12話
12話でした。
至らぬ点が多々あるとは思いますが、少しでも楽しんでいただけていれば幸いです。
「おーい、楓なにやってんだ」
階段から例の餓鬼と俺様のデザートが駆け下りてくる。
くっそ、こんなところで邪魔が入ったか。俺様のデザートを早く食いてぇところだが、今はやるべきじゃねぇな。こんなところで人間に見られたら俺様の計画が台無しだ。
なに、もう三〇〇年も前から食えるときを待っていたんだ、それに比べれば数時間程度屁でもない。
「やぁ、君たち何しているんだい」
「俺たちは、まあ、いろいろと」
「誰ですか?」
「一〇九号室の人だよ」
「そうなんですか。でもなんでそんな人と楓さんが一緒にいるんでしょうか」
まだ、九尾じゃないから力が安定しないが、この程度なら。
「私はこの方に野暮用がありまして」
ふぅ、俺様に掛かればこの程度朝飯前だな。ただ、力の消費が激しすぎるな、こんなんじゃ一人操るのが限界か。まあ、人間を一人二人食えば九尾になれるから問題ないがな。
「楓顔色悪いけど大丈夫か」
「問題ありません」
猫又に話振ってんじゃねぇぞ、こいつを操るのがどれだけ大変か分かってんのか。
「二人はこれからどこに行くんですか」
デザートちゃん、君を食べるための特設ステージを作りにいくんだよ。俺様が招待した者だけを受け入れる特設ステージだ。たとえ神だって干渉できないそんなステージを作ってくるから待っていてくれよ。うひゃひゃ。
「本当にちょっとした野暮用さ。心配しなくともすぐに終わるから待っててよ」
何が終わるかは保障できないけどな。命かもしれないし、世界かもしれないし、神かもしれない。なんにせよ何かが終わる。
少なくとも、俺様の復讐は終わらせる。
「じゃあ、俺は先に帰ってるな」
「待ってください。おかしいですよ、楓さんは神社で待っててくれたんじゃないんですか?」
おいおい、そんな約束してたのかよ。面倒臭せぇな、余計な手間掛けさせるなよ。
「そんなこと言ってませんよ。聞き間違えじゃないですか」
「えっ、でも茜さんが……」
「あんな、悪党の言葉を信じているんですか。馬鹿ですね」
ひゃひゃひゃ、これで少し俺様のデザートの味も良くなるし、俺様もここから立ち去れるし、一石二鳥だな。
「で、でも」
「あなたもしつこいですね、そんなんだから成仏できないんですよ」
「おい、楓言い過ぎだろ」
ひゃひゃひゃ、最高だぜ。おっもしれぇ、何だよこいつらめちゃくちゃおもしれぇよ。
「なんです、あなたも悪党の仲間入りですか」
「おい、いい加減止めとけって」
「まあまあ、皆さん落ち着いて。人間がこっちに来ていますし一旦解散ということにしましょう」
全部俺様が仕掛けてんだけどな。誰の手の上で踊らされているのかも知らずによ、本当におもしれぇよ。こいつら俺様の鑑賞物にしてぇぐらいだ。
まあ、当然食い尽くすんだけどな。ひゃひゃひゃ。
「葵帰るぞ、こんなところで消されたんじゃ堪ったもんじゃねぇからな」
「でも、楓さんはどうするんですか」
「野暮用があるんだろ、じゃあ無理やり連れ帰ることもねぇよ」
「お二人ともさようなら」
次ぎ会うときは俺様の餌だな、光栄に思ってくれよ。
二人は俺様の挨拶に言葉を返すことなく立ち去っていった。
「さあ、俺様はあの人間でも食うかな」
こちらに近づいている二人の人間を俺様は暇つぶしがてらに食うことにする。
全力で駆け出し、まずは一人の首筋を食いちぎる。そこからは生暖かい鮮血が勢い良く噴出し、地面を赤く染める。もちろん俺様の体も。
「きゃぁぁぁぁ」
ここからが勝負だ。
ここで少しでも考える余裕を与えずに殺すのが肝。一瞬でも俺様のことを妖怪だ、なんて思われたら次の瞬間俺様は消えてしまうからな。
ただ、失敗などまずない。もう既に俺様の牙は人間の喉下に触れようとしているのだから。大きな恐怖だけを味あわせ、そして食い殺す。そうすると、あら不思議最上級の魂が完成する。大きな恐怖によって真っ黒に魂が染まった瞬間にもぎ取る。
「ああ、うんめぇ。最高だぁ」
その大麻的な中毒性に俺様は溺れている。
俺様が九尾になるために不可欠とはいえ、美味すぎる。最早九尾などどうでもよくなるほどに美味い。
「やべぇ、九本目生えちまった」
結構ギリギリまで溜めてデザート食って九尾になるつもりだったが、まあ仕方が無い。本当にデザートになるだけだ。
俺様はふと思う。
ここまで来るために積み上げてきた屍は一体どの程度のものだったのだろうか、と。
別に反省なんかしてぇねぇぞ。もちろん後悔もだ。ただ、俺様が最凶の妖怪として名を馳せるには十分な数人間を食ったのか気になっただけだ。
まあ、関係ねぇか。今から鞍馬天狗と、あわよくば酒呑童子も食ってやるんだからな。
今のこの世界でなら、
「俺様はそれで最強で最凶な妖怪になれる」




