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スノウドーム

それから部屋のお風呂の使い方やら簡単な文化のことを美波から説明を受けた。

私にとっては美波を探して3日経っていたけど、こちらでは美波が来てから3ヶ月が経っていたという。

美波もそれなりにこの世界に慣れてきた頃なのかもしれない。


それにしてもさっきからずっと王子の話ばっか。

どんだけ好きなんだよ!

王子の朝ごはんはパン派だとか、犬か猫かと聞かれたら犬派だとか、最初絶対B型でしょって聞かれるけど実はA型だとか、牡蠣にあたってからちょっと苦手...とか本当にどうでもいいわ!!


けれどもそれを見ていて自分と重なる。

玲奈が美波を語るその姿とまるで同じなのだ。


美波の成長が嬉しい反面、心の大部分を占めていた妹というものが欠けていく様にも思えて少し苦しくなる。

まるでスノードームの様に、美波に会えた喜びがさっきまであんなにキラキラ輝いていたのに、どんどん足元に沈んでいく。

フルフルと首を振って意識を引き戻す。


いやいや、沈んでいる場合じゃない。

と気持ちを奮い立たせて笑顔を浮かべる。

今までもずっとそうしてきたのだ。

沈んでしまいそうな時こそ。


身支度が終わると私の部屋までエルク、レオンも含め衛兵さんとかお偉いさん達がお迎えに来る。

歩きながらみんなと談笑する美波の表情はコロコロ変わって本当に楽しそうだった。

こちらの世界の人に囲まれて美波は楽しそうに笑っている。

背後からじっと、それを眺めている。


なんだ、幸せそうじゃない。


みんなに囲まれて、見たことないくらい穏やかな表情で笑っている妹を見て思う。



もしかして。

美波のために私がしてきたこと、全部間違いだったのかな。

”美波のため”って囲って、本当は本人の幸せな選択を狭めていたんじゃないか。

あの子を守るための合気道も、幸せの芽を摘んでいたんじゃないだろうか。


どうしよう、私、何にもない。


必死に掴んできた妹の手が離れた時

掌の内に残るものが何もなくなって初めて気づく。

今の自分には何も残っていない。


何をしにここまで来てしまったんだろう。

知らぬ間に妹の幸せを壊してしまっていたのかもしれないと気づくと今ここに自分がいることさえ許せない。


足元に落ちたキラキラが泥みたいになって玲奈の足をすくう。

あぁ、これダメなやつだ。

涙が出そう。


美波の前で泣いたのは両親が亡くなった時だけ。

それ以降泣くことがあってもいいと美波の前で泣くのは自分に許していない。

踵を返して走り出す。


どこに向かうわけでもないがこの顔は見られたくない。

(私なんか、来なきゃ良かった。)

そう思って走り出すと一番後ろを歩いていたレオンが追いかけてくる。

「.....ッまたか!今度はどこへ行くつもりだ!?」

走って追いかけてくるレオンはめちゃめちゃ速くてすぐに腕を掴まれた。

掴んだ腕を翻して投げ飛ばそうとしたけど

一瞬固まって止まる。

「あっ、、、、ごめん、なさい、、、。」

堪えていた涙がこぼれ出すのと同時に力を込めた拳がはらりと解ける。


それを見たレオンが一瞬驚いた表情をして玲奈をすぐに胸に抱き寄せる。

「...大丈夫だ、誰も見てなどいない。」

玲奈は一瞬何が起きたかわからなかったが溢れ出して止まらない涙をどうすることもできずレオンの胸を借りた。

そう言いながらレオンは優しく背中をさすってくれる。

「私だけのセレナ、、この日をどれだけ待ったことか...本当に、私のことを覚えていないのか....?」

泣いている私を抱き寄せたままレオンが呟く。

顔を上げると泣きそうな顔をしたレオンが覗き込んでくる。

何を言っているかわからずキョトンとしている玲奈の顔を見てレオンは優しく微笑む。


「...レオンそろそろいいかな?王様が待ってるって。」

背後から現れたエリクがレオンの肩を掴んでいる。いつのまにかエリクも追いついていた。だがいつものお調子者の目が笑っていない。

美波や他のお偉いさん方や衛兵も追いついて謁見の間に進む。


美波には無事、泣いているところを見られなかったけど、レオンさんも何言ってるんだろう?

真面目そうに見えたけどあんなことする人には思えなかったから意外だった。それでもフォローには感謝している。あとでお礼言わないと。。


ため息が止まらない。

どんな気持ちで王様に会えばいいのかわからないまま歩みを進めている。

心の大黒柱が折れかけている玲奈は満身創痍のまま扉の前に立っていた。

楽しい展開にしたかったけど自分だったらこうなるな、、と何回も考え直しました、、。

アウェーとか無理、、、。

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