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与えられた使命

14歳の中学生が書いています。

何かと至らない点があると思いますが、読んでもらえると嬉しいです。

トン、トン、トン、トン、という一定のリズムが私の耳に聞こえる。


私が履いている靴が、アスファルトの上を歩くたびに響かせる音だ。


脳の中では、命令の言葉が何度も反数されている。体は、勝手に動いていく。


どこに行くのかは、わからないままに。


空の青さが、目に染みる。


初めてあの部屋から外に出た。


部屋の外には、まず迷路のように建物の内部が広がっていたが、私はその内部を全く知らずにいたにもかかわらず、迷うことなく、難なく外へと出た。


それもこれも、【その人】のおかげだ。


今こうして自分の体があるのも、空の青さを感じられるのも、街の騒がしさを聞き取ることができるのも。


足の動きを止めずに、改めて、周りを見渡す。


高層ビルや大型ショッピングモールが立ち並び、たくさんの広告がディスプレイに映し出されている建物と建物の隙間を埋めるようにして人が溢れかえっている。


横断歩道は、まさに歩行者天国。


一人一人の会話を聞こうとすれば、耳が壊れそうになるくらい大量の話声に邪魔されまともに聞き取れない。……こんな経験は、初めてだった。


あの部屋の中は、いつも小さな機械の作動音と、これまた小さなコンピュータの音が響くだけだっだった。


だから、誰かが何かを話していてそれが聞こえないなんてことはありえなかった。


しかしここは、自分が声を出しても、周りの声に掻き消され、何も聞こえない。


もしここに、誰か他の人がいて、私に話しかけたとしても、私は聞き取ることができないだろう。


のんびりと都市の様子を観察している間にも、この足は自動的に進んでいく。


景色はだんだんと移り変わり周りが薄暗くなっていき、人の数が少なくなる。


足は小道に入っていく。


怪しげな裏路地に辿り着き、足が止まる。


ここが目的地、だからではない。


後ろから、不測の声がかかったからだ。


命令が、自動的に動いていた足が、一旦中断される。


男は気にした様子もなく続ける。


声が、いう。


「ねぇねぇ〜君ぃ、今ひとりぃ?」


独特な話し方に、私は思わず後ろを振り返った。


ーー男が、一人、後ろに立っていた。


金髪を後ろで軽く結び、ゆったりとした立ち方をしている。


茶色の瞳が私を見つめる。


「…………………………」 


私は、何も言わなかった。


その質問に答えるように命令されていないからだ。


男は気にした様子もなく続ける。


「こんな裏路地に女の子が一人でいたら危ないよぉ?」



私はくるりと前に顔を戻した。



そして再び、足が自動的に動くのを見つめたその瞬間だった。



左手首に、違和感を持った。



ゆっくりと目を向ける。



…………左手首を、小型のナイフが、貫通している。



血が、ポタポタと滴り落ちている。



頭の中で警鐘がなったその時にはもう遅かった。



体に衝撃が走り、視界が暗転する。


自動的に動いていた足が動かなくなり、初めてのことに私は戸惑いと恐怖を感じた。



体から一切の力が抜ける。



耳さえも聞こえなくなり私は意識を失った。

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