約束
「お兄ちゃん、なの?」
震える声でもう一度尋ねると、少年は心利の髪を撫で、言った。
『心利』
「ハル様っ!」
硬直状態の俺の意識を戻したのは、馬に乗った少女だった。
「お前…確か心利と一緒にいた…」
「はい、ジャンヌといいます」
名前を聞いて、グッと体に力が入る。
そんな俺の様子を見て、ジャンヌはふ、と笑う。
「安心してください。私達は見方です」
「私、達…?」
「は、ハルく~ん…置いていくなんて酷いじゃないかぁ」
間抜け声に振り向くと、ヘタレと和服の男が後ろに立っていた。
「お前達も、文字化けか。
…いいのか?」
問うと、ジャンヌは小さく笑った。
「私達はただの“文字化け”
ここに在るのは、ただの思いです」
そう言いながらも、ハルはジャンヌの震える手を見て溜息をつく。
恐くない、はずがない。
一度死んでいるからといって、死という恐怖に耐えられるわけではない。
否、 “死の恐怖を知っているからこそ”、その恐怖は更に増大する。
「では、ハル様。シンリ様を連れて逃げてください」
馬を操りながらそう言ったジャンヌ。
しかし、背後の気配は消えない。
「ハル様?いったいどうし…」
振り向いて、目を見開く。
そこにはさっきまで倒れていた心利の姿も、京という男も福沢様も居なかった。
居たのは、鉄でできた棒を握り締めるハル様だけ。
「どうして…ハルさっ」
「勝手に一人で戦うなんて決めるな!」
「え、あ、はい!」
その勢いに、つい返事をしてしまう。
「心利のことはヘタレと和服に頼んだ。俺はここでコイツを足止めする。
…一人で戦うのは、恐いだろ」
「っ…」
零れそうになった涙を押し込める。
一人じゃないことが、ここまで楽なんて思わなかった。
「いいか。俺達の役目はあくまで“時間稼ぎ”無理はするな」
「はい!」
腰の剣を引き抜き、構える。
もっと早くこの方達と出会えたなら。
そしたら――
手綱を引き締め、前を見据える。
右手に持った剣が、陽光を反射して輝く。
「ハッ!」という掛け声とともに、走り出す。
敵に向かっていくというのに、不思議と恐くはない。
ハル様。
無理はするなという約束、さっそく破ります。
心残りはありません。
だって、一度私は死んでいるんですから。
ただ、また会えたなら――
「もう一度、友達になってください…」
はい、久しぶりの更新です^^
思いっきり死亡フラグ立ってますが気にしないでください←
やっと“文字化け”という単語も出せて満足です。
いちおうこの章のタイトルだったりします。AA~文字化け編~と私は言ってたり…
ここまで読んでくださりありがとうございました!^▽^