第22話 王子と黒獅子?(前編)
第二十二話 王子と黒獅子?(前編)
ロギオンの統治が軌道に入った今。
しかしロギオン領は敵国と、国交のない国に囲まれ、領土の内側に別の国家があるというめんどくさい状況だった。
アーサー「4国と国境を隣接していて、さらに魔境(樹海)とも隣接しているこの状況は何とかならないかなあ?ダナンは人間不信で国交断絶しているとしても、せめてデニス領とは仮想敵国でない状態にしないと領内の兵力を内部防衛と国境に兵力を5分させるのは危険すぎるんだよ」
ソレイク「陛下に上奏して防衛兵力を常駐させたらどうですか?」
アーサー「それも一つの手だけど、ロギオンの徴兵数は減らせるけど、5万以上常駐させる必要があるから税収に対して軍費がかかりすぎる。だからといってデニス領にこちらから交渉したら弱みを見せるし……」
考えていると領兵からデニス侯爵領からの使いが来たと知らせが来たのであった。
アーサー「さすがに来たか……(こっちが国境を囲む形で領土を持っているんだし)」
デニス領からの使いを領主館に通したのであった。
するとがっちりとした黒い甲冑姿のいかにも武人という風貌の初老の男が入ってきた。
エルンスト「某はデニス侯爵のエルンスト申す若き領主殿。」と会釈する。
アーサー「ではあなたがローザリアの黒獅子? 申し遅れましたロギオン領主のアーサー=シュトラールです」
ソレイク「それで。エルンスト殿はどのようなご用件で」
エルンスト「そなたに帰順しようと思いロギオンに来た」
アーサー「ローザリアから独立したのになぜ帰順を?」と驚いた表情で返す。
エルンスト「先のヨシュア皇帝の時代は恐怖政治だった。侵略してきた国に降るのも、元の国に殉じるのも、為政者が変わっても民の暮らしが変わらぬのなら意味がないと思っておったのだが、貴殿は思いのほか善政をひいておられる。それに我が国土もシュトラール王国に囲まれていて、シュトラール王国の思惑一つで我が国の運命が変わるのなら、そなたに帰順したほうが良いと思ったからじゃ」
アーサー「それが国を包囲されていても帰順しなかった理由ですか?」
エルンスト「必要なら我が首を差し出してもよいのだぞ」
アーサー「わかったあなたを信用しましょう。エルンスト殿。 それで帰順するとなると当然シュトラール王国領になりますけど、どのような形での統治を望んでいるのですか?」
エルンスト「できればロギオン周辺の一地方として民が暮らせる形にしてほしい。 旗印が必要ならそなたに某の孫娘を嫁がせて継がせるとよいじゃろう」
」
アーサー「まだ私は13ですけど……。確かに第三王子なら側室を迎えてもおかしくない身分ですが……」
エルンスト「ルフィア殿も同い年と噂で聞いておるし、11の娘なら側室にしても問題ないじゃろう」
アーサー「わかりました。ただ私はまだ13で元服してもいないので、父アルスレッド王にこのことを上奏します。おそらくエルンスト殿の要望は通ると思います。それと、私の身内になるのであれば、エルンスト殿にも人手不足の領政を補佐はしてもらいますよ」
言ったアーサーの目を見てエルンストは
エルンスト「なに、お安い御用じゃ。かわいい孫娘を嫁がせるのならこの老骨をいくらでも鞭打つがいい」といって退出していったエルンストだった。
アーサー「エルンスト。傑物だったな」
ソレイク「王子。私は彼に憧れて騎士になりました」
アーサー「憧れてた頃ってだいぶ前なの?」
ソレイク「近衛騎士に抜擢される前のことですね。」
アーサー「それならお前もエルンストに遜色ない騎士といえると思う。 少なくても武人として本当の意味で認めているのは、今まであった中ではお前とエルンストくらいだよ。それにしても婚約者が増えたのは予想外だったけど……ルフィアにどう説明しようか」
ルフィア「私に何を説明するの? 婚約者が増えたとか言っていたけど?」振り向くと顔は笑っているけど目は笑っていないルフィアの姿があった。
冷や汗を流しながらアーサーはエルンストとの会談のことを打ち明けた。
ルフィア「まあ。仕方がないわね」とアーサーが置かれている情勢を理解しているルフィアは苦笑していた側室の存在を認めたのだった。




