表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/51

ティーカップの向こう側

...で、名前は?

おじさんの警察官がぶっきらぼうに問いただす。

「……一ノ瀬 玲奈(いちのせ れいな)です。。」


少々口籠もりながら答える。

妹のこととなるといつもこの調子だ。

大人しく交番でお話し(取調べ)させてもらっている。

玲奈は様子を伺いながらこちらから質問する。

「...あのぅ、最近、この辺で失踪事件とか、誘拐とかって多いんでしょうか??」


警察のおじさんは目をぱちくりさせて驚いた様子だったがすぐに無愛想に答えた。

「あると言えば、あるし。無いとすれば無い、かな。

この街じゃ自ら存在を消そうとして隠れてる奴もいるしな。」


「どうせ夜遊びでもしてふらふらしてたんじゃないの?年頃の女の子が夜歩いてたんじゃ、ねぇ?」

なんてニヤリと口の端が上がったようにも見えた。

怒りに震える拳をギュッと制してギリギリ我慢できた。


玲奈は妹の美波と違って派手な顔をしていたし、身長も高く胸は目を引くほど大きく、ズボラな性格ゆえ天然ウェーブの髪も切らず長く伸びた前髪をかきあげるような、、魔女のような色気で胸焼けしそうな見た目だった。


田舎に居た時はセクハラまがいな言葉をよく投げられたし東京に出てきてからも夜の街のスカウトかすごかった。

本人は全く自覚していないが男とはそういうものだと思っていた。


しばらくしてから警察の取り調べは終わり解放された。

最後の方はほとんど話を聞いていなかったが呆けている姿も、様になっており随分反省しているように見えたようだった。


「...もう一度、行ってみるか..」

美波が目の前で消えた場所。

“純喫茶ルーブル”


そこで妹は消えた。


一緒にお茶をしながら他愛もなく喋っていた。

妹は紅茶を。

私はアイスコーヒーを。


ここの喫茶店の店主は見るからに老夫だけど背筋もピンとして立ち振る舞いにとても品があった。

店内には沢山の美術品が並べられルーブルに飾られている絵画を模写した物、剥製の置物や高そうな茶器までジャンル問わずひしめき合っていた。


妹が座った席に腰を下ろして店主に普段は飲まないが妹が飲んでいた紅茶を注文する。

そういえば私が座った席はソファーだったが妹の椅子は猫足に金の刺繍やどこかの紋章?のような模様も入っていてとても高そうだった。デザインは古いようでいるのにピカピカで新しくも見える。

どちらかというとどっかり座れるソファーのが好みだ。


そんな風に鑑みながら椅子の肘掛を触りながら待っていると

頼んでいた紅茶がきた。

こないだ妹が飲んでいたカップと同じものだった。

見上げると執事みたいな老夫と目が合いニコッと笑った目尻にしわが寄る。

軽く会釈しながら受け取るカップとソーサー。

繊細なお花と金の縁で彩られておりそれもよく見ると高そうだった。

カップを持ち上げたときにソーサーの部分にあったしるしを見て気づく。

あれ?なんか見たことあるような紋?椅子にもあったような、、

考えながら紅茶を口に含み、カップを置いたところで玲奈は口に含んだ紅茶を思い切り吹き出した。



誰もいなくなった店内にはどこか張り詰めたような静寂が訪れた。

「ようこそ、いらっしゃいませ、、」

店に入ったとき何も言葉を発しなかった執事風な老夫はぽそりと呟いた。



玲奈はカップとソーサーを持ったまま目を丸くして固まった。

目の前の景色が先ほどいた喫茶店ではないのだ。

瞬きをしても振り向いてもそこは純喫茶ルーブルではない何処かなのだ。

店主もいなければ窓の外も真っ暗で夜のようだし

仰ぎ見れば、そこにはシャンデリア??

目の前には、、

頭からびしょ濡れの.....貴公子??外国の人??

パニックで言葉も出ない。


開いたまま口が塞がらないとはこの事だ。

「おっ、、お、お、おねぇちゃーん!!!!」


どこからともなく懐かしい妹の声がする。

助走をつけて飛びかかってくる女の子は玲奈の首に抱きつくと椅子ごと倒れ込んでしまった。


「えっ!?美波?みなみ?ミナミ?!!!」

パニックで何度も確認する。

「そうだよ!おねぇちゃぁーん!」


それを聞いて安心して緊張の糸が切れたのかどんどん意識が遠のいていく。


「おねぇちゃん??!」

三日三晩探し回ったから睡眠も食事も二の次だった。


「やっと、、、見つけた、、、、」ガクッ


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ