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AA  作者: 碧乃苑
17/46



敵とは言っても、それをどう表現すればいいか分からなかった。

ただ、そこに居る(・・・・・)という感覚を頼りに、手探り状態で敵に挑もうとしていた。


それが急に、声を発した。


『久しぶりだね、天照(テンショウ)君』


そいつが声を発するたびに、その姿ははっきりとしてくる。


「お前いったい――」


その先は言えなかった。


現れたその姿に、息を飲む。


『天照君。もう僕を忘れたかな?』


控えめに笑むその姿。


忘れるはずが、ない。


「…音子(オトネ)心玖(シンク)


ギュッ、と鉄パイプを握っている手に力が入る。


目の前の人物はあの頃と変わらず(・・・・・・・・)、黒く短い髪・黒い瞳で立っていた。


しかし、少し違和感も覚える。


(体が…否。

 雰囲気が、違う…)


心利()が大好きで、子どもらしく元気に外を遊びまわっていた少年は、容姿も少し大人びて、独特の雰囲気を醸し出していた。


『覚えてくれてたんだね』


「っ…お前は、もう――」


『死んでるよ。

 でも、なぜかこうしてココに居る』


今にも消えてしまいそうな儚い声で、目の前のやつは話す。


『君達と話すことが出来るのなら、それを活用しない手はないと思ってね。

 この世のモノ(・・・・・・)でなければ、僕は干渉できるから』


今まで黙り込んでいたジャンヌの肩が、微かに跳ねた。


『一番憑きやすいモノがコレ(・・)だったからとり憑いたんだけど…

 ちょうど良かったみたいだね』


そう言って、心玖は俺の前まで歩いてくる。


『僕が憑いていられるのは僅かだ。

 だから、手短に用件を話す』


真剣なその表情に、ゴクリと喉が鳴った。


『今回のこの事件は、序章にすぎない。

 もっと大きな事件が、君()を待ち受けている』


「…もっと、大きな?」


『いずれ、天照君も立ち向かわなきゃいけなくなる。

 君の、家族についても』


「なっ…お前どうして――」


どうしてその事を、と言おうとした瞬間、心玖の姿がぶれた。

心玖は自分の姿を見て、顔を顰める。


『時間だ』


徐々に、心玖の体が薄れていく。


『天照君。

 あの時(・・・)君が言っていたことを、守ってくれていて嬉しいよ。

 そして、これからも。心利(あの子)を頼んだよ』


「ふざけるな!おいっ!」


心玖を問い詰めようとして伸ばした手は、空を切った。


「ふざけ、るなよ…」


残されたハルは、俯いて下唇を噛む。


「……ハル様。早くしなければ――」


「…あぁ、分かってる」


心玖が消えたと同時にそいつ(・・・)が消えたのにも気づいて、俺は荷物になる鉄パイプを放り投げた。


「ハル様、乗ってください!」


ジャンヌの声と共に、馬に飛び乗る。


周りに居た雑魚共は、ボスが消えたことにより仲間割れを始めていた。


「ジャンヌ、急げ」


「はい、分かっています」


もう目の前に、屋敷は見えていた。








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