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オレだけマスクドリモート顔合わせ

今後は出来るだけこれくらいの文字数で投稿していこうかと思います。

 よし、今日は傭兵として雇われたチームとの最初の顔合わせだ、とはいえリモートだが。

 それにオレは仮面をつけている。前に姉が出雲大社でどういう意図か知らないけれどお土産で買って来た白狐面、無駄に高性能で内側に超薄型モニターが付いてるから視界に困ることもない、更に空気を通す素材で出来ている為息苦しさも感じない。


 どういう技術なのか調べてないからさっぱりだけど、まあ科学なんて発展目覚ましいものだしそんな事もあるんだろう、いちいち驚いていられない、気にしてたらハゲる。


 今はそんな事よりも周辺機器の確認だ。あと1分で予定の時間だから、そん時に通話アプリに既に打ち込んだ部屋番号の下の『入室』ボタンを押して入ればいい、そうれば問題なく始まるから。


 という訳でオレは確認作業に入ろう。座っているゲーミングチェアと机、部屋を見渡す。

 

 飲み物、ヨシ!窓、閉めてる!声、


「あー、あー↑あーあー↓。ぅぅぅぁぁぁあああ!!!」


 ヨシ!問題ない、今日も俺は可愛いショタボだ。さて、最後の確認。


「姉貴いいいい!!! 通話してるから部屋入って来ないでねーー!!!」


「大声出さなくても聞こえるわ! というかうるさいわよあんた!」


 姉フラ予防、ヨシ!それじゃあいよいよ顔合わせスタートだ。オレはマウスを操作して『入室』をクリックする。

 すぐに白いウィンドウが表示されて、『ホストの許可を待っています』という文言が現れる、ほらさっさとしろ、ホストがクライアントを待たせるな。……あれ?逆だっけ?まあいいや。


「お、来た来た。はーいどうも初めましてー……っと、半分知り合いっすね、初めましての方は初めましてー。傭兵を依頼された【リセ太】でーす。」


 リセ太というのはオレが良く使っている名前だ。趣味で作ったブログの公式プロフィールにもその名前を使ってる。

 語源は『reset』の英単語にerを付けてリセッター、でもそれだとなんかかっこつけてる感あって嫌だったから、語尾を少し変えてリセ太。何となく親近感が沸く感じがして、我ながら良いネーミングだと思う。


 オレがそう名乗りを上げると、画面の向こうから反応が返って来た。


『こんにちはリセ太さん、というかそんな声だったんですねー。』


『おうよろしく。お前のヘマ期待してるぜリセ太。』


「今回はお雇い頂きましてありがとうございます【イガイガマン】さん。あと【有毛 果敢】は黙っとけ誰がヘマするか、ってか有毛って名前のくせに禿げてんじゃねえかお前。」


『うるせえ! 自分でも分かってっけどお前に言われると癪に障るわ!』


『黙ってなさいハゲ。えっと、リセ太……くん、だよね?初めまして、【わん子】です。今日は雇われて下さるという事で。お噂はかねがね……。』


「こちらこそ初めまして。ちゃんと払うもの払われてればこちらとしては雑に扱ってくれてもかまいませんよー。」


 画面に映し出されたのは4人の顔だ、最初に話しかけてきた優男風の若い男が俺を雇った【イガイガマン】。名前の割にイガイガどころかさっぱりした奴だと思う。ただそれだけに語ることが少ない、対戦してる時も堅実で語ることが少ない戦法を良く取ってたと記憶している、だからこそ強いんだけど。いや本当にどこがイガイガだよ。


 んで次に声を上げて妙に馴れ馴れしくて鬱陶しい強面野郎が【有毛 果敢】。というかほんとに綺麗に頭頂部禿げてんなぁまだ若いだろうにかわいそ!他所は他所家は家、他人のハゲは人の物、それで傷つく人がいても盛大に笑ってやろう。僅かな希望にすがって一思いにスキンヘッドにも出来ない奴はそれがお似合いだ! ……我ながらひでえこと考えてんなと思った。


 まあいいや、そして最後に話しかけてきた初対面の優しそうな女性が【わん子】さん。名前だけでなく声まで可愛い人だ、アニメ声が半分混じっているような声で、ガチのアニメ声じゃないから耳が痛くなったりしない、むしろ耳に幸せを届けてくれるようなそんな声をしている。サラッとハゲを煽ってた所にオレの中のMが踊り狂ってる、オレはこういう声の人をお嫁さんにしたい。

 

 あぁちなみに誰も聞いてないと思うけどオレはSでもありMでもあるから。

 煽り煽られ世紀末に身を浸してたらどちらにも快感を覚えるようになる。さあみんなも真似をして人生豊かになろう!


 話を戻して最後にずっと黙り込んだままの黒い前髪で目が覆われてる根暗っぽい奴、こいつは……誰だ、あぁ画面下の名前見ればいいのか、えーっと……えぇ!?こいつが【らんらん】さん!?

 オレはその名前を見て驚愕する、だってこの人とはオレ戦ったことないけどチャットがめっちゃうるさい奴って有名だったんだもの。

 ランク上位の猛者たち曰く、暴言は言わないけどとにかく熱い。こいつと戦ってるとなんか汗かく。こいつのせいでPCがオーバーヒートした。等々。


 最後のPCを無茶させた愚か者はまだ良いとして、こんな評価を受ける人がこんな感じだとは誰も思わないだろう。


「はぇ~、らんらんさんこんな感じの人だったんだー。オレ意外。」


『ぁ、その……文字だとうまく、喋れるんですけど……あの自分、あ、上がり症でして、はい……。』


「あぁ、なるほど。了解しましたー。」


 よく居るタイプだろう。ネットでは大口叩いて周囲から良い意味でも悪い意味でも一目置かれるのに、現実ではただの口数少ない静かなやつだったパターン。

 まあ彼の場合は実力も伴ってるし、ただ熱いだけっていう大して実害もないタイプの人だから無罪放免だ。なんの罪を無にしてどこに放つことを免れるのか知らないけど。


『つーかリセ太、お前何歳だよ、成人してるように見えねえぞ?つーか声変わりもまだなんじゃねえの?』


「素性を聞くのはマナー違反でしょ、髪の毛と一緒にリテラシーも頭から抜け落ちた?」


『余計なお世話だ! んだテメェその声で煽られるとなんか無性に腹立つんだが!?』


 ふふん、オレの声は人を煽るのに向いている。いわゆるクソガキボイスというやつだ。

 まあオレは強いから物理的にも何かをわからせられたりはしないし、まずリモートという環境である以上手出しをする事も出来ない、安全圏から好き放題殴れる。


 それにこの声は煽る事以外にも活用法はある。


「ん゛ん゛。わん子お姉ちゃん、このハゲ怖いよぉ……。」


『あ゜っ。』


 少し喉の調子を整えて声を透き通らせればこの通り、みんなが求める理想の弟ショタボイスに早変わり。これで落ちない人は100人中1人くらいだ(当社比)。

 というかネットの世界の住民なんて9割ショタコンだろう(当社調べ)。

 それにオレの媚びテクに掛かればショタコンじゃなくても落ちる、いいや落とす。


 クソガキボイスと媚びショタボイス。この二つの声を使い分けてオレはこの乱世を制してやる、オレの戦いはここからだ!


『ふふ、ハゲ? あんまり人に暴言吐かないようにしなさいね?』


『わん子ォ! 簡単に堕ちてんじゃねえよおめぇ!』


「ハゲおじさん……声がおっきくてぼく泣いちゃいそう……。融通が利かない乱暴者の中年なの……?」


『まだ28じゃワレェ!』


 え、28なんだ。てっきり少なくとももう30の中盤には差し掛かってると思ってた。よしこれでまた煽るネタが増えたな。


 オレが仮面の下でニヤニヤしながらそんな事を考えていると、オレたちの言い争い……いや違うな、オレの煽りが中々終わらないことを見かねたイガイガマンさんが間に挟まるように話の続きを持ち出してきた。


『あー、そろそろ良いかなリセ太さん。まだ話したい事残ってるんだけど。』


「あ、お時間取らせてしまってすいません。ほら、ハゲも謝れ。」


『……俺のこの衝動は何処にぶつければいいんだ?』


 納得いかなそうな表情をしているハゲは無視するとして、オレはわん子さんと空気と化しているらんらんさん、イガイガマンさんに頭を下げて話の続きを促す。


 ちなみにこれ、透過型立方視点カメラだったかな、確かそんな感じの技術が使われていて目線とか顔が誰の方を向いているかとか全部向こうから丸わかり。まあオレの方からも丸わかりなんだけど……まあ、要するにすごい技術なのだ。


『じゃあ改めて。僕たちチーム【will wiru】は、ゲーム【Punk Berserk】、通称パンベルの大会に出場するにあたり、五人目のメンバーとしてリセ太を勧誘する。対価としては主に金銭と、大会の結果によって何かしらの追加報酬。

 

 受けてもらえるかな?』


 妙に格式張ったような言い方をするイガイガマンに対する答えはもう最初から決まっている。

 オレは仮面の下で口角が上がっているのを意識しながら元気よく、年相応の声色で勢いよく返答をした。


「契約成立!」

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