繋がる-京・福沢さんSide-
トン、トン、と軽い足音を立てて、僕は鉄パイプが組まれた工事現場の中を跳ぶ。
さっき会ったばかりの一万円そっくりのおじさんは、後ろで四苦八苦しながら後をついて来る。
追える分だけまだすごいなぁ。なんて感心しつつ、腕の中でぐったりとしている少女を見下ろす。
音子心利。
ハル君が大切にしている子。
一方的に想いが空回りしてる子。
でも、僕にとってはこの子は違う意味を持つ。
「一万円のおじさん、大丈夫ですか?」
ビルの屋上で一度立ち止まって振り向くと、おじさんは何とか追いついてきていて、僕の隣に立った。
そして住宅街の先を見て、言う。
「後少し…あぁ、あの家です」
そのおじさんが指す方を見ると、少し怪しい雰囲気を醸し出す、西洋風の豪邸が建っていた。
あそこに今から行くのか、と思い、つい口角が上がる。
「……」
しかし、隣からの視線を感じてそこ顔を向けると、一万円のおじさんは眉間に皺を寄せてこちらを見ていた。
「どうかしたんですか?」
「…あなたは、ただの一般人です。それなのに、いきなりこんな事に巻き込まれて恐ろしくはないのですか?」
最もな質問だなぁ、と思いながら、表ではへらへらと笑って言う。
「そりゃ恐いですよ…僕なんか何にも出来ないし、いきなりこの子を連れて行けなんて…」
「そうは思えませんがな」
以外に鋭いおじさんの読みにチッ、と内心舌打ちをし、視線をそのおじさんから逸らす。
マズい事になったな、と思いつつ、こんなところで阻止されてたまるか、という思いから僕は再びおじさんの方を向いて、笑う。
「まぁ、それより今はこの子を早く助けないと」
話を逸らされたことに明らかに不満を持った顔をしながら、おじさんは渋々「先を急ぎましょう」と言って向こうの家の屋根に跳び移る。
僕もその後に続こうとした瞬間、腕の中が僅かに軽くなった。
「……ん」
声を漏らしたのは僕でもなく、おじさんでもなく、生死の境をさ迷っていた子――音子心利だった。
お久しぶり(え、いつも?)の更新です!^^
今回はそれぞれの視点を一気に3話更新しました。
とりあえずこの『文字化け編』終わらせなきゃな、と思いながら更新してます。
いつも読んでくださってる方、ありがとうございます!