捕獲
転がっていた3人も腰をさすりながら
次々と起き上がってこちらににじり寄る。
(あぁ、やっぱりジージョさんはいないのかな?
いたら大きく返事をしてくれそうな状況だ。)
と考えながらも視界の端で逃げ道を探っていた。
その時、背後から出てきた手に咄嗟に反応する。
また捻ってぶん回そうとしたところで逆の手を取られる。
(うわ!デカ!!気づかなかったし手を離してくれない、、)
その一瞬掴まれた手の甲に軽くキスをされた。
「ひぎゃっ!」
猫のように全身の毛が逆立つ。
男は他の衛兵と違った服装をしていたけど周りの衛兵の態度を見ると恐らく位も上の身分なのだろう。
長い金髪の髪は結ってあり、碧眼で映画や漫画で見るような美女みたいな中世的ともいえる美丈夫だった。
何を言ってるかもわからないが、すごく笑われている。
笑っちゃいけない時の笑いがこみ上げてしまうような感じで。
襲われる、ような感じではなさそうだ。
こんな時スカートでも履いてたら端の方つまんで軽く膝を曲げて、、、なんでするんだろうがバリバリのパンツスーツでどうしろというのだろう。
紳士をバタバタ投げていたのだ。マナーもへったくれもない。
ずっと掴まれてる手を振り払おうと力を込めるとそれよりも早く翡翠の瞳の美丈夫はひょいっと玲奈を持ち上げる。
身長の高い玲奈はお姫様抱っこなんてされたこともなく
いい歳してこんなの恥ずかしすぎる!子供じゃあるまいし!
という的外れな羞恥心に顔を真っ赤に染めていた。
見上げた美丈夫はひとつ咳払いをしてからゆっくり口を開いた
「エリク。...エリク、ヴィンセント。」
「エリク、さん?」
玲奈がそう答えると美丈夫はニッコリ笑った。
あまりのイケメン具合に新手の詐欺か?!なんて思った位にエスコートされ、どこかに連れて行かれるのだ。
「...ぅーん.......。」
さっきエリクさんと話してからじわじわと頭が痛い。
いつもの偏頭痛を疑うけど、どこか違う。
次第に目も開けられないような痛みに我慢できず呻き声が出る。
エリクがその様子に気づいたのか顔を覗き込んで何か言っている。
「....、、した?....むの、、、か?」
ん?さっきと発音の仕方が違う?
はっきりと言葉に輪郭を帯びる。
さっきより聞き取りやすい。イタリア語?いや違う。
「、、、大丈夫か?」
日本語???
タイムラグもなく言葉が理解できる。
「あー....たぶん、大丈夫、です。」
頷きながら答えるとそこにいた衛兵達のどよめいた言葉も聞き取れた。それと同時にさっきの頭痛も忘れるくらいにひいていた。
「美波と一緒だ!
やっぱり君は美波と同じ場所から来たんだな。
知らない場所で慣れないことも多い、疲れているだろう?」
そう言って抱っこ下ろさないよ、と言わんばかりに抱っこする手に力がこもる。
さっき男投げ飛ばしたの見てましたよね??疲れてませんよ?と思いつつ逃げられそうにない。
誰もが羨むその状況であっても
(このまままたお巡りさんとこ連れてかれたらどうしよう..)
なんて心配していた。