決戦は金曜日part2
そんなこんなで1週間の特訓を終えた僕らは、覇王高校から数駅離れたゲームカフェに来ている。
今日が決戦の日。偶然なことに今日もまた金曜日だ。
やはり、◯リカムの言うことは正しいらしい。
「おう、待たせたな」
声がした方へ振り向くと、化乃川の姿が見えた。
その隣にはこれまた忍者テイストの少年が。その表情は長すぎる前髪によって全くわからなくなっている。
ちなむと、長すぎる前髪は中二病患者だと相場が決まっている。
まさか、目にカラコンなんてつけてないよな?いきなり、赤い目をひけらかして、「◯◯が命じる、お前らは‥‥死ね」なんて言い出されたらどう対処していいかわからんぞ。
「勝負をお願いした分際で遅れてくるなんてどういう了見かしら?八つ裂きにしてあげるから覚悟しなさい!」
やつらは待ち合わせ時間には遅れていない。こっちが待ち合わせの20分前からスタンバってるだけだ。前、ルナちゃんと待ち合わせたときもそうだったけど、やたら時間に厳しいんだよなぁ。
もしかして遊ぶ予定とかあると楽しみすぎて、いてもたってもいられなくなるタイプなのかな?
「待ち合わせ時間に遅れたつもりはなかったんだが、気を悪くさせてしまったなら申し訳ない。早速だが中に入ろうか。すでに部屋は予約してある」
化乃川達に続いて店内に入店。店員の案内に従って部屋へと入室した。中はわりと広めになっている。4人でテレビゲームをするには充分すぎる広さだ。
「さて、ではもう一度ルールを確認しよう。今回は攻撃と守備を分担してのチーム戦。こちらが勝った場合この間のスパイの件は白紙、そちら側が勝った場合はなんでも言うことを1つ聞く。それでいいな?」
「それでいいわ。で、ごたくはいいからさっさと始めましょう?一流の剣士は口ではなく、その剣檄で会話するものよ。違う?」
ルナ様。剣は今回出てきません。
「そうだな。じゃ、早速始めよう」
化乃川がゲームを起動させた。
そして、チームセレクト画面に移る。
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
ルナ様と無言のアイコンタクトをとる。
ルナちゃんが選択したのはシーズン5位だったジーニアンツというチームだ。
このチームは投手陣が崩壊しているのが最大の欠点だが、その代わり圧倒的攻撃力を誇る。
スタメン9人のうち、7人がパワーB以上。ゆえにどこからでもホームランが狙える。そのかわり、ミート能力があまり高くないのだが、驚くべき事にルナちゃんは強振しか使わない。ゆえに、ミート能力の弱さは関係ないのだ。
デェフェンス面の弱さは僕のプレイヤースキルで補う。ピッチング、そして、鉄壁の守備でな。
対して、奴等が選んできたチームは‥‥
「はぁ!?ゴーグルス!?」
思わず、声を荒げてしまった。
どういう事だ?なめプか?
ゴーグルスとは、この年、両リーグ合わせて最弱のチーム。
まさかの勝率3割弱。もう一歩でシーズン100敗だったという悪い意味でファンの記憶に残るチームだ。
打てない、走れない、守れない。その3拍子を見事なほどに体現している。
「おい、おい、おい。僕たちをなめてんのか?そんなザコチームでも勝てるっていうのかよ?」
「ふん、浅いなっ‥‥!」
「はぁ?」
「強いチームを使えば勝てる。その考え自体が短絡的だと言ってんだ。だからこそ突けるスキだって山ほどあるだろ?長いシーズンの戦いならともかく、この場合はたった1試合だけ勝てりゃあいいんだ。それには、ゴーグルスが最適だと判断した。それだけの話だ」
こいつっ‥‥!次々とご託ばっか並べやがって。
こちとりゃ、熱プロを愛し、熱プロに愛された男だぞ?
いいさ、ぐぅの音もでないほどにギタギタにしてやる。
「アンタ、何熱くなってんのよ!相手がどこを使おうが、それより多く点をとればいいだけでしょ?違う?」
ル、ルナ様‥‥!
違いません、その通りでございます。
「じゃ、いっちょ始めるか」
各種設定が終わり、試合開始のボタンが押される。




