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アングリー

中学3年生、15歳の天音雫です。


何かと至らない点があると思いますが読んでいただけると嬉しいです。

ルーカスが怒りで我を失い生まれた一瞬の隙をレンは見逃さない。


無防備になったルーカスの背を鋭い獣爪に変貌したレンの手が届くーー直前、


「はぁ……本当にバカだよねぇ」


「ぐ……がはっ」


レンの脇腹に小型のナイフがつきささっていた。


レンはその痛みにアスファルトへと膝をつく。


零の目には、全てが、コマ送りになっているかのように写りこむ。


「兄さん、気をつけてよぉ?

この子ーっていうか僕のおもちゃは全員、見かけによらず、きょーぼーだからさぁ」


「何故マイクロチップを奪った?!

全く、失敗作ではなく完成品の一体を渡すから手を出すなとあれほど言っただろう?!」


「えー、こっわーい」


「お前っ……!」


2人の目には荒い呼吸を繰り返し、

脂汗を浮かべるレンの姿は目に入っていない。


ただひたすらに、子どものような口論を繰り広げる。


チップを亡くし、取り戻された感情の中、今まで感じたことのないものが沸き起こる。


怒り。そう、怒りだ。


零は今まで怒りというべきものを感じたことはなかった。


まだ感情があった頃でさえ、零は己が失敗作だという事実に罪悪感と自己嫌悪を覚えるだけで、喜怒哀楽などまともにあったものではなかった。


しかし、今の零の全身は怒りで満ちていた。


喜怒哀楽のうち、一番初めに零に宿ったのは“怒”

であるとは、皮肉なものだ。


零を、助けてくれた存在を。


失敗作ではないと否定してくれた存在を。


心優しい人を、傷つけた。


体内を駆け巡る怒りがそのまま、チップを失った零の原動力となる。


音もなくノアの背後へと素早く”瞬間移動“ーーーー


『この機能は役に立つだろう』


ふと、耳元で声が蘇る。


いつの日かの、記憶。


光のない瞳でそう伝えるルーカスが瞼の裏に蘇る。


ルーカスは、零に色々な機能をつけた。


任務を速やかに遂行するため、と言って。


でも、零は覚えている。


任務のほとんどが、人の命を奪い取るものであったことを。


ーーーー自分はもともと人を殺す為だけに作られたのだろうか。


零は思考を無理矢理振り払う。


戦場では一瞬の思考、一瞬の油断が命取りだと知っている。


自分の目的が何であるかなんて関係ない。


今自分が出来ることを、精一杯するだけだ。


耳元の声を無視し、軋む心の声を無視し、ノアを倒そうと、考えなしにその手を伸ばした刹那、


「チップを失った上理性まで失ったのか、この失敗作」


零の身体は宙に浮き、そのまま投げ飛ばされた。


衝撃で固いアスファルトに身を打ち付けながら転がり、静止している車にぶつかってようやく止まる。


「うっわー、あんな遠くまで吹っ飛んじゃったよぉ?兄さん、やりすぎじゃない?」


「そんなに力を入れたつもりはなかったんだが

……軽量化するとこういうデメリットもあるんだな」


「ひっどー、大切な子じゃないのぉ?」


「しょせん、あいつは失敗作だ」


口元に手を当て茶化すノアにルーカスは冷酷に言い放った。


レンも零も、断片的にその会話を耳で拾う。


そして分かる。


この2人は命を軽々しく足蹴にする奴らなのだと。


倫理から外れ、人の道から外れている。


ルーカスは零に、ノアはレンに歩み寄る。


それぞれの主従関係を正すために。


しかし、2人は忘れている。


“ただ眠らせただけ”が、1人、いることを。


なんの前触れもなしに、アスファルトに半径10メートルのクレーターが生まれる。


「は……?」


大地が大きく揺れ、ルーカスもノアも思わず抉れた地面に膝をつく。


驚愕に、目を見開く兄弟は自分達の危機を悟った。


ノアが引きつった笑みを浮かべて宙を仰ぐ。


宙には目を覚ましたリアムが浮いている。


黒い翼を小刻みに動かし手のひらをこちらに向けている。その口が開かれる。


「レンと零に何をした」


「ーーーーー」


「ニナと、ルイとメイは何処だ」


「お、落ち着いーー」


「答えろ」


ドガァンッ!!


目もくらむような閃光がリアムの手から放たれ、ノアに衝突、ノアは近くのビルまで飛ばされ無様に転がる。


残された兄、ルーカスは瞠目した。


「お前、もしかして」


リアムは冷徹な表情でルーカスを見下ろす。


「悪魔、か…?」


返答はない。


それが、答えだった。






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