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狂気! 血染めの悪役令嬢!

 フレイの体は超高速治癒が始まるまでの一瞬で全ての細胞を破壊されたことにより、消滅していった。

 膝をつくかたちで地面に降り立ったマギア・ウィザードは、城下町の瓦礫の山の上で静かに機能停止する。


「俺を屈させようなんざ、100年はえーんだよ」

『これが、マギア本来の力……。アキト、あなたが引き出したっていうの……がッはッ!』


 通信ホログラムに浮かぶフェリカの顔が蒼白になり、口から赤黒い血が吐き出された。


「おいおい、大丈夫かよ」

『平気よ。領域魔法で遮断しているとはいえ、マギア・エネルギーの余波で一時的に体がやられているだけだから……。医務室で回復魔法を受ければ、ある程度はマシになる』

「そうかい。で、これからどうするんだ?」


 俺は狭苦しいコックピットから出て、マギア・ウィザードの肩の上に飛び乗り周囲を見渡す。

 そこに広がるのは荒れ果てたクレイダニア王国の街並み。

 王城こそ無事ではあるものの、先ほどの戦闘で西側の都市機能は軒並み全滅だ。

 復興までに必要な時間と労力を考えると、俺でも頭が痛くなってくるレベルだぜ。


「2人目の適格者を探し出す。さすがにあなただけでこの先戦っていけるとは思っていないわ」


 フェリカも同じくコックピットから出て、俺の隣に座って言う。


「ンなこたねぇよ。俺だけで十分だ」

「……さて、どうかしらね。今回みたいにそう何度も上手くいくとは思えない。神人類とかいうワケの分からない存在を倒せたのも……」

「神人類ってなんだよ」

「さぁ。知っているのは超幻獣の情報だけ……」

「どうでもいいけどよ」


 俺は前々から思っていたことをフェリカに告げた。


「お前、さっきからドヤ顔で語ってるが、自分が真っ裸なのに気づいてるのか?」

「……ッ!?」


 気づいてなかったな、こいつ。

 急に恥ずかしくなったようで、顔を真っ赤にして乳房を両腕で隠した。


「み、見るなッ!」

「いい乳だったぜ。ごちそーさん」


 俺は顔真っ赤のフェリカから視線を外し、マギア・ウィザードの顔を見据える。

 その双眸から覗く鋭い眼光は、いったいなにを見ているんだ?

 心強さを感じる一方で、得体のしれない不気味さがそこにはあった。







     ◆

 《“悪役令嬢” 視点》

 クレイダニア王国に超幻獣が攻め込んでくる1週間ほど前の話。

 (わたくし)は人生最悪の1時間を経験していました。


「本当にすまない、リリアンヌ。婚約を破棄してほしい」


 控えめに言って、私はぶったまげました。

 いつものように王宮で高級椅子と高級テーブルに座り、高級紅茶片手に高級ケーキを食べつつ、高級庭師の手入れした素晴らしい庭園を望みながら、優雅な午後を過ごそうとしていた矢先の出来事。

 そう言ってきたのは有力貴族の娘である私と婚約関係にある、クレイダニア王国第一王子のエリオット・クレイダニア殿下だった。


「ちょっと。結婚式の前日に何を仰いますの……」

「君が悪いって話じゃないんだ。ただその――」


 真実の愛を見つけたんだ。

 エリオットは申し訳なさそうに、金粉を集めて突っ込んだような瞳を輝かせて語り始める。


「僕らは親の都合で婚約を決められた身の上だ。君も心の底では納得していなかったんじゃないか……?」


 違います。

 私は幼い頃から権力に憧れ、親の都合という名のサクセスチャンスに乗っかって今まで努力して来た身なのです。

 いずれは王妃となる身として、そりゃもう色々努力しましたの。

 歌にダンスに詩はもちろん、マナレスであるにも関わらず魔法に関することも一般教養として学びました。

 無論、淑女の嗜みであるとされるカポエラという武術もマスターしましたわ。


「お互い、愛し合った者同士で結婚するべきじゃないのか?」

「…………」


 絶句し、言葉が出ない。


「けっして君の艶やかな黒髪も、ちょっと灰色がかった麗しの肌も、ゴシックロリータ趣味の入ったドレスも嫌いじゃない。控え目な胸だって僕は良いと思う」

「…………」

「だけど、リリアンヌ。僕は真実の愛を注ぐ相手を見つけてしまった。彼女と結婚することにするよ。君も愛がなんたるかを考えたほうが――」

「……ハッ、愛? 笑わせますの」


 いけない、本性が出てしまいますの……いや、もういいです。

 自分に嘘をつくのはやめにしましょう。

 私の判断は早かった。


「あなたが相手に注ぎたいのは、その卑しい肛門から吐き出される子種ではなくて?」

「おい、それはなにがなんでも……」


 私は片手に持っていたティーカップをテーブルにぶつけて砕き、その破片を掴んでエリオットの口に突っ込んだ。


「口だ」

「ふがァッ!?」


 喉の奥から吐き出された血を浴びながら、私は立ち上がる。

 そして両手を地面について、カポエラ武術の要領で全身を使って右足をエリオットの股ぐらに打ち込んだ。


「股だ」

「うげぇッ!」


 情けない声を上げてよろめいたエリオットの鼻の穴に二本の指を突っ込んで、フックするように持ち上げて鼻をもぐ。


「鼻!」

「ゲハァッ!!!」


 血を流しながら地面に転がって狼狽えるエリオットを見下しながら、私は唾を吐きつけてこう言ってやりました。


「愛などという粘膜の創り上げる幻想惑わされ、私の野心を挫いた罰ですの」

「痛いッ……痛いッ……いだぃぃぃぃぃぃぃッ!」

「男なら少しはやり返してきなさい! この軟弱者! ほら私はノーガードですわよ!」

「憲兵! 憲兵ッ! テロリストだ! おッ、王宮にテロリストが侵入した!」


 情けないことに憲兵を呼びやがったエリオット。

 私は彼を見限り、残った高級ケーキを口に放り込んで駆け出した。

 元婚約者を容赦なくテロリスト呼ばわりしたコイツも、その一族が仕切る王国にも、もはや興味はありませんわ。

 こうなってしまえば、親のコネを使ったところで完全に揉み消すことは困難ですし。

 ならばやることはひとつ――。


「私は自由に生きますわ!」


 王宮の窓を突き破って、私は城下町へと飛び出していった。

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