表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/7

序章

これは、とある歴史好きの男の物語。


2017年、崩れ去ったかに見えた業界の巨塔は再びその権威を取り戻し、


一方で、現代文明社会は向かうべき方向性を完全に見失った。




俺の名前は、時田旅人(ときた・たびと)


歴史好きで、現代の世を(うれ)いている、三流商社につとめるどこにでもいるサラリーマンだ。


2017年も終わりを迎えようとしていた頃だった。


今年の世相を表す漢字1文字は、『北』に決まったが、


「結局今年もパッとしないまま終わる年になりそうだな。

来年になったら、どんな年だったのかさえ振り返られずに忘れ去られていくんじゃないか。」


流行語大賞も、今年の漢字も、いまいちパッとしない、他に何が流行ったのかというのも思い浮かばない。


「さっさと終われ、こんな年、と言いたいところだが、最近は早く来年を迎えたところで、良い年になるという保証は無いと思えるようになってきた。

あけましておめでとう、何がおめでたいんだ、

強いて言えば、その年まで『生きられた』ということに『おめでとう』ということになる。

悲しいけど結局、これが今の時代の現実なんだよ。」


日本の歴史がいつかは終わる、もしかしたら俺らの生きているうちに、と思いながら生きてきたが、どうやらそれも無さそうだ。


良くもなく、悪くもなく、ただ時だけを過ごし、ただ歳だけとっていく。


もしかしたら、新元号や五輪の頃までは、同様の流れが続いていくだけなんじゃないかと。


そう思うと、なんだか退屈に思える。


俺にはタイムマシンに乗って歴史の旅をしたいという願望があった。


年が明けて、2018年。


平成30年を迎えた。あと1年と4ヶ月後には平成も終わり、次の元号を迎える。


正直な話、正月番組はつまらない番組ばかりだ。


そもそも俺は、現代社会には適応できないような人間だと、自分でも思っていた。


俺の心は、過去の時代を向いていた。


現代社会には俺のような人間の居場所は無い。


現代社会は、俺のような人間がいなくなっても、何事も無かったかのように続いていく。


いや、現代社会に必要とされていないどころか、むしろ邪魔な存在だと、周囲の目線を見て、感じていた。


そんな中、『歴史にタイムトラベルして、歴史を変える選択肢を選んでみませんか?』などというキャンペーンをやっていた。


「なーに、簡単なことです。

歴史上のある場面に出くわして、あなたにはいくつかの選択肢が示されます。」


一瞬、詐欺か何かかと思ったが、見たところ結構、行列ができている様子だ。


「おおっと!そこの青年!

君のような青年を待ちかねていたんですよ。」


いきなり俺に声をかけてきたその人物の名前は、『ヒストリーマン』という名前だった。


ヒストリーマン「あなたは今の自分の人生、そして今の時代に不満ですね。

でも大丈夫。私があなたを、ふさわしい時代へといざなってさしあげましょう。」


まだ半信半疑だったが、俺はその誘いに乗ることにした。


「このキャンペーンはね、実は『選択肢を選んで歴史改変ゲーム!』というタイトルのゲームなんですよ。」




『ヒストリーマン』


突然主人公の目の前に現れた謎の人物、その目的やいかに!?


『選択肢を選んで歴史改変ゲーム』


ヒストリーマンがキャンペーンを行っているゲームの名称らしい。




歴史改変とは、例えば、戦国時代とか、幕末とか、あるいは第二次世界大戦の勝敗とかを改変できるというもの。


ヒストリーマンはさっそく、改変のテーマを提示した。


「さあ、まずは入門編からいきましょう!」


その入門編というのは、


『もしも本能寺の変で、織田信長が本能寺で死なないで生き延びたら、あなたならどうする?』


『もしも関ヶ原の戦いで、石田三成率いる西軍が勝利していたら』


『もしも幕末の結果が、新政府軍ではなく旧幕府軍の勝利に終わって、

徳川慶喜が日本共和国の初代大統領になったら、あなたならどうする?』


『もしも第二次世界大戦で、日本軍が勝ち続けていたら』


『逆に、第二次世界大戦で、ポツダム宣言を受け入れずに本土決戦となり、日本人が一人残らず皆殺しにされていたとしたら、その後アメリカ人やソ連人が入植した日本の歴史はどうなった?』


なんだかかなり恐ろしい選択肢もあったが、これで『入門編』なのだという。


俺は迷うことなく、

『もしも本能寺の変で、織田信長が本能寺で死なないで生き延びたら、あなたならどうする?』

を選んだ。


ヒストリーマン「おおっ!?やはりその選択肢を選びましたか。

やや、あなたならその選択肢を選ぶと思いましたよ。

実はその選択肢は、この『入門編』の一番人気の選択肢なんですよ。

さあ、さっそくあなたを、本能寺の変の時代に、いざないましょう!」


そしてヒストリーマンは俺を奇妙な機械に乗せる。


「大丈夫ですよ、悪いようにはしないから…。」


そう言われてもにわかには信用できない。


が、ついに出発進行の時は来た。


キュイーン!


そして俺は光に包まれ、別の空間へと飛ばされた。


どうやらここが、タイムトラベルの時に通り抜ける『亜空間』というところらしい。




キュイーン!




そしてたどりついた先は、よりにもよって本能寺の変の真っ只中、織田信長がまさに明智光秀の軍勢に攻められているその瞬間だった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ