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王子様とネギ

こちらの世界には日本という国は無く、聞いたことのない国ばかりで文明も私たちがいた頃と比べたらまだまだ未熟。電車も走っていなければ電気もない。

そりゃコンセントも無いはずだ。

そんな世界にいきなり、どんなイタズラか知らないけど私たちは迷い込んだようだ。

(...そう言えば...紅茶飲んでた。)

そう思って美波に聞いてみると

顔から色みるみる無くなる。

「こないだおねぇちゃんが現れた時に抱きついて

カップが割れちゃったの、、、。」


現世界との架け橋と思い当たるきっかけは

美波のタックルによって見事に砕け散ったそうだ。


「今その道の職人さんに治してもらっているんだけど、、」涙目になる美波の頭を撫でる。


「いいの、いいの。私は美波が元気でいれば全然.....

で、結婚って?」


矢継ぎ早に質問するのも良くないとは思うが、美波の話にはオチが無いため、昔から大事なことははじめに言いなさいと言ってきている。


だからと言って結婚とは。


「好きな人が、出来たの?」

頭を撫でながら問うとそれまで泣きそうだった顔が朝露を浴びた花のようにキラキラ輝き始める。

玲奈はそれを見て少し安心する。


こちらの世界では昔から世界の危機を救う救世主的な扱いで大昔から語り継がれている伝説の女神とやらを信仰していて、いきなり現れた異国の乙女、つまり美波ははまさにそれで世界中が喜びに満ちそうだ。

ただの女子大生が一人イタズラに迷い込んだだけなんだけど。


それでも彼らに無い知識や文明をもたらすということは大きな益となり得るのだろう。


「...でも、それって大丈夫なの?美波、すごく大変なんじゃ無い?」

妹はそんなプレッシャーに耐えられるような性格じゃ無い。

「それが、、」

ちょうど美波がこちらの世界に来てからこの国の王子とやらは身体が弱く床に伏していて。

優しい美波は甲斐甲斐しく看病したらしい。


「私、おねぇちゃんに教えてもらった通りネギを首に巻いてあげたの。そしたら王子様みるみる元気になって...」


(えっ

王子の首にネギ巻いたの?えっ?)

一瞬背中に冷たい汗が流れる。


あと頭痛いって言ってたからこめかみに梅干しを貼ったり、蜂蜜大根のシロップ飲んでもらったり。


「全部効いたよ!」

嬉しそうにニコニコしてる美波を見てこちらも釣られてニッコリしてしまうが、王子様にそれやっちゃうあたり私の妹だ。それに女神とあっちゃ国も権威とかいろいろ、結婚させたいのもうなずける。

美波も王子のこと好きそうだけど、一回見てみないとね、、と考えながら目が笑えない。


「あと、虫刺されのところにバッテンってやるでしょ?あれもすごく効果があるから女神の十字架だって言ってみんな泣いてたよ?」


大変だ。ここの国の人は一国の主を救った女神にご心酔だ。


でも確かに違う世界から転移しちゃうくらいの何かが働いているなら治癒する力が強いとかあっても不思議じゃ無い。


「ちょっと美波、私にもバッテンして。」

美波を探し回った時に茂みや藪にも飛び込んだおかげでいくつか虫刺されもあった。


美波はガッテンのポーズを取りつつも爪で何箇所かバッテンを作る。

「えへへ。」

跡が残りやすいアラサーの虫刺されはみるみる色を無くして何事も無かった様に治る。


おおー!

てことはなにかしらの力が備わっちゃってるのね、、。


だとしたら本当にこの世界にとって美波は女神であって幸福の象徴だよな。

王子様も本当にネギが効いたかもしれないし、美波の底知れない力のせいかもだけど、命の恩人なんだろうな。


「...でも、そんな時におねぇちゃんが追加で出てきちゃいました!ってもうお邪魔でしかないよね?」

思考を巡らせ美波に問う。

(しかも連れ戻そうとしているとか知られたらこの世界を敵に回すことになるのでは?)



「それが、2人来ることが初めから決まってるみたいなの。」


...良かった、ちょっとホッとした。

たいていこういう時後出しの人は不利。

敵認定、悪役、闇落ち、ライバル、没落ルート。

見た目も中身も真逆な2人は対照的過ぎるから。


でもこちらで語り継がれている女神も

“朝日を連れてくる女神エオスと

夜の帳を下ろす女神セレーナ”

と、女神も対照的。


「あっ!わかった!私の担当たぶん夜だよね?」

手を上げて自分を指さす。

美波は小さく拍手しながら正解でーすなんてやっている。


「だからおねぇちゃんが来たことですごくみんな喜んでるの。何かできるのかもって期待されてるのかもしれないけど..」

確かに、この国にしたら昼夜女神コンプリート!ってとこだろう。

じゃあ、まずこの国の国王とか王子様にお話しして、って流れなのかな?

考えていたら

「あっそれで陛下にご挨拶しなきゃだから着替えなくちゃ!侍女さんが着替えさせてくれるから!」


なるほど。私の待っていたジージョさんどおりで来ないわけだ。この国の女性の正装は華美なくらいの装飾のドレスだ。

でも


「美波、私これで王様に謁見するわ。

異国から来た女性としてこの正装(パンツスーツ)で。」


肩にかかった髪の毛をバサッと手で払う。


その姿を見てさすが、おねぇちゃん!

と美波はいつもの様に笑う。


最近太陽が昇ると目覚めちゃうBBAです。

おはようございます。

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