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盗賊とのエンカウント





「ようこそ、ログの村へ」なんて通りすがりの冒険者に言おうとしてしまったミリアリアです。テンプレRPGって良いよね。


今日は食堂の給仕の仕事を手伝っていた。普段よりも冒険者の往来が多くなった為に食堂が盛況となり、人手が足りなくなった為に手伝いに駆り出されたのだ。

なんで、こんな急に冒険者の数が増えたんだか……



「聞いたかい、ミリアリアちゃん。冒険者が増えたのはお尋ね者の盗賊を追っての事らしいよ」

「え、盗賊?」



料理をテーブルに運んだら昼食を食べに来ていた大工のダンさんに話しかけられる。おいおい、平穏なこの村に珍しくトラブルっぽいな。



「なんでも、貴族の財宝ばかりを狙って貧しい民に分け与える……所謂、義賊って奴だな。派手にやり過ぎた盗賊は懸賞金が懸けられて最近、隣の村でその姿を見たって噂があったから近隣の村や町に冒険者達が捜索に出てるって訳だ。ほら、手配書」

「ふーん、義賊ね」



村人から人相書きの似顔絵には金髪に褐色肌で黒のロングコートを纏ったの青年が描かれていた。名前は『盗賊スチル』と書かれている。義賊って事は民衆受けはするんだろうけど狙われた貴族側はたまったもんじゃないだろうな。俺は手配書をダンさんに返すと仕事に戻った。



「あー……疲れた」

「今日は忙しかったみたいね。アルフも村に冒険者が増えて大変だって言ってたわよ」



食堂から家への帰り道でユイと会ったので雑談をしながら歩いていた。ユイが話したアルフとは村長の息子で次期村長になる奴だ。そして俺とユイの幼馴染である。小さな頃から三人で良く遊んだもんだ。



「ふーん、相変わらず相思相愛なこって」

「も、もう……からかわないでよ」



俺の発言に顔を赤くするユイ。そう、ユイとアルフは恋人関係なのだ。小さな頃からお互いを意識していたっぽいので前世の記憶が蘇った際に余計なお世話をしてみたら見事にカップル成立した。おめでとう、焚き付けた身としては上手くいってるのは喜ばしいのだが……いつもラブラブオーラを出されていると、ちょっと面倒に感じている。

ユイがアルフから話を聞いたってのもアルフがユイの宿屋に顔を出したからだろう。



「怖いね、盗賊だなんて」

「義賊って言ってたし、人には危害は加えないんじゃない?もしそうだったら手配書にもその事が書いてあっただろうし」



ユイが話題の盗賊の話をするが俺はあんまり怖いとは思ってなかった。義賊で貴族からしか盗みをしていないと手配書に書いてあったし、もしも人に危害を加えるなら、その手の噂がもっと広がってるだろうし。



「ミリィって、大人びてると言うか、達観としてるわよね。でも、確かにミリィの言う通りそんなに滅多に盗賊になんか会わないわよね」

「そーいう事。んじゃまた宿屋の手伝いに行くわ」



それはフラグだ、と思わず言おうと思ったが盗賊と遭遇なんて、あり得ないだろう。俺が主人公だったり、勇者だったりすれば話は別だろうが。モブにはモブなりの生き様があるってね。

俺はユイに手を振ってから別れて帰る事にした。人が行き交う村の中を歩き出す。



「盗賊か……ま、俺には関係ないか」



俺が主人公なら遭遇イベントを経過して討伐……ってながれなのだろうが、単なる村娘なんかじゃ関わる事もないだろう。そう思って独り言をポツリと溢してから家に帰ろうとした。その時だった。



「へぇ……俺が盗賊って気付くなんて何者だい、お嬢さん?」

「………え?」



俺とすれ違った男がポツリと俺に聞こえる程度の声で話しかけて来た。思わず振り返るとそこには何処かで見た事のある様な顔……あ、そうか人相書きの手配書の顔にそっくりなんだ。黒のロングコートは着ていないが金髪に褐色肌の青年。いやー偶然だなー。



「軽くとは言っても変装した俺を見つけるなんざ只者じゃ無いだろう?」



いえ、正真正銘の只の村娘です。そう言いたかったが目の前の盗賊から放たれる気配にそんな事を言う度胸は無かった。

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