ゴネ得っ‥‥!
どうやら、この変化は何らかの衝撃を与えることで解けるものだったらしい。
それなりに集中していないと変化状態を維持できないって事なのか?そして、その集中がウンコにより霧散した‥‥そういうことか。
何はともあれグッジョブだ、小梅!!!
「ほらっ!!!見て、ルナちゃん!!!僕が言ったこと、嘘じゃなったでしょ!?こいつは犬なんかじゃない、忍高校のスパイなんだ!!!」
ルナちゃんは目を丸くして
「なによ!?この超展開?まるでゲームかマンガね。とても信じられないわ」
いや、ルナ様。ここは野球ゲームの世界ですよ?
まあ、言わないけど。
「まぁ、この目で目撃した以上信じるしか無いんだけど‥‥で、そこのアンタ。どう落とし前つけるつもりなの?こんな事してタダで済むと思ってるワケ?」
化乃川を睨み付けるルナちゃん。
しかし、化乃川、こんな危機的状況にも関わらず、やけに落ち着いてやがるな。
何、たくらんでやがる?
「落とし前、ね。確かに他校に侵入し情報収集、それは誉められた行為では無いだろう。だが、しかし、それくらいはゆるされてもいい行為だとは思わないか?」
‥‥は?こいつ、なに言ってやがる?
「はぁ?何言ってるのか全く理解できないんですけど?頭にムシでも湧いてるわけ?」
ルナちゃん、口悪いなあ‥‥口喧嘩したら泣いちゃうレベル。
しかし、化乃川は一切怯まない。
「お前らは金に物を言わせて全国から有能な選手をかき集めてきているそうだな。そんなの強くなって当たり前。対して、我々は只の一般高校。その時点で戦力に差がありすぎるのだ。そんなのフェアじゃないだろう?それともお前らはそんな出来レースみたいな勝負に勝って嬉しいのか?もっと拮抗した熱い試合をしたいとは思わないのか?戦力差を埋めるには情報などのその他の部分で補っていくしかない。それゆえのスパイ。そう、苦肉のスパイなのだ。情状酌量の余地くらいあると思わないか?」
こいつ‥‥!いってる事全部屁理屈だ。そもそも高校野球なんてそんなもんだろ?戦力差があって当然っ‥‥!
「まぁ、確かに一理あるわね‥‥」
ええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!共感しちゃったよ!?なんで!?
「ルナちゃん!一理もクソもないよ!!!こいつが言ってるのはただの苦し紛れの言い訳、自分を正当化してるだけだって!!!」
「そんな事わかってるわ。でも、勝つとわかってる試合ほどシラけるものはないわ。難易度は高ければ高いほどいいに決まってるもの。それにこいつらにも少しでも希望を持たせてあげないとかわいそうじゃない?」
ルナちゃん!お人好しにも程があるって!!!
ルナちゃんはたまにこういう所がある。口はかなり悪いクセに、肝心なところで甘いというか、優しいというか‥‥
まあ、それがルナ様の良さでもあるんだけど‥‥
「話が分かる奴で助かったぜ。ただ、俺もタダで見逃してくれとは言わない。野球で勝負しよう。もし、俺らが勝ったらこのスパイ発覚の件は不問にしてくれ。ただし、お前らが勝った場合は‥‥そうだな、なんでも言うことをひとつ聞いてやる」
「いいわよ。その勝負、乗ったわ」
安請け合いするルナ様。
この世で一番怖いのが『安請け合い』だと言うことを社会に出たことがないルナちゃんは知らないのだ‥‥
「ただし、実際の野球で戦ったら俺らに勝ち目はない。という訳で‥‥」
化乃川は懐から何か薄くて四角いものを取り出した。
ん‥‥?あれは、もしかして‥‥
「こいつで勝負だ」
化乃川が取り出したもの、それは『熱狂スーパープロ野球』に限りなく似た、『熱中ウルトラプロ野球』という野球ゲームだった。




