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マウンテンモンキーvs絶壁令嬢

「お褒めいただき光栄ですの」


 ボロボロのドレスの女性は俺のほうを見てそう返すと、


「自己紹介がまだでしたわね。私はマーキスハルト家長女……リリアンヌ・マーキスハルトでございますの。逃亡中の身ゆえ、このような格好で申し訳ございません」

「ひでぇ恰好だが、それ以上にひでぇもん見せてもらったんだ。今さら気にしねぇよ」

「で、ご用件はなんですの? 私を捕まえて憲兵に突き出そうという魂胆でしょうか?」

「いいや、違う。フェリカ、言ってやれ」

「え!? あ、はい! じゃなかったそうね……」


 呆然としていたフェリカは息を整えつつ、リリアンヌに向けて言う。


「リリアンヌ・マーキスハルト。あなたに世界を守って欲しい」

「……そうですか」


 最初は訝しむような目で見ていたリリアンヌだったが、フェリカの真剣な眼差しに気がついて、血のついた日傘の先端で岩を打ち鳴らし、


「承知いたしました。立ち話もなんです。屋敷で紅茶を嗜みつつ、お話いたしましょうか。ちょうど午後ですし」


 リリアンヌが案内したのは屋敷というより廃墟の山小屋であった。


「昔は冒険者ギルドとして使われていたようですが、数年前に廃棄されたようで……。設備はまだ生きているものもあったので、逃亡犯の私が再利用して差し上げているのですわ」


 玄関のドアを持ち上げて外すと、中へと入っていく。

 リリアンヌは受付カウンターに人数分の丸椅子を用意すると、自身は肘掛け付きの大きな椅子に深く座る。

 その横の丸テーブルの上にはティーポットとヒビの入ったティーカップ、湯気まで立っている……こんな場所でどうやって用意したんだよ。

 不思議に思いつつも俺は丸椅子に座ると両足をカウンターの上にのせて、彼女らの会話を眺めることにした。


「さぁ続けてくださいます?」

「ええ」


 フェリカはひと通り、俺にしたのと同じような説明をリリアンヌにした。


「なるほど。なにやら南が騒がしいと思えば、そんなことが王国で起きていたのですわね」

「あなたはマナレスでありながら、強靭な肉体と精神を有していると聞く」

「いかにも。ステータスオープン」



【名前】リリアンヌ・マーキスハルト

【職業】テロリスト / 貴族令嬢

【HP】120 / 120

【MP】0 / 0

【筋力】6

【技量】55

【知力】61

【敏捷】23

【魔力】6

【耐久】7

【幸運】1

【称号】悪役令嬢

【装備】ボロボロのドレス / 日傘

・スキル

《マナレス》

 MPの最大値が0で固定になる。成長による上昇もない。

《歌手 LV9》

 非常に高い歌唱力を持つ。プロとして舞台に上がれば間違いなく人気を博する。

《舞踏スキル LV8》

 古今東西のダンスを踊れる。踊り子の道を究めた証。

《詩歌作成 LV9》

 人の心を強く動かすエモーショナルな詩歌を作成できる。

《魔法知識 LV9》

 魔法に関する高度な知識を有する。専門分野によっては学院で教授を勤められる。

《カポエラ武術 LV11》

 免許皆伝。最強のその先への道を切り開いた。

《分析 LV10》《鑑定 LV10》《高速計算 LV11》《経理 LV8》《薬学知識 LV9》

《裁縫 LV9》《魔法生物学 LV8》《毒耐性 LV9》《麻痺耐性 LV7》《気絶耐性 LV10》

《礼儀作法 LV10》《魔法道具製作 LV7》《絶壁 LV10》《撃滅の邪眼 LV8》etc…



「いや、別にステータス見せてなんて言ってないのだけれども……」

「撃滅の邪眼ってなんだよ、聞いたこともねぇ」

「13歳の夏に参加した貴族エリート強化合宿で取得しましたわ」

「合宿で取得できんのか、邪眼……」


 フェリカから聞いてはいたが、リリアンヌって野郎は貴族のボンボンだったっけか……バカみたいに多いスキルも、恵まれた教育の一環で取得したものばかりなんだろうさ。

 上流階級にとっちゃ当たり前なんだろうが、ドブ水飲んで暮らしてた俺らからしてみれば嫌味にしか見えねぇ。


「まぁご覧の通り、私は強靭な精神と肉体を持った超エリートなのです。そんじょそこらの人間とは格が違う……。特にそこの……」


 リリアンヌは俺の両足を指さして、


「お行儀の悪いマウンテンモンキーとは」

「《人を怒らせる天才 LV10》っていうスキルも追加したほうがいいぜ、絶壁クソ女」

「育ちの悪さが滲み出ていますわよ、その言動」

「ンだとゴラァ!」

「なんですか、ゴラァ」


 俺とリリアンヌはほぼ同時に立ち上がった。

 そして俺は拳を、リリアンヌは蹴りを互いに打ち合う。


「ちょ、あなたたち! 喧嘩してどうすんのよ!」

「お前は!」「あなたは!」「「黙ってろ!」」


 互いに拳と蹴りの応酬が始まり、壁が、テーブルが、椅子が、床までもが破壊されていく。

 知ったこっちゃねぇが。


「お前の態度は鼻につくんだよ! いかにも金持ちって感じがして気に入らねぇ!」

「あなたこそ粗野な態度で私の前に立たないで貰えますか!」

「粗野で悪かったな! ボンボンのクソアマが!」

「金持ちで悪かったですわね! 山猿クソオトコが!」


 気づけば天井が抜けて、冷たい風が血だらけの床を撫でていた。


「……はぁッ……はぁッ……。華奢な見た目しやがって、どうしてこうしぶてぇんだよ」

「……がぁッ……ふぅッ……。力だけの山猿のくせに、なにゆえ立っていられるのでしょうか」

「なにしてんのよ、2人とも……ああ、もう。どうしてこんな奴らが適格者なのよ。初対面で殴り合いの喧嘩なんてバカじゃないの!」


 頭を抱えて蹲るフェリカだったが、ふと抜けた天井の向こうに浮かぶ暗雲を見て立ち上がって叫んだ。


「あれは……超幻獣! タイプ:ヒュドラよ!」


 暗雲が渦巻き始め、そこから九つの首を持った巨大な蛇の怪物が現れた。


「アキト! 敵が現れた! 今から領域魔法でマギアマシンを呼び出すから、乗り込んで戦うわよ!」

「おうよ! こんなところに現れるなんて。まるで俺たちが狙いみてぇだな! 上等だ、やってやるぜ!」


 俺とフェリカは廃墟の山小屋を飛び出して、マギアマシンが着陸できる場所まで向かおうとした。


「待ってくださいまし!」

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