第6回 タブーについて!
すべての女性の敵みたいな会社の先輩から、飲みに誘われた。
こういうとき、誘いに乗るかどうか、凄く迷う。
本当に居酒屋に行くかどうか、わからないからだ。
「失策った……っ!!」
大学生だよな!?
本当に大学生だけがいる飲み会なんだよな?
じゃあ、なんで露骨にお酒を飲まないかって話だ。
「もっちー、そんなこと気にしてたら楽しめないよー?」
殺すぞ手前ぇ。
「先輩。今日は、飲みだって言ったじゃないですか?」
「うんうん、そうだね。そこに知らない女の子が何人かいるだけじゃん?」
「ええ、はい。もうそれでいいですよ。」
安藤、、、覚えとけよ?
もう先輩なんてどうでもいい。
敬語もいらんだろ。
俺、29歳。安藤、確か36歳。
で、女の子は18歳くらいに見える。見えることにした。「大学生でーっす。」なんて、そうじゃないのが明白な自己紹介。
図られた、としか思えないぞ。
だいたい、こっち側のもう一人の男、あれ、誰だ? 俺は知らされてないし。
「先輩、捕まっても知りませんよ?」
「大丈夫だって、アッチは俺の連絡先なんて知らないし、LINEって、簡単に複アカ取れるの知ってる?」
クソやろう。
だけども。この女の敵は、それでも男の俺からすれば少しは役に立つところがある。話が上手くて、些細な情報に詳しい。
社内でも、ソフトなセクハラをしてるだけのような存在なのに、そこまで憎まれてないのは、ストライクゾーンが二十歳未満で、セクハラも冗談の域を出てないから、じゃないかと思う。
まあ、だからこそ、こういう場でのクソさ加減が目につくワケなんだけど。
「先輩、捕まってください。」
「あの子たちに、そんな度胸ないよ。……自分から、いけないコトしてた、なんて告白、できると思う?」
嘘だろ。
「だから10代って良いよね。」
マジか。
「中出ししてバイバイ。連絡がウザかったらLINEアカ消して永遠におさらば。会社に繋がるような物とか、全部持って無いから、カバンを漁られても、へーきへーき。」
*** ***
義理で一次会は出て、帰る。というかいつもレストランか居酒屋か先に連れてかれて、席が多いことで察するパターンだ。
「もっちー。」
「! あ、と。まのんちゃん?」
苗字も知らない女の子。
唯一、お酒を飲むかどうか迷って、他の子に訊いてノンアルコールカクテルにしてた子だ。
「え、まのんちゃんも帰り?」
「! ……ぷっ、フツー帰り? なんて聞く? おにーさんは自分が私の狙いだった、とか、思わないんだ。」
「……あれだけ気まずそうにして、ノリが悪かった俺に興味ある子なんていないでしょ?」
「確かにー。」
おおう、そこは否定してよ。クスクス笑って無いでさ。
「――で。なんで、まのんちゃんは帰ってきたの? 二次会だって安藤が全部出してくれるでしょ。」
「えー、だってあの人ヤりたいだけじゃん。」
一番の謎は、どういうルートで安藤が女の子と合コンをセッティングしてくるか、だなあ。
「あー、バレバレか。」
「? ううん。しーちゃんは気づいてたけど、はづきは普通に楽しんでたかな?」
はづきちゃんって、一番幼そうな子じゃないか。
「っていうか、次カラオケって、ヤリ目なの気づかない方が悪いし。」
「え。」
「だってそうでしょ? 自分の倍以上年上のオジサンが来る合コンに参加しといて、何もわかんないって顔してていいわけないでしょ?」
「そういうものか。」
「そうそう。しーちゃんはフツーにカラオケ行きたいだけだから、お酒飲まされなければフツーに帰ってくるでしょ。……でも、はづきは、どうかな。」
まのんちゃんは、何事も無いように淡々と切っていく。
話し振りからしーちゃんは友達で、はづきちゃんは友達の妹とか、そういうポジションの子みたいな感じがした。
「はづきからしたら、どっちもオジサンだし。オジサンだったら、見た目とか、ちょっとどうでも良いし。安藤がロリコンっぽいから、はづき、ヤられちゃうかもね。」
――そういう諦観は、オジサンに足を突っ込みはじめた俺の心臓にくるよ。
つまり、はづきちゃんは俺の10コ以上は下ってことで、そういう子が、自己管理が出来てないから、悪い大人に悪さをされても自業自得って、まのんちゃんは言ってる。
「おにーさんだって、助けないで帰ってきてるじゃん。」
その言葉が、胸に刺さる。
「二次会行って、はづきもしーちゃんもメロメロにしてさ。他の二人から守って大人しく帰したらよかったじゃん?」
――!!
大人しく。……多分、何事もなくっていう意味で使ってるんだと思う。
だけど、字面の通り、額面通りの意味で突き刺さる。
大人しく。大人らしく。
「だから、おにーさんも同罪。」
「……あ。」
「私も、同罪。結局帰ってきちゃったし。」
なんでこの子は、こんなことを言ってくるんだろう。
「ねえ、おにーさん。私たちだけで、二次会、する?」
!
いきなりで、変な息になった。
「正直さー、合コンに嫌々来てる感じのおにーさんみたいな人、初めて見たっていうか。気になったのは、事実なんだよね。……私も罪悪感っていうか、はづき見捨ててるトコあるじゃん?」
「……。」
「だから、おにーさんに抱かれたら、おあいこかなーなんて……ちょ、そこで黙んないでよー照れるじゃん!」
「まのんちゃん。」
「え、なに? 顔がマジなんだけど。」
ぎゅっと、抱きしめるくらいしか、わからなかった。
ここで言いくるめて帰して、それで俺だけ綺麗なままとか、ダサいなって思った。
まのんちゃんは、俺も一緒に罪悪感に塗れろって仄暗い自傷行為に誘っている。
ダセえ。
「まのんちゃん。」
「な、なに?」
「俺が、予定通り、まのんちゃんをお持ち帰りするだけだから。安藤にも帰るときそう嘲われたろ?」
「うん。」
「まのんちゃんも、オジサンたちに騙されちゃダメだぞ?」
「あはは、なにそれ。」
おいおい、顔が真っ赤だぞ、まのんちゃん。
「合コンなんかに来たから、まのんちゃんもオジサンに食べられちゃうんだ。」
「……ちがう。」
「ん?」
「おにーさん、優しそうだし。」
「こらこら、台本に無いセリフを喋るんじゃないよ。」
「あはは。」
あとから聞けば、前にお酒を飲まされて、いい気分でいつの間にか初めてを奪われてたことを、しーちゃんに知らされたくなかったら、合コンを開け的なコトを遠回しに言われてたらしい。
いや、マジで安藤クソだな。
ただ、一番びっくりしたのは、はづきちゃん、義務教育中かよっていうところだったけど。せめて義務教育は終わっててくれよ。
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さてさて、きのこさんから「タブーとは何なのか」と聞かれた朝倉です。
そして、「ちょっと、日和ってない?」と見透かされてしまった朝倉です。
確かにー☆ ちょっと視野が広すぎましたよね。
なので、きのこさんの質問には私の思うところをサクッと結論付けて、私も身を削っていきますか。
そもそもですね、タブーって感情論なんですよ。
平安時代。収入の安定しない男性は、30過ぎてから娶るわけです。驚くなかれ、その娘の歳は、だいたい14歳とか。
こーのロリコンどもめ!
なんて、言われないのは、それが常識だったからですね。特に有名なのが、センター試験(2010年)に出てきた「恋路ゆかしき大将」ですね。恋した姫宮は、なんと11歳です。
え、できるの?
何とは書きませんが!
ですから、おじさまと幼気な子の恋愛って、常識とかいう枷さえなければ、何の問題もないんですよ。ええ、それが恋愛なら。
なんて、こんなつまらない結論なんていらないじゃないですか。
感情論と、常識の話をするなら、12歳で元服(成人)していた時代の話をされても困るっていうか。
12歳で成人を今に例えるなら、20までは平安時代だって普通は成人するまで手を出していないっていうか、光源氏だって、処女は奪ってないっていうか。
とりあえず、安藤みたいな人は、おくたばり遊ばせっていうのが私の意見ですかね?
で、なんでそんなことを書いてるか、っていうと、本当に背徳的なことと、背徳感って別なんですよ。
スリルと恐怖の違いというか。
スリルって、ジェットコースターみたいな、安全なのがある程度は担保されてるものの話で、つまり、プレイなんですよね。
それに対して背徳的な行為って、つまり、片方は恐怖しかないんですよね。
お互いが、楽しめてるなら、それが非常識でも恋愛ですから、バレないようにしてくださいって感じです。
その関係を大切にしているなら、誰にも話さないでって感じです。その代わり、小説にでもして、冗談めかして教えてダーリン♡
さて、私の初めては、ですね。
5歳のときなんですよ。
その週に、ターミネーターだったか、スピーシーズだったか忘れましたけど、ちょっとエッチなシーンの混ざった映画が、ゴールデンタイムに流れるっていうことがあったんですよね。
で、その週の末くらいに、同い年の子にお遊戯の時間に誘われて、園庭のオモチャのお家(密室)でお互い全裸ですよ。
実際のところ、何をするかなんてあんまりわかってなかったので、プレイ内容は幼いものですが、私が他人と性体験があったのは、いつか、と聞かれたら、まあ、5歳かなと。
そんな経験があれば、当然、ませてくるのは当たり前で、小学生の頃は触り合うくらいの大して面白くもない経験しかないんですが、中学生の時は、茶道部でしたから、畳の部屋があったわけですよ。
畳の部屋があったわけですよ。
で、放課後すぐに部活をできるようにする関係で、当番でお昼に準備をするんですよね。
まあ、何かが起こらないわけもなく。
畳の部屋ですから。直に寝れるわけです。
窓とかカーテンも開けっぱなしでしたね。
茶道部で使ってた部屋が、普通の教室から遠かったっていうのもあるんでしょうね。上は音楽室で、下は技術室で、隣は美術室で、他は準備室とかで、先生もいなかったですし。
春も過ぎた中学2年のことでした。
私たちは、背徳感に酔いながら、体温を重ねて、お互いの匂いに包まれて、そして永遠みたいな気持ちでいたんです。
まあー幻想だったんですが。
で、こういうことをしていれば、高校だって、ごにょごにょ。大学だって、ごにょごにょ、ですよね。
背徳感、スリル。
あーーーーーーーー楽しかっっったあああ!!!!!!!!!
私って、たぶんついてるんですよ。だから、基本、楽しかったんですよ。はじめのときから。
なのでちょっと温室育ち的な、世界は愛で溢れてるんだ! みたいなことも考えたりします。
ぬるいっちゃ、ぬるいんですよね。
だからきのこさんに聞きたいのは「処女性って何?」ですね!
私は、どこでヴァージンじゃなくなったのか。5歳だと思ってますけど。相手も、5歳でヴァージンじゃなくなったって、思ってますけど。
以上、朝倉でした。