悟りを開いた村娘
どうもログの村のアイドルのミリアリアです。
いや、誰がアイドルやねん。今の見た目は我ながら可愛いとは思うが見た目がモブ村人なので意味は無い。
今の俺の姿は黒髪の16歳程の少女だ。背が平均より僅かに下で……胸は控えめだった。
子供の頃から少々お転婆に過ごしていた俺は10歳の頃に前世の記憶を思い出した。それ故にその頃から一人称が『俺』になったが特にツッコミを食らう事も無かった。
そんな俺の毎日の仕事は村の食堂で給仕と調理補助である。給仕だからウェイトレス姿?メイド服?着てやるもんかよ。私服にエプロンで十分。
このログの村は街道に面した村で冒険者や商隊の通り道だったりするので人通りが多い。だから村には大きめの食堂があったり、宿屋もある。
俺は前世でのバイト知識が役立ち、食堂のウェイトレスや友人の宿屋の手伝いなどをしていた。その器用貧乏ぶりから村の雑用などを頼まれる事が多く気が付けば前世を思い出したばかりに悩んでいた冒険者になる夢やらチート無双等は考えなくなっていた。
しかし、落ち着いてくると考えさせられる。前世の俺の家族や友人は、どうしているのだろう。両親の顔、友人、思い出せることは断片的ではあるが忘れている部分も多い。もう前世の事を思ってもどうしようもないし、今の家族や暮らしに不満がある訳じゃない。しいて言うならネット社会の申し子で漫画やアニメが好きだった俺には刺激が足りないとは思うが、宿屋に寄付された本を読んで、その欲を満たしていた。いや、そのアニメとかゲームをしたい欲求には飢えてるけどね。
「ミリィ、何考えてるの?」
「んー、ちょっと考え事」
ボンヤリと宿屋のシーツを洗濯する仕事をしていたら後ろから声を掛けられる。振り返ると友達のユイが洗濯籠を持って来ていた。
ユイはログの村で一番仲の良い友人だ。幼い頃からの友達で所謂、幼馴染って奴だ。俺が男のままだったら幼馴染との恋愛ってのもあったのかなー、なんて思ってしまう。そんなIFを思いながら無駄な妄想だなっと考えるとスンっと頭が急速に冷えていく。
因みに俺が今、手伝っている宿屋はユイの両親が経営してる宿屋で俺はよく手伝いに来ていたりする。
「あ、またなんか悟った様な顔してる。ミリィって、たまにそんな顔するよね」
「うん、ちょっと考え事や悩みを自己完結で解決したからかな……」
ユイから指摘されて自分がそんな顔になっていたのだと自覚する。悟ったと言うか諦めだよなぁ……俺はもうこの世界で生きていくしかないのだ。
まあ、力も無いのに下手に冒険に出て危険な目に遭うよりも村で平和に過ごすのが一番だよネ。