特別なことはいつ来るか分からない
ふとやってきた少女東阪チカ。俺、大京テツに「宇宙鉄道に招待」と言われた。
みんなは知らない特別な旅行の第一歩が始まる!
「ホントに列車が空を走っている!?」
紅葉が終わる季節。10年前に廃止された路線の線路跡から、首が痛くなるほどの高さの高架線が建設されていた。
もちろん突然出来た訳じゃないと思う。毎日お世話になっているSNSで話題になっているから来てみたらこの光景だ。
そして線路の先にには黒い蒸気機関車に茶色い客車が連結されている。
これはまるで、
「銀河鉄道みたいだ!」
やがて列車が見えなくなると横から声がした。
「あなたが、大京テツさんですね。」
首を真っ直ぐにして声の方向を見ると、同い年に見える女の子がいた。
「えっと...何故俺の名前を?」
「初めまして、東阪チカと申します。あなたを宇宙鉄道連盟A級乗客にご招待いたしまーす!」
「...はぁ?」
「まぁ立ち話もあれですから喫茶店にでも行きましょう。」
人生ホントによく分かんね。
線路跡から少し離れた喫茶店に俺と謎の少女チカが向かいあって座っている。傍から見てばカップルに見える。
「私の奢りですよ!なんでもいいですよ〜」
「突然だからそんな食べたいものないよ。店員さん、ブラックコーヒー1つ」
「私はオレンジジュースにデラックスパフェを下さい。」
交渉する時に何頼んでいるんだ?
「すみません。私甘党ですからついつい...気にしないで下さい。」
そういう問題じゃない。
「さて話に入りますか。」
「その前に宇宙鉄道連盟って何?」
「その名の通り、宇宙に行ける鉄道ですよ。」
「それは分かるよ。連盟ってどういう事?」
「空港はご存知ですよね?簡単に言うと空港と同じ仕組みです。宇宙鉄道と一言で言っても沢山の会社があります。そして地球で一つしかない駅に集まります。その駅の所有は鉄道会社ではありません。私も所属しています。宇宙鉄道連盟です。」
「ちなみにその駅はどこにあるの?」
「この街の地下です。」
こんな偶然ってあるの?
「それにあなたを招待という形ですが...鉄道好きのあなたにとって美味しい話だと思いますが…」
「せっかくですが、お断りします。あいにく旅行出来るほどのお金はないので。それにバカみたいに掛かるでしょ?」
「そうですね〜会社によって違いますが、往復で何百万円ぐらいですね。」
「そんなお金払えません。」
「安心してください。お金を払うのはC級とB級だけです。A級のあなたは1円も払う必要はありません。」
「そんな馬鹿な話があるか?」
「もちろんお金を払うことになったら詐欺で訴えても構いません。それに条件もありますが。」
「まぁそうだよな。その条件とは?」
「まずこの話を誰にもしない事です。SNSの投稿も厳禁です。」
「そんなこと言っても無駄じゃないか?もう広まっているよ。」
「存在が知られても問題ありません。ただ乗車方法は企業秘密ですから。これが破るとC級えの降格、または出禁になります。」
「あとは?」
「無料の期間は契約してからの20年の間、ただしガイドが必ずつくこと。それだけです。」
「え?1人じゃ旅出来ないの?」
「はい、必ず。あなたの場合、私がつくことになります。」
嘘でしょ…
「俺は今人間不信なんだ。学校も強制退学されられ、バイトもクビになったばっかりだ。」
「はい!よく承知しております!」
「なんだ知ってるのか...なんで知ってる?」
「それは厳選なる審査をする為には個人情報を調べなきゃいけないでしょ。」
当たり前でしょ感出しているチカにイラッときた。普通に法律違反だからな?
「もちろんばらまいたり、悪用したりはしません。」
「あっそう」
「ガイドですから道具扱いでも構いませんよ。」
なんか話が出来すぎているなぁ?
「どうしますか?同意して頂けるなら早速...」
「え〜、突然言われても困るよ。」
「生活費も援助しますよ。」
「是非お願いします!」
「では早速こちらのICカードを差し上げます。これで契約完了です。」
ということでなんか壮大な旅が出来そうです。ちなみにコーヒー代はチカが払ってくれました。
喫茶店から歩いて数分。
「ではテツさんの出入口はこちらになります。」
「どう見ても一軒家ですけど?」
「私の家でもありますよ。」
この女は平気で自分の家に男を招待するのか。
家に入ると目の前にエレベーターがあった。
「こちらのエレベーターで駅に行けます。玄関は常に開いていますので、自由に駅に行けます。」
そしてエレベーターで下に降りると、目の前には改札があった。
「この機械にさっきのICカードをタッチして入って下さい。」
「列車の切符はどこで買うの?」
「改札内の売り場です。売り場が改札外だと認めた乗客以外にも乗れる人が出てくるのでこういう仕組みになっています。」
「なるほどね。」
改札を抜けると地下の駅とは思えないほど天井がオシャレで、見たことある蒸気機関車から、外国に走ってそうな機関車まで停まっていた。
「おお!すげー!」
さっきの常温の水は、沸騰状態になっている。こんな興奮をしたのはいつぐらいだろう?
「テツさん。これで驚かれても困りますよ。ビックリする事はこれからです。」
これらに乗れるんだよな?これで宇宙に行けるんだよな?
「さて、最初は私が選んだ路線に乗って頂きます。今回乗るのは、銀河鉄道ムーンラインです!」