表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
AA  作者: 碧乃苑
14/46

繋がる-心利Side-




私の家族は、古本屋を営むお父さんとお母さん、当時小学5年生だったお兄ちゃんに私という、どこにでも居そうな普通の家族だった。



「お兄ちゃん…お兄ちゃんっ」


今まで溜め込んでいたものが、一気に堰を切って溢れ出した。

そんな私をあやすように、お兄ちゃんは頭を撫でる。

昔と変わらず、同じ感覚で。


そう思った瞬間、私は現実に引き戻される。

あの時(・・・)から変わらない…


「……はは…そう、だよね」


お兄ちゃんの服を掴んでいた手を離す。

そうだ。

分かってる。

お兄ちゃんは、あの時もう――


『心利?』


突然黙りこくった私を心配したのか、お兄ちゃんが首を傾げて顔を覗きこんでくる。

その顔に私は笑って、お兄ちゃんから一歩離れる。


『心利、どうかしたのか?』


触れようとして伸ばした手から、私はまた一歩、距離をとる。

そして、歪んだ視界でお兄ちゃんの顔を見て、言う。


「お兄ちゃん…私お兄ちゃんのこと、大好きだよ」


『心――』


「でもね、行かなくちゃ。戻らなきゃ、行けないの」


そう言うと、お兄ちゃんは少し寂しそうに笑いながら、口を開いた。


『心利が笑ってくれるなら、僕はそれでいいよ』


ス、と再び伸ばされたお兄ちゃんの手が、私の髪を絡め取る。

そしてお兄ちゃんはもう一度笑って、光る四角い物の方を見た。


『この光の中を通れば戻ることが出来る』


「本当!?」


私は急いでその中を通ろうとしたが、お兄ちゃんに止められる。


『心利。行く前に、一つ言っておきたいことがある』


「…何?」


尋ねると、お兄ちゃんは顔を顰めて言った。


『思い出すんだ』


「……え?」


すると、突然光が私を包み込んだ。

お兄ちゃんは口早に言う。


『思い出すんだ!あの子のことを!』


「お兄ちゃ、何言って…ウワッ!」


その瞬間、グイッと何かに引っ張られて私は光の中に突っ込む。


一人光る物の前に取り残された心利の兄――音子心玖(オトネシンク)は、心利が消えた所を見て、呟いた。


『思い出すんだ…天照君のことを』


そう呟くと、心玖はその空間から消えた。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ