2℃目の訪問②
赤藤ご夫妻とのやり取りを終え、僕とルナちゃんは2階のルナちゃん部屋へと向かった。
ガチャ
「わん!わん!わん!」
元気一杯にジュニアが迎えてくれる。可愛いやつめ。
ルナちゃんは僕のことを今は亡き愛犬、オマリーに重ねているところがある。そう考えると、僕にとってジュニアはどういう存在なんだろう。
弟‥‥なのか?
でもJr.って一般的に親が子供につける場合が多いから、そう考えると僕はジュニアの父?いや、血の繋がりはないから義父ってところか?
とにかく、近しい存在であることに変わりはない。
ここは頭をわしゃわしゃと撫でてやろう。
わしゃわしゃわしゃ
「きゃんきゃんきゃん!!!わん!」
お、なんだかものすごく喜んでいるな。
よし、もっと可愛がってやろう。
頭を撫でつつ、ジュニアを仰向けにしお腹をわしゃわしゃにする。
「‥‥‥!!キャイーーーン!わん!わん!わん!わん!わーーーーん!!!」
おいおいおい、こんなに喜びすぎ‥‥いや、悦びすぎじゃないか!?
ジュニアを仰向けにしながら、首回りを‥‥
わしゃわしゃわしゃわしゃわしゃわしゃわしゃわしゃわしゃわしゃわしゃ!!!!!
「キャウーーーーーン‥‥‥‥ハッ、ハッ、ハッ‥‥」
あれ、なんか悦びすぎてピクピクし始めたぞ。なんだか目もとろんとしてる‥‥
よし、じゃあ次は‥‥
「コラーーーーーー!!!!!さっきからうちの犬に何やってんのよっ!!!やりすぎよっ!あきらかにこの子おかしくなってるじゃないのよ!!!」
僕のもとからジュニアが取り上げられる。
ごめんよ、ジュニア。ちょっとやりすぎたよ。
謝罪の念を込めた眼差しで、ルナちゃんに抱かれているジュニアを見つめると
「クゥーーーン‥‥」
ふるふると首を振るジュニア。
もしかして、気にするなって言ってるのか?
ジュニア‥‥お前ってやつは、お前ってやつはっ‥‥!
「アンタら、ほんと、なんなのよ?」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ジュニアとの戯れを終えたルナちゃんと僕は、本題である野球ゲームの練習をすることに。
先んじて説明書を読んでみたが、操作方法が「熱プロ」と全く変わらないことが判明した。
これなら、何の問題もない。
「じゃあ、ルナちゃん。とりあえずCPUと戦ってみようか。そうだなあ、まずは『ふつう』レベルに挑戦してみよう」
「はぁ?『ふつう』レベル?なんで私がそんなザコと戦わなくちゃいけないのよ。一番強いやつでいいわ」
マジか、ルナ様?
まぁ、ルナ様らしい回答ではあるが‥‥
「でも、ルナちゃんこのソフトプレイしたことないんでしょ?言っとくけど、『熱中』レベルはほんとに理不尽なくらい強いんだからね。後悔しても知らないよ」
「アンタ、私を誰だと思ってるワケ?どうでもいいから早くセッティングしなさい」
ほんとにこの自信はどっから沸いてくるんだろうか?
仕方ない、お姫さまの言うとおりにしておこう。
ゲームを起動。CPUレベルを最強である『熱中』に設定。
「で、ルナちゃん。この12球団の中から好きなチームを選んで!一番左のチームがペナントレース1位のチーム。そこから順番に2位、3位とチームが並んでるんだけど、最初だからとりあえず強いチームを使った方が‥‥」
「アンタ、何言ってるのよ?強いチーム使ったら勝つに決まってるじゃない。一番弱いチームでいいわ」
ギリギリの勝負に飢えすぎだろ!?
まるで、圧倒的実力故に勝利自体に価値を見いだせなくなった強キャラのようだな。
言われた通りに、ルナちゃんはペナントレース最下位チーム。相手は一位のチームで試合開始。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
バンッ!!!
「何よっ!これっ!!!クソゲーじゃないのよっ!!!」
コントローラーが床に転がる。
あーあー、コントローラー投げちゃダメだってば‥‥
ほんと、こういう所は子供なんだよなぁ
「だから言ったでしょ?『熱中』レベルは強いって。ルナちゃん初心者なんだからさぁ」
「強いって言っても限度があるでしょっ!!!なんで、インハイにカットボール投げたあとのアウトローストレートをスタンドに運ばれるのよ!しかも、逆方向じゃなくて無理矢理引っ張ってライトスタンドって、ほんとどうかしてるわっ!!!」
まぁ、ルナちゃんの言うことはもっともだ。
基本的に熱プロは超打高投低なのだ。最強レベルと戦えば、必然ラグビーの試合みたいになる。
故に打てなければ話しにならない。打たれることを気にせずひたすらに打ちまくる。それが、攻略のコツなのである。
「でも、ルナちゃん!『熱中』レベル相手に5点もとってたじゃない!いやぁ、いい筋してるよ、ほんとに。初めてとは到底思えない。実際の勝負の時は僕が守備側を担当しようと思うから、ルナちゃんは攻撃のみに専念してもらえれば大丈夫!でも、この調子だと一週間後にはどれだけ上手くなってるか想像がつかないね。流石は天才!流石は美少女!!!」
ご機嫌をとるため、怒濤のリップサービスをかます。
すると、ルナちゃんは満更でもない様子で
「そ、そう‥‥?うん、そうよね!!!私天才だもの!そのうえ美少女だから怖いものなんてないわっ!このゲームもちょっと練習すればなんてことないハズよ。むしろ、この程度の難易度なの?ってがっかりしてるくらいだわ!」
ルナ様の機嫌、速攻で治る。
ルナもおだてりゃ木に上るってとこかな。
早速、もう1プレーしようと思ったそのとき
「ルナーーー!尾間加瀬くーーーん!ご飯が出来たから降りてきなさーい!!!」
ルナママの声が部屋の外から響く。
えっ、夕御飯イベントもあるの?




