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褒められバスター  作者: 平野文鳥
24/50

第24話 ブレスレット

「プレイズ。ファート。ガンテ。トールキン……。おまえたちは俺とステラの命の恩人だ。感謝している……」


 ベッドに横たわるガンテが礼を言うと、付き添っていたステラも小声で「ありがとう……」と言ってプレイズたちに頭を下げた。


「いやいや、俺たち三人は大したことはしてませんよ。みんなプレイズのおかげです。プレイズが俺たちをリードしてくれたからバリアントやゴーストを倒せたんです。こんなすごい仲間と知り合えて俺たち幸せです」


 ファートの称賛に、ガンテ、トールキンもうなずいた。プレイズはファートの一言が心に刺さった。


(すごい仲間――。すごいバスターじゃなくて、仲間……。そんな言い方で褒められたのは生まれて初めてだ。なんだろう? よくわからないけど、今までにない喜びがこみあげてくる……)


 ダムがプレイズに目をやった。


「プレイズ……」

「はい」

「ゴーストを倒したらしいが、いったいどういう技を使ったんだ」

「たぶん……言っても信じてもらえないと思いますが、ただ、このブレスレットをかまえて目をつぶり無心になっただけです」


 そう言ってプレイズは左手のブレスレットをダムに見せた。


「そうそう~。そうしたら、突然それがパーッと光って~、ゴーストが破裂したんだよね~」


 ガンテがまるで自分のことのように自慢げに胸を張った。


「信じられない……。そんなことがありえるのか」


 ステラがいつになく真剣な表情を見せた。


「信じられなくても事実よ、ダム。わたしもこの目ではっきりと見たわ。ブレスレットの光がゴーストを倒すところを」

「そ、そうか。いつも現実的なおまえがそこまで言うのなら、信じるしかなさそうだな」

「ところで、ダムさん。ちょっとお訊きしたいことがあります。ダムさんがゴーストに襲われた時の状況を、もし覚えてらっしゃたら教えてほしいのです。今後のゴースト退治の参考にしたいので」


 ダムはうなずいて目を閉じた。


「おまえが見張りに出たあと、外から人の声がしたので気になって出てみた」

「ん? それって、おいらたちのことかな〜?」


 ガンテがファートとトールキンの顔を見た。


「いや、違う。おまえたちの声じゃなかった。知らない誰かが集まって愚痴や悪口を言い合ってる感じだった。外に出ると目の前に赤く光る玉が浮いていた。すぐにゴーストだとわかり逃げようとしたが、その時、頭の中に先ほどの声の主たちが一気に侵入してくるような感じになった……。記憶はそこまでだ。後のことは全く覚えていない」


(やはり、同じか……)


 プレイズはルーウィン城の兵舎でゴーストに襲われた時の事を思い出した。あの時もダムが言ったように頭の中に誰かが侵入してくるような感じがした。しかし、幸いにもその時、なぜかソフィアのアドバイスの声が聞こえ、そのおかげで侵入を阻止できダムのような事にはならなかった。


(いったいあれは何だったんだろう……? いずれにしても、ただ一つだけ確信できるのは、あのゴーストと言われているやつは、いわゆる「幽霊」とか「お化け」という類ではないということだ。じゃあいったい何なんだ? そんなわけのわからないものがこの世界にいるんだろうか……)


「プレイズ」


 ファートの声で、考えにふけっていたプレイズは我に返った。


「なんですか?」

「ダムさんを一人にしてあげようぜ」


 ゴーストに体を乗っ取られて体力を消耗したのだろうか。ベッドのダムがいつのまにか寝入っていた。


 プレイズはファートたち三人と外へ出た。あたりはしらじらと夜が明け始め、東の空が群青色から紫色へのグラデーションを彩っていた。


「プレイズ。ちょっと気になる事があるんだ」

「気になること?」

「あのゴーストだけど、なんかガンテを嫌っていたような気がしたんだ」


 ガンテが「え〜?」と言って目を丸くした。


「嫌っていた? どういうことですか」

「うまく言えないけど、ガンテが泣くとあいつが必ず動きを止めて後ずさりしたんだ。道で出会った時もそうだったし、さっきもそうだった」

「そうだったの〜? おいら気がつかなかった〜」


 ガンテが泣いたら、逃げた――。

 プレイズは因果関係を推理しようとしたが、あまりにも情報が少なすぎて、そこまではいかなかった。


「他にゴーストについて気づいたことはありませんでしたか」


 ファートはガンテとトールキンを見た。二人とも首を横に振った。


「そうですか……」


 プレイズ腕を組み地面の一点をじっと見つめしばらく何かを考え続けた。そして意を決したような表情で口を開いた。


「ならば、もう一度ゴーストに会ってみましょう。もっと何かがわかるかも」


 プレイズのつぶやきにファートたち三人はギョッとしてお互いの顔を見合った。




 夜が開けてプレイズたちは居酒屋ローディーへ行き、店主にフェイムに連絡をとってくれるように頼んだ。フェイムは夕方になってやって来た。


「用って何? あたし忙しいから、つまんないようだったらすぐ帰るわよ」


 フェイムはカウンターに座っているプレイズたちの後ろで、腰に手を当てて面倒くさそうに言った。


「ゴースト退治の仕事を紹介してほしいんだ」

「は?」


 フェイムは目を丸くした。


「あなた本気で言ってるの? 冗談を言う為にあたしをわざわざ呼び出したのなら許さないわよ」

「昨夜、ダムの家に現れたゴーストを倒した。その前にもルーウィン城で倒した事がある。倒した方は知っているつもりだ」

「嘘でしょ……」

「プレイズは嘘なんかつかないよ〜」

「俺たちが証人です」

「うーうー!」


 ファートたちが胸を張り自信満々の表情でフェイムが本気である事を伝えた。フェイムはプレイズの隣に座っていたガンテを押しどけて席を奪い、プレイズの顔を覗き込んだ。


「やっぱり、あなただったんだ。ルーウィン城でゴーストを倒したバスターって」

「え、知ってたの?」

「まあね。そういう噂はすぐ耳に入る環境に住んでるから。で、どうやって倒したの? どのくらいの大きさまでなら倒せそう?」


 フェイムが興奮しながら矢継ぎ早に質問を浴びせた。


「これで倒したんだ」


 プレイズは左手首のブレスレットを指差した。


「えっ!? それで倒せたの! ど、どうやって?」


 フェイムは驚愕し、プレイズのブレスレットと自分のそれを見比べた。


「こうやって顔の前に構えて、目を閉じ、心を無心にすると、ブレスレットから光が出て、その光がゴーストを破裂させたんだ」


 そう言いながらプレイズは、その時の様子を体を使って説明した。フェイムはそれを聞きながら自分のブレスレットを見つめた。


(これは、ただのお守りじゃなかったんだ……。ゴーストを退治する道具って、やっぱり、これのことだったんだ……)


「あれ? そういえば、君も同じものを持ってるんだけど、もしかして使い方知らなかったの」


 プレイズの問いに、フェイムは眉根を寄せ不機嫌な表情をした。


「うるさいわね! ほっといてよ! そんなことより、ゴースト退治やりたいんでしょ!」


 フェイムの大声が店の中に響いた。その内容に客のバスターたちが驚き、カウンターのフェイムたちに向かって一斉に視線を向けた。


「それと、闘うのは僕だけじゃなく、この三人と共同でさせて欲しい」


 プレイズがファートたち三人を指差した。三人を見てフェイムが怪訝そうな表情になった。


「かまわないけど、大丈夫? 何があってもあたしを恨まないでよ」

「大丈夫だ」


 プレイズが三人に目くばせすると、三人は緊張した表情でうなずいた。


「わかったわ。じゃあ、早速、仕事の話をしましょう」


 そう言ってフェイムは腰に下げた革製のバッグからメモ帳を取り出した。

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