陽と陰
「はぁ…」
心利はその場にへたりこんだ。
歩いても歩いても出口の見えないこの黒い空間。
どれだけ時間がたったのかも分からない。
体力も減り、足がガクガク震える。
バタ、とその場に倒れこみ、終わりの見えない天井を見上げる。
「…疲れたぁ」
溜息のように零れたその言葉は暗闇に静かに反響した。
「……ぇ?」
反響、した?
バッと慌てて起き上がり、目を凝らして地平線を見る。
すると、微かにぽうっと淡い光が見えた。
それが何なのかも考えず、その場を駆け出す。
兎に角、この暗闇から逃れられるなら何でもよかった。
「はぁ…はぁ…」
電柱の影に隠れながら、ハルはその場に座り込んだ。
いくら体力があるといっても、人一人抱えながら全力疾走し続けるのは、やはり無理があった。
流れ落ちる汗を手の甲で拭い、いまだ腕の中でぐったりとしている心利を見る。
その顔色はますます蒼白になり、体は冷たく硬直し、生きているのか死んでいるのか分からなかった。
目的の自分の家までは、走っても十分はかかる。
体力も限界に近く、ハルは初めて絶体絶命という状況に追い込まれていた。
しかし、敵が休ませてくれる時間なんて与えるはずもなく、騒々しい声がだんだんとこちらに近づいてくる。
再び立ち上がろうとしても足に力が入らず、バランスを崩して後ろに倒れる。
コンクリートの壁にもたれながら空を見上げ、はぁ…と一度溜息をつく。
もう、無理だな…そう小さく呟き、心利の体を路地裏に運び、その壁にもたれさせる。
その時、ふと視界に入った鉄パイプ。
見上げると、工事中の足場がビルに沿って組んである。
それを見ていると、何かが頭の隅をよぎった。
いや、しかし。と頭を振る。
これにはアイツがいる。
認めたくないが、瞬発力と反射神経に関してはあいつの方が上だ。
こんなことになるんだったら置いてくるんじゃなかったな、と髪をぐしゃぐしゃにしながら再び上を見上げる。
そんなことをしているうちにも、声は大きく、近くなる。
その声を聞きながらチッ…と舌打ちをし、鉄パイプを拾い上げる。
路地を出ていく間際、もう一度後ろを振り返る。
微動だにしない心利。
これも自業自得か、と自嘲気味に笑い、前を見据える。
一匹、黒い羽をはやし、先のとがった尻尾を持つ奴がこちらに気づいた。
ケタケタケタと笑いながら、口角を吊り上げて真っ紅な舌を突き出す。
ヒュッ、と短い音がして、そいつが目の前から消える。
ハルは慌てることもなく、右に鉄パイプを突き出す。
『プギャッ!』と小さく声が上がり、鉄パイプに顔面激突した奴が、ふらふらと顔を手で押さえながら後退する。
「バカが。この俺にめくらましが通用すると思うなよ」
キィィ!と声を上げながら旋回するそいつは、なおもこちらを睨み続けている。
しかし、
「ボスはどこだ」
ハルのこの一言に、ピタッと動きを止めた。
そして、まるで聞いてはいけないこと聞いたとでもいうように、体をガクガクと震わせながらキー!キー!と狂ったように喚きだした。
「おい、聞いて――」
時が、停まった。
微妙なところで続きます。
ていうか、この二人書いてるこっちが恥ずかしいです!
何こいつら。何なのこいつら。本当に中学生?って感じです。
そういえば、この小説を読んでいるリア友が、どれだけほうき頑丈なの。と言っていました。
まぁ、それは作者も思ったんですがね。
アルミ製の大鍋って軽いイメージあったんですよね。
とりあえず、ほうきに努力賞をあげたいと思います。