異国の地へ
真っ暗な闇の中にひとり、体は凍え息ができなくとにかく苦しい。
俺はこのまま死んでしまうのだろうか。
『 何時でも諦めてはならぬ! 』
『 父上ーーッ! 』
『 生きるのだ!…そして、我が地に… 』
生きる。
父上と交わした最後の言葉だ。
父上との約束を胸に、気力だけで嵐に立ち向かおうとしていた。
しかし
容赦なく叩きつける風と水、その轟音の中で、とうとう意識を失くしてしまったらしい。
夢なのか、現実なのか、しばらくの間、魂だけが闇の中でさまよい続けていた。
『 剣人ッ!こっちこっち!あははは… 』
幼き日々、姉者たちと鬼遊びをしていた頃の幻が目の前に現れた。
『 エイッ!…ヤアッ!… 』
『 脇が甘い!もっと締めて早く振り下ろせ! 』
それから7つになった時の、父上と修業をしていた時のこと
『 剣人?…』
そして、一筋の光の先から聞こえてきた母上の声に、ハッと、瞳が開かされた。
母上…
ここは?
蝋の灯火がぽつんと光る薄明かりの部屋の中、藁の寝床の上で、俺は見たことのない着物を着せられ寝ていた。
「|アヴィヴオファヴォへベェイェ《気がついたようだな》?」
誰だ!?
長く白い髭をはやしたお爺さんが、微笑みながら俺の方を見ている。