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有効手段の喪失

中学3年生15歳の天音雫です。


何かと至らない点があると思いますが読んでいただけると嬉しいです。

訝しげな顔をするレンとニナに零は自嘲の笑みを浮かべた。



記憶が蘇る。思い出す。



大事な、あの人のこと。



それなのに、強制的な力が働かず、意思が自由なのは、



「私に埋め込まれたマイクロチップが、誰かに取られてしまったみたいです」



人間のような話し方、人間のような体の動かし方、人間のような感情の感じ方、人間のような五感。



これらが今、自分の中にあるということは、



「失敗を有効に使う為の手段が私から奪われてしまっています。私は、今、失敗の状態でここにいる」



生まれてすぐの、あの時のような状態で。



感情を持つ、失敗作として。



「多分、すぐに気づいてくれます。」



あの人は、いつも異常やエラーに気づくのが早いから。



私が今こうして自由の身になり全ての記憶を失っていることにもすぐに気づいてくれるはずだ。



そして、再びマイクロチップを挿入し、失敗作の零の生きる意味を作ってくれるはずだ。



零はそう信じている。



「でも、助けてくれてありがとうございます。

あの場所にいたら、マイクロチップを再び入れる前に体が使い物にならなくなりそうでしたので」



「何だよ、それ……」



レンが顔を歪める。



「マイクロチップって……

お前はそれを埋め込まれて思い通りにさせられてたってことか?」



「違いますよ!

失敗作の私に、失敗作でも出来ることをーー」



「そんなの倫理に外れてるじゃない!

あんたにマイクロチップを埋めたやつ、ノアと同じくらい悪趣味ね」



矢継ぎ早に浴びせられる批判の声に狼狽する。



「ち、違うんです!あの人は私を救ってくれて、!

い、今も私のこと探してるはずなんです!」



「今も、か。

これまたノアと同じくらい執念深そうな奴っぽいな」



腕組みをするレンにニナも溜息をついた。



「ちょっと、こんなこと聞いたら零をあの場所から助けるだけじゃ全然足りないってことが判明しちゃったじゃない」



「そう、だな。

でも、こうしてノアから逃げる事で零を支配しようとしてた人からも逃げれてるんじゃないか?」



「確かにそうね。


このまま逃げて逃げて逃げ続けて、安全な所を見つけましょう。


そしてそこに警備員50人くらい配置させて家を立てて暮らせば全員安全かもしれないわね」



「ノアなら50人全員ぶっ飛ばしそうだけどな」



「100人のほうが良いかしら?」



軽口を叩きあうニナとレンの様子を見て零は不思議な気分になった。



あの人は、いつも電話越しに、誰かに、怒っていたから。



懐かしい感覚が全身を巡っている。



良くないこととは分かっている。



マイクロチップの喪失によって感情が蘇ったのだ。



声に、態度に、行動に、感情が滲み、無機質さが消える。



「ていうか、零、あんた、会った時から少し変わったわよね?

何か人間らしくなったっていうか……」



「確かに。俺、初めて会った時はロボットそっくりでびっくりしたなー」



過去の記憶を懐かしそうに思い出す二人に零は何も言えなくなった。



ノアに脅されてたからかー、あいつ趣味悪いもんな、と笑いかけるレンに零は思った。



失いたくない。この感情を。



自分を助けてくれて自分に笑顔で接してくれるこの人達を。例え、それがいけないことだと分かっていても。



感情を取り戻した零は、悟った。



感情は理性でどうにかできるものではないのだと。



ここには、零がマイクロチップに埋蔵された命令に従うこと以外で零を必要としてくれている人がいた。



その事実に零の胸は暖かくなった。



こんな感覚は、生まれて初めてだった。



「零、今少し笑った……か?」



「良かったわ。さっきから目が虚ろで1ミリも動かないから心配したじゃない。

でも、良かった。

きっとマイクロチップっていうのがないほうが良いのよ。」



「マイクロチップがないおかげ、なのか?

それなら零にマイクロチップをまた埋めようとする奴らは俺らがぶっ飛ばさないとな!」



殺意を漲らせるレンにニナは苦笑した。



「はいはい、ぶっ飛ばせるようにしっかり休んで今のうちに体力つけなさいよ」



「ニナは俺の母さんかよ」



あんなに無茶したんだから当たり前でしょ、と呆れるニナに、だって、と食い下がるレン。



そこには穏やかな日常が広がっていた。



しかし、その穏やかさは逃走中の彼らには長く続かなかった。



パァンッ!!



突如として遠くから鳴り響いた一発の銃声にレンも、ニナも、零も、肩を震わせる。



そして、



ビーー ビーー ビーー ビーー



警告音が鳴り出す。人々の悲鳴が聞こえる。、



「っ、何だ?!」



「……街の中心部の方からかしら」



指差すニナにレンは顔を青ざめさせた。



「おいおい、そっちって、まさかとは思うけど……」



零の脳裏に笑いながら食料調達に出かけていった銀髪の少年の顔がよぎる。



「「リアム!!!!」」



レンとニナの叫び声が狭い路地裏に響き渡った。











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