失ったもの
14歳の中学生が書いています。
何かと至らない点があると思いますが読んでもらえると嬉しいです。
目が覚めると、そこは知らない、部屋のような、何もない場所だった。
すぐそばに、男が屈み込んでこちらを見ている。
ゆっくりと体を起こしていった。
ふと目をやると左手首には、包帯が丁寧に巻かれてあった。
「ん、目が冷めたんだねぇ。良かったぁ。」
男はにぱっと笑った。
そして、立ち上がる。
「君、立てるぅ?って、もう立ってるなぁ。ほんと、君すごいねぇ。」
ちょうど立ち上がった私に向かって男はいう。
「それじゃあ、ちょっとついてきてくれないかな?」
男はそう言い、部屋のドアへと向かう。
「…………ッ……」
私は思わず声を漏らした。
明らかに、おかしい。
あれだけ頭の中に反芻していた命令が何も思い出せない。
その命令を、私にくれた【その人】の顔も、名前も、何もかも。
思いだせなく、なっていた。
自動的に目的地に向かっていたはずの足が、目的地を忘れたように動かない。
ーー否、覚えていない。
思い出せない。
忘れているのだ。
男がドアに手をかけたまま、振り返る。
「どうしたのぉ?早く早くぅ〜」
その声に、わけもわからず怖気が走る。
思い出せない命令。
思い出せない【その人】の顔、名前、私が遂行しなければならない任務。
そのすべてが思い出せないのは、一体なぜだろう。
左の手首を見る。
男の顔を見る。
男は首を傾げた。
「どうしたのぉ?」
私はどうしたらいいのか分からなかった。
命令と任務を忘れた私はただの伽藍洞だ。
「こっちだよぉ?」
男がドアを開けた。
私は、今だにどうしたらいいのかわからないままに、男についていった。