燃えた鳥籠と逃亡者
中学3年生、15歳、天音雫です。
何かと至らない点があると思いますが読んでいただけると嬉しいです。
「……ゴホッ」
薄暗い部屋の中でかすかに咳き込む。
鳥籠の外、牢獄のような作りのこの部屋に、たった一つある扉の隙間から、黒煙が僅かに入り込み部屋の中を充満しようとしていた。
何故、黒煙が、この部屋に。
一体、何が。
一瞬思考し、しかしそれはすぐにどうでも良くなる。
そう、どうでもいいのだ。
命令も、意志も、意思も、記憶も、全てを失った自分にとって何か気にすることなど、気にする人など、ーーーー。
ガンッ!!ガンッ!!ガンッ!!ーーーーバキッ!
突如、牢獄の外から凄まじい音が響く。
部屋のドアが勢いよく破壊され、凄まじい熱気と黒煙が一気に零へと押し寄せる。
「ーーッ、零ッ!!」
そこにはいまだ片足を蹴り出した形のままの姿勢で叫ぶレンの姿があった。
「ーー零!!」
呼ばれる。ノアがつけた“名前”を。
外から部屋の中へと、どんどん黒煙が入ってくる。
炎の熱気が鳥籠の中にいる自分にまで届く。
レンが咳き込み服の袖を口に当てた。
「クソっ!零ッ!!今その檻壊してやるからな!」
レンが鳥籠のそばに駆け寄る。
そして鳥籠へと手を伸ばしーー、
その伸ばした手のひらが獣のそれに変わった。
鋭い獣爪と黒い毛に覆われた、人間とはかけ離れたレンの手が、難なく檻を破壊する。
鳥籠の、扉が開く。
「零ッ!!ここから逃げるぞ!」
逃げる。ここから。零にはその意味がわからない。
「零ッ!頼む!俺に、ついて、こいっ!」
息を耐えさせ咳き込みながら我武者羅に叫ぶレンの声が響く。
「ここからっ!逃げるんだっ!逃げないとーー」
とそのとき、レンの言葉を遮るようにして凄まじいサイレンが鳴り響く。
そのサイレンのなかに無機質なアナウンスが交じる。
『緊急事態発生。緊急事態発生。
一つの鳥籠の中で火災発生。火災発生。」
流れるアナウンスをレンが顔を青ざめさせて棒立ちになって聞いている。
『至急、消火せよ。消火せよ。
そして、』
アナウンスの声色が僅かに変わる。
『直ちに、“逃げた鳥”5匹を捕えなさい。』
レンが絶叫する。
「零ッ!来いッッ!!」
意味はわからない。
それでも、「来い」と、そう言われたから。
そちらに行かなくては。
今までも恐らく、そうしてきた、から。
零が一歩踏み出した途端レンが零の手を掴んだ。
ーーいつの間にか人間の手に戻っている、その手から震えが伝わった。
「走るぞっ!」
零は無言でコクリと頷いた。




