、こういう場面では役に立たない。

今のところ頼りになるのはヘタレだけだが、こいつも信用していいか分からない。


しかし、選択する暇を与えず黒服は再び立ち上がる。


こいつ等は普通の方法では倒せはしない。


迷っている時間は、無かった。


「…おい、お前等」


無理やり体に力を入れて立ち上がり、俺は言う。


「地下に…行く。そこに、本が……っく」


「ハル!」


心利がバランスを崩した俺を慌てて支える。


視界はどんどん狭まって、このままじゃ出血多量で死ぬな、といやに冷静な頭の隅で思う。


「鍵が、ある…ズボンのポケット…右の…」


声もどこか遠くから聞こえるようで、何を話しているのか分からなくなる。


「――ハル―め―けて」


「薬、を…棚…二段目…一番右の…赤い…飲まなきゃ…」


フ、と視界が暗くなった。



完全に目を閉じたハルを見て、心利は更にパニックに陥った。


「どう、どうしよ…ハル、目開けない…し、死んじゃわない、よね?死なないよね!?」


ジャンヌや福沢さんを問い詰めても、二人は視線を逸らすだけだった。


「な、何で…訳分かんない…何が、どうなって…」


パニックに陥った心利を助けたのは、京だった。


「ハル君、地下に行けって言ってたよね。地下の薬を飲まなきゃって。

 もしかして、それでハル君は助かるかもしれない」


「…助かる?ハル、助かるの?」


「多分ね」


そう分かった途端、心利はグッと唇を噛んで、涙を堪えた。


「行きましょう。ハルを助けに」


今ハルを助けられるのが、私達だけなら。


そう決意する心利を見ながら、京はほくそ笑んだ。







まさかのブラック・ボックス発見^^

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