第11話【できることできないこと】
「それじゃあ、なんでも複製できるってわけじゃないんですね」
クエスト報告が終わり、俺とメイアは宿の俺の部屋に集まって俺のスキル【コピペ】について説明をしていた。
何故俺の部屋なんかでやっているかというと、さすがの俺もこのスキルの詳細を誰かが聞いてるような場所で堂々と話すほど馬鹿ではないからだ。
「ああ。まだ俺も良く分かっていないところがあるが、少なくても生き物はできない。死骸は別だが。それと、これは多分だけど、誰かの持ち物はできないと思う。持っている物はもちろん、その人が触れていなくてもダメだ」
「と言いますと?」
「店に並べられている物を試しに複製してみようと思ったが無理だった。もちろん店主が触れてない物だ。だが、俺が買った後なら問題なく複製できた。つまり、誰かの所有物は無理なんじゃないかなってことだな」
「それでも十分凄いですね。金貨とかは無理なんですか?」
メイアは目を輝かせながら俺に聞いてきた。
まだ知り合って間もないが、どうやらメイアはお金が好きらしい。
まぁ、お金が好きだから悪いってわけじゃないが、なんとなく俺の中のイメージするエルフは質素堅実だったので、少し驚いている。
そんなメイアの前に金貨を一枚取り出し、俺は【コピペ】を使った。
右手に持っていた金貨と全く同じ形の金貨が左手に現れる。
それを見たメイアは体を少し浮かし喜ぶように叫んだ。
「凄い! これならもうお金の心配なんていりませんね!!」
「いや。ダメだよ。見て見なよ」
そう言いながら俺は両方の金貨をメイアに手渡す。
受けとったメイアはそれぞれを見つめ、何がダメなのか分からないと言った顔を俺に返してきた。
「なんでですか? どちらが本物か分からないくらい同じに見えますよ?」
「どちらも本物なんだ」
「じゃあ、問題ないじゃないですか」
「どっちも本物だからダメなんだよ。ここの刻印。そこまで一緒だろ?」
俺はメイアに近付き、持っている金貨に刻まれた通し番号を指さす。
当然どの金貨も異なる文字が刻まれているはずだが、メイアの持っている金貨はどちらも同じ文字が刻まれている。
「あ……本当ですね」
「別々に使えばすぐにはバレないだろうが、使えば使うほどバレる可能性が高くなる。贋金作りなんてこの国でどんな刑になるか知らないけど、どうせろくなことにならないだろ?」
「えーっと。確か、この国では、貨幣の偽造は理由を問わず斬首刑でしたね」
「ほらな。そんな危ないこと。頼まれてもやりたくないね」
メイアは心底残念そうな顔をしながら、俺に金貨を返す。
俺は間違いが起こらないよう、一枚をカットで消しておく。
「あれ? そういえば、持ち主がいると複製できないって話でしたが、私の魔法はできましたよね? あれはどうしてですか?」
「ああ、それはね。どうやら何かに向かって放つ魔法や武器なんかはできるみたいなんだ。きっと、相手に向かって投げ付けたりした時点で所有権を放棄しているってことになるんだろうね」
「うーん? よく分かりませんが、とにかくできることとできないこと。できるけどしちゃいけないことがあるってことは分かりました」
「ひとまずこれで俺の説明はおしまい。他にもいくつかスキルがあるけど、それはそのうち話すよ」
俺は一度背伸びして、大きく息を吐き出す。
なんだか肩の荷が少し取れ無ような気持ちになった。
「それじゃ、お腹も空いたし。ご飯を食べに行こうか」
「はい!」




